「検討中」となった理由は?

「グローバルスタンダード」が突き崩せないとすると、日本独自の非関税障壁だろう。それが「誇大広告」という名のトラウマだというのだよ。わが国独自のトップジャーナル信仰を利用した能天気な営業活動が、医学ジャーナリスト協会賞受賞者と検察の餌食になった「事件」を誰が忘れるものか。

WELQ問題とやらは、一般市民が各自のヘルスリテラシー育成にどれだけ真剣に取り組むかに帰結する。何しろそのための教材は豊富にあるのだから、我々医者がどうこう言う問題ではない。一方、イカサマ試験を次々と掲載するブラックジャーナル問題は、プロフェッショナルが各自の臨床試験リテラシー育成にどれだけ真剣に取り組むかに帰結する。何しろそのための教材は、ディオバン「事件」を始めとして豊富にあるのだから、規制当局がどうこう言う問題ではない。

ではその肝心の規制当局の臨床試験リテラシーがどうなっているか?エビデンスなんかはどうでもいいと割り切るのはJanet Woodcokだけではなく、FDAの標準的な判断であることを下記の記事は物語っている。なあに、驚くことはない。次期大統領候補がファンドマネジャーをFDA長官に任命する、そのはるか以前から、米国のお医者さん達と規制当局は医薬品販売の両翼を担っていたのだよ。→恥と外聞の国境線 2006年の時点ですでに、米国でのエゼチミブの処方はカナダのそれの4倍以上だった。エビデンスに国境はないが、臨床試験リテラシーには国境があるという、第一級のエビデンスは、バルサルタン問題だけではなかったのだ。

--------------------------------------------
「ジャディアンス」、米FDAが心血管死リスク減で承認( 日刊薬業2016年12月13日 )
米FDA(食品医薬品局)はSGLT-2阻害薬「ジャディアンス」(一般名=エンパグリフロジン)について、心血管疾患に既往歴のある成人2型糖尿病患者 に対する心血管死のリスク減少の適応で承認した。独ベーリンガーインゲルハイム(BI)と米イーライリリーが13日までに発表した。
 米国では心血管死のリスク減少の適応で承認された初めての2型糖尿病治療薬となる。
 適応追加の根拠となった試験結果は「EMPA-REG OUTCOME」試験。心筋梗塞の既往歴を持つなど心血管疾患の発症リスクが高い2型糖尿病患者を対象に、スタチンやARBにジャディアンスを上乗せした 群とプラセボを上乗せした群でイベントの発生リスクを比べた。その結果、主要評価項目である複合心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳 卒中)のリスクがジャディアンス群で14%有意に減少し、心血管死では38%の減少が見られたと昨年の欧州糖尿病学会で報告された。
 同試験には日本人患者も含まれている。国内での適応追加の申請について、日本BIは検討中としている。
--------------------------------------------
目次へ戻る