プライマリ・ケア医とパーキンソン病
プライマリ・ケア医の関わり

生活習慣病と類似した管理

プライマリ・ケア医でも診断可能

治療効果の判定

診療のtips: 街角での診断 外来で椅子に座るまでに診断 姿勢反射障害を見るための診察 専門医との関係レボドパの投与開始薬剤性パーキンソニズムレビー小体痴呆下腿の浮腫体重減少急速な症状の悪化を見たら パーキンソン病にまつわる豆知識

パーキンソン病の診療にはプライマリ・ケア医の関わりが不可欠
パーキンソン病は,有病率が100/10万人、国内推定患者数12万人と,アルツハイマー病に次いで多い神経変性疾患である.発症は通常40歳以 上で,高齢になるにつれて有病率が高くなるため,高齢化社会では患者数は今後も着実に増加するだろう.そういう状況の中で,パーキンソン病の診療は,専門 医だけでは対応し切れない.患者数の多さもさることながら,病悩期間が長期に及ぶ慢性疾患であること,日常生活動作障害が大きな問題となるため,保健・福 祉の分野との密な連携が要求されることから,プライマリ・ケア医の関わりが必須である.
パーキンソン病は決して専門医しか診療ができないという病気ではない.いつでもどこでも専門医がいるわけではないし,直ぐに気軽に紹介できるわ けでもない.緊急性のある疾患ならいざ知らず,パーキンソン病の診断確定だけのために,何時間もかけて通院してもらうのは忍びないという状況は,日本全国 あちこちで起こっている. そんな時,プライマリ・ケア医がパーキンソン病を診療できれば,患者さんの負担を大きく減らすことができる.

パーキンソン病は生活習慣病と同じ慢性疾患の一つ
プライマリ・ケア医の方は,神経変性疾患ということだけでこの病気を特別視しがちだが,それが誤解である理由は以下の通りである.第一に、パーキ ンソン病の診断は病歴と診察で行われる.第二に,慢性疾患であり,糖尿病や高血圧症と同じく、複数ある治療手段や薬剤の組み合わせで長期にわたって,経過 を見ながら治療のさじ加減を考える点が,プライマリ・ケア医の日常診療にふさわしい.さらに、薬の副作用としてしばしば起こる消化器症状や,進行期の患者 に起こる様々な合併症への対処は,専門医よりもプライマリ・ケア医の方が得意である.
パーキンソン病の診療が特殊なものであり、専門医にしかできないとして,専門医以外と共有可能な知識や技術を秘事口伝のように扱うことは,患者から治療の機会を奪っていることになる.外来で糖尿病が診療できるのなら,パーキンソン病の診療もできることを請合おう.幸い, N Engl J Medの総説 [1]は,大変わかりやすく,簡潔に書かれているので,日本語で要点をまとめておいた.また,同じ内容をパワーポイントのスライドにもしてある.

プライマリ・ケア医でも診断はできる
 パーキンソン病は,病歴と臨床症状で診断する.特殊なバイオマーカーや画像所見は不要である.しかも,診断に占める病歴の比重は8割 以上であり,日常生活動作に注目して病歴の取り方を工夫すれば,パーキンソン病を見逃すことはないとまで言えよう。実際に,腕の確かな神経内科医ほど,見 た目と病歴だけでパーキンソン病を診断してしまう.プライマリ・ケア場面で頻度の高い薬剤性パーキンソニズムの診断も、病歴が決めてである。診察は,病歴 によって下した診断の確認手段に過ぎない.神経内科医以外の多くの医師が嫌うハンマーや音叉さえも,パーキンソン病の診断には必要ない.病歴を頼りにどう やってパーキンソン病を診断するかは、ケアネット上の私の解説、ビデオ/DVD、私のホームページを参考にしていただきたい。

治療効果の判定は,投薬の目安はどうしたらいいのか?
糖尿病の場合には,血糖やらグリコヘモグロビンやら,数字で出てくる指標があるが,パーキンソン病では,何を治療効果の目安にしたらいいのかわからないので不安だという人もある.しかし,数字なら安心なのだろうか? パーキンソン病の場合には,数字よりももっと大切な,臨床症状や日常生活動作,副作用の出方を指標にして薬を増減する.このやり方はプライマリ・ケア医の得意とするところだろう.

