スコットランドの長く暗い冬.暖かい紅茶をいただきながら,思索にふけり,文章を書くのにはとてもいい季節である.しかし故郷を思うこともある.春が待ち遠しくなると,雛祭り,桜の花がとても愛しく思える.風邪なんかひいて寝込んでしまうとなおさらである.
法顕三蔵の、天竺に渡りて、故郷の扇を見ては悲しび、病に臥しては漢の食を願ひ給ひける事を聞きて、「さばかりの人の、無下にこそ心弱き気色を人の国にて見え給ひけれ」と人の言ひしに、弘融僧都、「優に情ありける三蔵かな」と言ひたりしこそ、法師のやうにもあらず、心にくゝ覚えしか。(徒然草八十四段)