各個撃破

国民皆保険攻防戦たけなわである.現在のところ,いわゆる改革派=市場原理導入・弱肉強食派が圧倒的に優勢である.理由は簡単だ,兵隊の数も金も圧倒的に弱肉強食派が優っているからだ.正面作戦以外に,謀略にも秀でている.国民皆保険派の分断作戦が実にうまい.国民皆保険派はただでさえ,兵力も財力も圧倒的に不利なのに,疑心暗鬼で仲間割れしていては,勝てるわけがない.

市場原理導入派の分断作戦の要諦は次の通り.

1.国民皆保険死守を,医師会に叫ばせる.
2.医師会が声を大きくすればするほど,伝統的に存在する医師会への反感により多くの一般市民やメディア,医師会以外の医療者はそっぽを向く.
3.医療事故報道の洪水により,医師会以外の医療者も孤立させる.
4.医療費抑制を厚労省に叫ばせることにより,厚労省も孤立させる.

この作戦が見事なまでに成功しているのは,皆様ご覧の通り.この作戦の結果,医師会,医師会以外の医療者,メディア,一般市民,厚労省を含む行政の間に仮想対立構造が生まれ,人と金を使って医療サービスを充実させるという,ごく当たり前のことを主張する人々はすべて非国民扱いされている.世論操作はかくあるべし,という見事な見本である.

この分断作戦を破らないと,到底勝ち目はない.では,どうすればいいか?簡単だ.上記1ー4の全て反対をやればいい.

1.医師会は,現在でも自由診療としてのサービスの選択は行われていること.国民皆保険を守ることと混合診療の導入反対とは全く別物であることを自覚し,市民にわかりやすく説明すること.
2.医師会は,十把一絡げでメディアを敵視せずに,自分達の主張を市民に伝えてくれる仲間としてメディアを迎えること.
3.医師会以外の医療者も,医師会と同様,メディアの中にも,一般市民の中にも,医療費を増やし,金も人もつぎ込んで医療サービスを充実させるべきだと考える人々がいることを知って,自分達がメディアや市民に何が提供できるのか,どんな点で協力できるのか,明示すること.
4.厚労省職員は,十字砲火の原因となっている財務省のご機嫌を取りをやめ,医療サービスの質の向上を求めている納税者の声を予算獲得の原動力とすること.

そんなことできるもんかと思うならそれでも結構ですが,そうしないと勝ち目はありませんよ.

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