因果な商売

少しでも医者をやったことのある人間なら,常に悲観的なシナリオの方を想定して行動する癖がついているものだ.

「後遺症が残ったらあんたのせいや」と怒鳴る患者家族

この事例では一件落着だったからいい.でも,裁判になる例もあるだろう.そういう時に,裁判官は,この記事を書いた尾内康彦氏のような,まっとうな判断ができるだろうか?できやしない.もしできたら,袴田事件も北陵クリニック事件も,世の中には存在していなかった.

袴田事件にせよ,北陵クリニック事件にせよ,あんなデタラメ裁判がここまで通用しているということは,日本の法曹がそれを認めているからこそである.あんなデタラメ裁判を指揮した裁判官が何の懲戒も受けることなく,めでたく昇進し,定年退職し,退職金で優雅な生活を送っているという事実を,この記事を読んだお医者様達はどう考えたのだろうか?

優れたリスクマネジメント理論の最大の問題は,リスクが顕在化した後の対応,つまりダメージコントロールを学ぶ動機付けを抑制してしまうことだ.だから,医者たる者、リスクマネジメントを考えたら,常にダメージコントロールを対にして考える「面白さ」を知っていると、伸びていける。

もし,この記事を読んで,自分が当事者で,一件落着せず裁判に持ち込まれたらどうするか?そういうダメージコントロールを全く考えられない人は,「自分は医者でなくてよかった」,「自分は医者には向いていない」,「自分は医者としてまだまだだ」のいずれかの思いに駆られることになる.いずれにせよ,医者は因果な商売だと嘆き続けて一生を終わることになる.

もし、あなたが、医者は因果な商売だと嘆き続けて一生を終わるのが嫌だとしたら、かつ、あなたが、ゲームが大好きだとしたら(そんな奴おらんて!)、もし、この件で、尾内康彦氏が優れた助言をしてくれて、その通りに行動したとしても、訴えられてしまったとしたら、一体自分はどうやって戦うだろう、そんなシミュレーションゲームに夢中になるだろう。ちょうど私が北陵クリニック事件に夢中になっているのと同じように。

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