診療のtips
 診療の基本については,別紙NEJM総説の訳を参照していただくとして,ここでは,パーキンソン病診療で覚えておくと役に立つ知恵をご紹介しよう.

街角での診断
パーキンソン病は、外来で呼び入れてから椅子に座るまでに診断がつく病気です。というか、神経内科医は街角で通りすがりの人に病名をつけてしまいます。その際、注目する点は、頚部・体幹との関係、頚部の回旋の頻度とスピードと視線(パーキンソン病の患者さんは決して”きょろきょろ”しません)、表情、腕の振りの非対照性、肘関節の屈曲、手指の関節(母指のIP関節が背屈、他の指のMP関節が屈曲)といった所見です。これは病初期から現れ(感度が高い)、パーキンソン病には限りませんが、対象をパーキンソン症候群にまで広げると特異度も高い所見です。パーキンソン病の症状は非対称が大原則です。そして、非対称性は病初期から目立ちます。たとえば歩行時の腕の振りは、振戦が出現しない病初期から見られ、これだけでも街角でパーキンソン病を疑うことができます。

外来で椅子に座るまでに診断
外来では、予診表に書いてある訴え、経過、そして書字そのもの(!)といった情報である程度当たりをつけると、すでに集中力が全開になっています。これから入るコースのどこをどう通過するかのチェックポイントが全部頭の中できれいに展開されていて、F1レーサーやスキーの回転の一流選手(実際にはもちろん経験がないのですが)のスタート前のような緊張感が実に爽快です。

自分からドアを開けて(ここが大切)、患者さんの名前を呼んだ瞬間から、こちらへの振り向く時の頚部の回旋速度、視線の動き、椅子からの立ち上がりの早さまでの数秒間が、上記の情報を得るために非常に大切です。一撃診断というのは、名人芸ではなく、出会ったその瞬間に患者さんが教えてくれる大切な情報を見逃さないようにという戒めなのです。

椅子から立ち上がった後は、歩行時の腕の振りの左右差、歩行時の手指の肢位、振戦の有無、頚部、体幹の回旋の速さに注目します。この時、実は下肢はあまり見ていません。

そうして診察室の椅子に座っていただいた時点(この時、腰を下ろす直前に中腰が利かずに「どん」と腰を下ろしてしまうと、姿勢反射障害があるだろうなと読みます)では、パーキンソン症候群かどうかはすでに勝負は決まっていますので、後は、パーキンソン症候群の中の鑑別(パーキンソン病、多系統委縮症など)に移りますが、そこは専門医にお任せください。

一般によく言われる、すくみ足、突進歩行など、歩行の問題は、広い平らな道路を歩いている時は、よほど症状が進まないと目立ちませんので(感度が低い)、下肢ばかりを気にしていると、いわゆる脳血管障害性パーキンソニスム(パーキンソン病とは共通点が少ないので、この名前を嫌う神経内科医もいます)を、パーキンソン病と捉えてしまうので、注意が必要です。

つまり、歩行を含めた下肢の症状は、感度、特異度ともに低いので、治療への反応性や経過観察の指標にはなりますが、外来初診時の診断には、あまり役立ちません。

姿勢反射障害を見るための診察
姿勢反射障害を見るための感度のいい試験は,立位の患者さんにの背中に検者の手を当てて支え(つまり検者の手掌に少し寄りかかってもらうようにする)て,突然その支えを解放するのです.Push & Release Testと呼ばれます.(もちろん倒れる前に支えられる位置までほんの少し引くだけ)。上体が反る反応が起こらずに、足を後ろに送ることによって倒れるのを防ぐ時に陽性と取ります。2006年に発表された新しい診察法(!)で,伝統的なPull test(被験者の後ろに立って被験者の両肩に手をかけて引っ張る)よりも,感度,特異度もよくて,intra- and inter-rater consistencyもより高いとされています.ジェネラリストにもお勧めの診察方法です.

