Polypharmacy

「日本の医者だけがおかしなことをやっている」んじゃなくて、「他の国の医師も同様な悩みを抱えているのではないか?」という観点に立つことが、 「国際的な臨床研究」の有力な動機付けになるものです。
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薬剤師による医師のための「減処方」マニュアル策定へ
カナダ医師会雑誌公式ニュース
MTpro 2013/8/13
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1308/1308040.html
 この数年,特に高齢者に対する多剤投与(polypharmacy)の問題が有害事象や医療費の増大などの観点から注目されつつある。カナダ・ オンタリオ州の健康保健当局が薬剤師らの研究チームに対し,医師のための減処方(deprescribing)マニュアルを策定するよう求めてい ることが分かった。8月12日のカナダ医師会雑誌(CMAJ)公式ニュースが伝えている。

高齢者の過半数が5剤以上,うち20%は10剤以上を同時使用
 作成を委託されたブリュイエール研究所のBarbara
Farrell氏は「高齢者を対象とした薬剤の臨床試験が少ないにもかかわらず,実臨床では年齢や慢性疾患の数が増えるほど使用薬剤が増える傾向 にある」と指摘。同ニュースでは,カナダ健康情報研究所が2011年に行った調査結果から同国の高齢者の約60%が5種類以上,さらに20%以上 が10種類以上の薬剤を同時使用するなど多剤投与が常態化していることも紹介している。
 同研究所が2002〜08年に行った調査の報告書では,国内の公的医療保険が負担する薬剤費の48.3%が高齢者に使用されている他,支出の多 い医薬品の上位をスタチンやアンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)と利尿薬の合剤などの循環器用剤が占めていることなどが示されている。ま た,2011年の調査では,5剤以上を併用する高齢者では1〜2剤の場合に比べ有害事象の発現率が2倍以上高まっていたとの結果も示されている。

医師にとって「減処方」は簡単ではない?!
 Farrell氏はこれまでの研究から薬剤のベネフィットリスクを踏まえ,薬剤の投与量を減らす,あるいは特定の薬剤の使用を中止することによ り,高齢者の不穏状態や転倒リスクが改善するとの知見は多く得られているとコメント。薬物療法の考え方に「減処方」のアプローチを取り入れていき たいとの意向を示している。
 一方,処方を行う側にとっては必ずしもこのアプローチは簡単ではないようだ。ニュースでは,例えば多剤処方の患者がプライマリケア医を訪れた場 合,その患者は他にも専門医などを受診していることが多く,他の医師が処方した薬剤の中止をためらうことが少なくないといった理由を挙げている。
 また,オランダの医師らの報告では,医師がそもそも患者と「減処方」について話し合うことを快く思わないことがあるとの結果(BMC Fam
Pract 2012 ;13:56)も示されていると紹介。特に高齢の患者に期待余命に関することや予防を目的とした薬剤の減少を切り出せば,患者が不愉快になるのではないか といった懸念も背景にあるようだと分析している。
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