六十年一日のごとく

医学教育の分野では、GHQの時代から今日まで、六十年一日のごとく、お雇い外国人招聘と鹿鳴館活動が盛んである。ところが、鹿鳴館がご本尊と仰ぐ国の医療アウトカム指標は、OECD諸国中、最下位グループに属することを、あなたはご存知だろうか?

合衆国の乳児死亡率は最下位ハンガリーに次ぐブービー賞である→図1

一人当たり国民医療費と平均余命は正の相関関係を成すが、互いに相反するはずれ値を示す国が二つある。一つは日本で、一人当たり国民医療費が安いのに、平均余命が飛びぬけて長い。もう一つは合衆国で、日本とは全く逆に一人当たり国民医療費は飛びぬけて高いのに、平均余命はOECDの平均未満→図2

そこで当然、次のような疑問が生じる。

○米国医学・医学教育の魅力はどこにあるのか?

○多くの人が魅力的と思いながら日本にそれが根付かないのはなぜなのか?あるいは根付いているのに気づかないだけなのか?

○日本ではいろいろな問題について、多数派、少数派の別はあるにせよ、親米・反米の二派が生ずるのに、こと医学教育に関しては、「自虐史観」のみが圧倒的な力を持っているのはなぜなのか?

○米国医学・医学教育が優れているのなら、そのアウトカムがOECD最低レベルに留まっているのは、単に経済格差だけで説明できるのか?

○日本の医学・医学教育が米国よりも劣っているのなら、そのアウトカムがOECD最高レベルなのは、国民皆保険以外にどんな要素が考えられるのか?またその仮説を検証するにはどうしたらいいのか?

○米国というのはあまりにも特殊事情が多すぎて、日本の参考にならない。例えば、欧州各国の中でも国民皆保険制度を採用している英仏伊などでは、医学教育はどのように行われているのか?

○以上のような議論、考察を行えば、日本と同様に国民皆保険を構築しようとしているアジアの国々に対しても有用な情報が提供できるのではないなか?

200マイル近くで走る列車を3分おきに毎日走らせるなんて神がかりを現実化できるのは、地球上で日本人だけだ。新幹線ばかりじゃない。宅配便の2時間おきの配達、故障しない自動車、地震緊急警報システム・・・どれも、当たり前のようにやってのけるのは、地球上で日本人だけだ。その日本人がやる臨床、日本人がやる医学教育が、米国より決定的に劣っているとはとても思えない。

こんな面白いことを考え始めると、ただでさえ忙しいのだから、雇い外国人招聘と鹿鳴館活動なんて陳腐なことは、とてもやる気がしなくなると思うのだが、世の中には随分と暇人が多いらしい。

二条河原へ戻る