デマはこうして創られる
-新型タバコという名の「ドラッグ」-

どちらが「本物」の記事だろうか?

Before

電子たばこで初の死者か
【ワシントン=共同】米国で中高生も含む若者の間で流行し問題となっている電子たばこを吸った後、深刻な肺の病気にかかった患者が死亡したと中西部イリノ イ州保健当局が23日、発表した。電子たばこの関連が疑われる米国初の死者といい「電子たばこの利用には危険が伴う可能性がある」と指摘した。
米疾病対策センター(CDC)によると、亡くなったのは成人で、この人を含め電子たばこを吸った後に重い肺の病気を患った人が22日時点で22州193人に上った。電子たばこが原因とは断定していないが、含まれる成分が関係しているとみて調査を進める。

After
電子たばこで初の死者か 米、日本と仕組み異なる
【ワシントン=共同】米国で中高生も含む若者の間で流行し問題となっている電子たばこを吸った後、深刻な肺の病気にかかった患者が死亡したと中西部イリノイ州保健当局が23日、発表した。電子たばこの関連が疑われる米国初の死者といい「電子たばこの利用には危険が伴う可能性がある」と指摘した。
日本で市販されるニコチンを含まない電子たばこと異なり、米国では主にニコチンを含む液体を専用装置で加熱して蒸気を吸う仕組みで、大麻関連の成分が入っている製品もある。
米疾病対策センター(CDC)によると、亡くなったのは成人で、この人を含め電子たばこを吸った後に重い肺の病気を患った人が22日時点で22州193人に上った。電子たばこが原因とは断定していないが、含まれる成分が関係しているとみて調査を進める。
燃やすたばこより有害物質が少なく安全とされるが、長期的な健康への影響は不明。世界保健機関(WHO)は健康上のリスクがないわけではないと指摘している。

後者が「本物」の記事である.→日経新聞 2019/8/24 10:39 おわかりだろうか.本物の記事の方がデマとなっている.

嘘を並べればデマができるわけではない.デマ(この場合には「日本で売っている電子タバコは安全です」)を信じ込ませるためには,その中に「事実」を混ぜ込む必要があることがよくわかるだろう.この場合には,「アメリカのようなドラッグ大国と日本は違いますから,皆さんパニックにならず冷静に電子タバコを愛用してくださいね」というデマを信じ込ませる「事実」を共同通信の記者が混ぜ込み,日経がそれを全く吟味せずに垂れ流したという次第.そんな前処置があって初めて,最後の尤もらしい真っ赤な嘘が効いてくる.

1.燃やすたばこより有害物質が少なく安全→嘘である.誰もそんなことは言ってない.エビデンスが全くない.メタアナリシスどころか,コホート試験一つないのに,そんなことが言えるわけがない.
2.長期的な健康への影響は不明→嘘である.なぜならば死人が出ているからである.この記事を書いた記者は,電子タバコが原因で死んだ場合には,イエス・キリストのように復活する可能性が十分にあるとでも思っているだろうか?死は生命に対する永遠の影響である.長期的な健康への最悪の影響.それが死である.
3.世界保健機関(WHO)は健康上のリスクがないわけではないと指摘している→嘘である.真実は以下の通りである.
電子タバコを通常使用すると、グリコール類、アルデヒド類、揮発性有機化合物(VOCs)、多環系芳香族炭化水素(PAHs)、タバコ特異的ニトロサミン(TSNAs)、重金属、ケイ素粒子等を含むエアロゾルが発生する。ジカルボニル(glyoxal, methylglyoxal, diacethyl)、ハイドロカルボニル(acetol)もエアゾール成分として重要である。ここに挙げた物質の多くは有害物質であり、様々な重篤な疾病を引き起こす事が知られている。(電子タバコに関するWHO報告書) そして電子タバコからふんだんに出てくるホルムアルデヒドは古くから知られている発がん物質である.

参考資料サイト
田淵貴大.新型タバコの本当のリスク.内外出版社.
片瀬ケイ 電子たばこによる呼吸器障害で死亡者 Yahooニュース 2019/8/24
石田雅彦 「加熱式タバコ」に警鐘~米国で多発する電子タバコによる健康被害 Yahooニュース 2019/8/23
電子タバコに関するWHO報告書(2016年8月)
加熱式タバコと健康:公開シンポジウム(主催 日本医学会連合 2018/3/25 東京大学 伊藤謝恩ホール)
電子タバコとてんかん発作:FDAによる注意喚起:FDA In Brief: FDA encourages continued submission of reports related to seizures following e-cigarette use as part of agency’s ongoing scientific investigation of potential safety issue

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