Push and Release Test Predicts Better Parkinson Fallers and Nonfallers than the Pull Test: Comparison in OFF and ON Medication States
 

1. プライマリ・ケア医が診断して,治療を始めて,専門医がご機嫌を損ねないか?
パーキンソン病は神経変性疾患の中でも有病率が高く,かつ経過が長いので,多くの神経内科医は,実は外来にたくさんのパーキンソン病の患者さんを 抱えて難渋している.それでも音を上げないのは,下手に専門医の誇りがあるからだ.でも,プライマリ・ケア医のあなたが助けてくれれば,こんな嬉しいこと はないと密かに思っている神経内科医は多い.
具体的には,次のようにするとよい.上記のようにあなた自身がパーキンソン病を疑ったら,いったん神経内科医に紹介する.その時に,診断が確か で,治療方針が決まれば,いつでもこちらで診ますよと,紹介状に一言書いておく.外来がパーキンソン病患者さんであふれかえって困っている神経内科医は, 渡りに船で患者さんを戻してくれるだろう.一方、紹介先がひどく遠かったり、時間がかかり、患者さんも紹介を希望しない場合には、プライマリ・ケア医が治 療を始めても構わない。

2. でもプライマリ・ケア医がレボドパを投与すると,専門医の診断の妨げにならないか?
心配することはない.レボドパを投与して効いた場合には,パーキンソン病として、そのままプライマリ・ケア医が経過を追うだろうから,専門医に紹 介するのは,レボドパが効かない場合だけだろう.そうすると,紹介する時点でも症状は変わらないわけだし,レボドパが効かないということ自体も診断の参考 になりさえすれ,邪魔にはならないから,レボドパの反応性がどうあろうと,専門医の診断の妨げにはならない.

3. 薬剤性パーキンソニズムは,薬剤中止後,どのくらいで回復するか
プライマリ・ケア場面で診るパーキンソニズムの2割は薬剤性という報告[2]もあるぐらいだから、外来では要注意だ。もともと脳に親和性が高い薬は,脳内に入り込んでなかなかwash outできない薬もあるだろうから,大雑把に言って,パーキンソニズムが回復するのに数週間以上かかることもある[3].ここで注意してもらいたいのは,薬剤性パーキンソニズムが強く疑われる例でも,パーキンソン病の症状がすっかり無くなってしまうとは限らないということだ.なぜだろうか.
私は,家族も患者さん自身も気づかない程度の,ごく初期のパーキンソン病の患者さんが,原因薬剤を服用してはじめて,症状が誰の目にも明らかにな るのが薬剤性パーキンソニスムの大部分を占めるのではないかと思っている.その場合,原因薬剤を中止しても,もともとあったごく軽いパーキンソニズムは消 えずに,神経内科医が診察してはじめてわかるというわけだ.これはあくまで仮説なのだが,原因薬剤を中止しても症状が消えない場合の説明には便利である.
 

4. レビー小体型認知症の問題
レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies)は,認知症の上にパーキンソニズムが加わった神経変性疾患である.以前この病気は、パーキンソニズムが合併するアルツハイマー病と解釈されて いたのだが,その多くは、実は神経病理学的にもアルツハイマー病ではなくて,黒質以外にもレビー小体が見られるレビー小体型認知症[4]と 診断されることが多くなった.診断は臨床症状をもとに行われ,バイオマーカーは存在しないし,画像も他疾患の除外に補助的に使われるだけである.決して稀 な病気ではない可能性があるから,プライマリ・ケア場面でも,パーキンソン病を疑われる症例の中に,このレビー小体型認知症が混在してくる可能性を考えておか なくてはならない.普通のパーキンソン病にしては,病初期から,認知症,幻覚妄想や譫妄がひどくておかしいなと思ったら,この病気を疑って,それこそ専門医 に紹介しよう.神経内科でも精神科でも,どちらでもいい.
レビー小体型認知症では、パーキンソン病で抗コリン薬が使われれるのとは反対に、脳内のアセチルコリンを増加させる抗コリンエステラーゼ薬がアルツハイマー病と同じように使われる[5]ので、そういう点でも、認知症がはっきりしているパーキンソニズムの患者さんは、プライマリ・ケア医だけで抱えずに、専門医に紹介した方がよい。

5. 下腿の浮腫はなぜ起こる
パーキンソン病では,下腿の浮腫が高率に生じるが,その理由は不明である.浮腫を起こすほどの心臓,肝臓,腎臓,あるいは内分泌代謝障害は通常見 つからない.この病気の自律神経症状(血管運動神経の障害)の一環とも,薬剤性とも言われる.患者さんや家族は心配するが,このことを心得ている医者は気 にしないので,外来での葛藤の種の一つとなるが,外来のスクリーニングで「心配な病気は見つかりません.この病気(パーキンソン病)によく見られる症状ですが,命を脅かすものではありませんし,薬を飲んで治さなくてはならないような種類のものではありません」と,繰り返し,根気よく説明を繰り返すのが上策.

6. これまた不思議な原因不明の体重減少
パーキンソン病における原因不明の体重減少も,しばしば医者泣かせである.数ヶ月の経過で10kgの減少なんてのも,ざらである.パーキンソン病 の患者さんの多くは癌年齢ということもあって,すわ一大事とばかり,体の動かない患者さんに無理をお願いしてさんざん悪性腫瘍を検索しても,多くの場合, 何も出てこない.神経内科医も悪性腫瘍を見逃したくないので、いつもこのような作業を繰り返している.しかし,癌検診を望む健常者ならいざ知らず,日常生活さえままならないパーキンソン病の患者さんに対して,必死になって侵襲性の高い検査をあれこれやるのも考え物だ.そのあたりは,ようく,本人や家族と相談して,落しどころを決めるのが,神経内科医に限らず,医師たる者の腕の見せ所である.

7. 急速な症状の悪化を見たら
次は,パーキンソン病の患者さん(80才女性)を診ている,ある,極めて優秀な呼吸器内科開業医の先生からのお手紙とそれに対するお返事である.

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先生に5月の時往診していただいた○○様についてご相談です。

2週間前までパーキンソン病とは思えないぐらいすたすた歩いておられましたが、 この2週間両腕のふるえ、両足の重さが出現してきています。 そのため包丁のスピードがやや落ち、お茶を入れる、飲むなどの動作がふるえて うまくいかないようです。
診察すると右上肢の固縮がやや悪化、左下肢も少し固縮悪化。 姿勢反射障害(後ろへ+)安静時振戦は見られません(むしろ動作時に+) 歩行はOKですが方向変換に時間がかかっています。

現在メネシット100*3ですがこのまま様子をみるか?増量するか?他の薬剤 を追加するか迷っています。ご教示よろしくお願いいたします。
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> 2週間前までパーキンソン病とは思えないぐらいすたすた歩いておられましたが、 この2週間両腕のふるえ、両足の重さが出現してきています。
> 現在メネシット100*3ですがこのまま様子をみるか?増量するか?他の薬剤 を追加するか迷っています。

先生が迷っていらっしゃるのは,メネシットの効果減弱にしては,たった2週間で悪くなるのはおかし いと思うからですね.私もそう思います.
となると,何か別の問題が二次的にパーキンソン病の悪化をきたしているのではないかという疑問が次 に浮かんできます.

1.まず,併用薬剤や,レボドパの吸収を阻害する要因について検討します。
○先生のところ以外で,ドグマチールやプリンペランが処方されていたなんてことはありませんよね?
○制酸剤の併用の有無はいかがでしょうか?レボドパは消化管内容が酸性の時に吸収効率がよくなり、 レモンジュースとの併用を奨励する人もいます。一方、H2ブロッカーやPPIの併用で,吸収が悪くなりま す.
○他にも,バナナジュースが悪いとか,高タンパク質の食事と一緒になると吸収が阻害されるので食後 3時間以上あけて服用しろとか,いろいろなうるさいことを言う人がいます.○○様の場合には,今 までよかったわけですから,食事との関係で,今までと変わった要素がないかどうか.健康食品の有無 や,食事摂取後の服用時間を極端に変えていないかかどうかをチェックしてください.

2.1が問題なければ,二次性の悪化の原因を,○○様の体に求めます.大きく分けて,脳か脳以外かです.
○脳ですと,慢性硬膜下血腫の除外でしょうか.高齢者ですと頭部外傷のエピソードがはっきりしなく ても起こります.頭部単純CTで充分と思いますが,MRIを撮った場合には,悪 化前からあるような,非特異的な陳旧性病変に惑わされないようにします.

○脳以外の疾患でも,全身状態に影響を与えるような疾患では,パーキンソン病の症状も悪化しますが ,こちらの除外に関しては先生に御願いいたします.

ひとまず,以上の点を検討した結果をご連絡ください.
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REFERENCES
1. Nutt JG, Wooten GF. Clinical practice. Diagnosis and initial management of Parkinson's disease. N Engl J Med 2005;353:1021-7.
2. Bower JH, Maraganore DM, McDonnell SK, Rocca WA. Incidence and distribution of parkinsonism in Olmsted County, Minnesota, 1976-1990 Neurology 1999;52:1214-20
3. Joanne Wojcieszek. 12. Drug-Induced Movement Disorders, Iatrogenic Neurology, Jose Biller Ed. Butterworth-Heinemann 1998;:
4. McKeith IG, O'Brien JT, Ballard C. Diagnosing dementia with Lewy bodies. Lancet 1999;354:1227-8.
5. McKeith I, Del Ser T, Spano P, Emre M, Wesnes K, Anand R, Cicin-Sain A, Ferrara R, Spiegel R. Efficacy of rivastigmine in dementia with Lewy bodies: a randomised, double-blind, placebo-controlled international study. Lancet 2000;356:2031-6.

パーキンソン病にまつわる豆知識
> パーキンソンはタバコやカフェインを取らない真面目な人に多いそうです。 小生も気を付けよっと。
確かに病前性格は、生真面目、几帳面という方が多い印象ですが、私の印象では、真面目な人=冗談を言うのが苦手な人です。

> またネット売買されている薬(kava kava、インド蛇木)でパーキンソン を起こすことがあり、このような薬を購入してないか聞けとのことです。

1970年代終わり頃に、米国の若者が自家製の覚醒剤を注射したところ、パーキンソン病にそっくりになったという事件がありました。密造した覚醒剤の不純物としてMPTPという物質が同定され,MPTPを使って,パーキンソン病の動物実験が盛んに行われました.

> パーキンソンは嗅覚低下や幻視を起こすことがあり、パーキンソン病診断 基準の傍証の一つになっています

嗅覚低下が初発症状として運動低下より先行する例があります.私の患者さんでも,好きだったコーヒーの香りがわからなくなって,その2年後に震えが出た方がいました.

> この振戦が4から6Hzというのはどうやって判るのでしょうか。  10秒間振戦の数を数えて10で割るんでしょうか?

私は、自分で患者さんのリズムの真似をして、指でテーブルを叩いて10秒間の数を数えます。患者さんの真似をする訓練は、視診の腕を上げるのに役立ちます。真似をするというのは、最も基本的な学習方法ですが、基本的な方法ほど威力があります。ただ単に見るのではなく、自分がどこに注目しているのかを確認する作業を行うことになるからです。

> パーキンソンは前方か側方転倒が多いそうで、後方転倒はパーキンソン以外  を考えよとのことです。
そもそも、パーキンソン病では、転倒するのは、病期がある程度進んでからです。ですから、初診時パーキンソン症候群が疑われる病歴で、転倒するという訴えが目立つ方はパーキンソン病以外の疾患と考えるのが、常道です。言い換えれば、病初期から転びやすいパーキンソン病という診断は、まずは疑ってかかれということです。
 

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