消費者への医薬品情報提供

FDAが使いやすい医薬品情報の新しいウェブサイトDrugs @ FDAを公開した.患者および消費者がインフォームド・チョイスを行う際に必要な情報を得られるよう,消費者が使いやすいウェブサイトで,医療用の承認薬,OTC薬の一部,販売中止された医薬品に関する情報を含む検索可能なデータベースとして,医薬品承認の経緯を網羅的に見ることができると,鳴り物入りで宣伝している。しかし,これが本当に使い物になるのかどうかは,簡単には判断できない.というのは,添付文書一枚読むのにしても,その分野の専門家でさえ,どう解釈していいのか,どういう意味があるのか,理解に苦しむ場合があるからだ.

薬にまつわる情報を,臨床知識のない消費者に誤解なく伝えるのが至難の業であることは,洋の東西を問わない.隣国のカナダの規制当局Health Canadaは,CADRIS(Canadian Adverse Drug Reaction Information System)データベースの副作用データの一部をウェブ上に掲載している。Health Canadaは,カナダ国民がこのウェブサイト上の副作用情報を誤って解釈する可能性があることを懸念し,ウェブサイト上で見つけた情報に基づいて薬の使用を中止するような行動をとる前に,医療関係者(例:医師,薬剤師)に不安となった問題を相談することを国民に勧めている。つまり,ウェブ上で情報を提供するだけでは不十分であり,結局は,医師,薬剤師に直接相談することが必要であることを,規制当局自身が認めている.

副作用情報一つとってもそうなのだから,FDAのように,”医薬品承認の経緯を網羅的に見ることができる”としても,それを正しく解釈し,活用できる一般消費者がいるのだろうかと疑問である.また,こういったウェブサイトを維持管理,運営する人手も決して馬鹿にならない.数十人単位の人手が必要だろう.公務員は絶対に増やさないという国是を守る限り,日本では不可能である.

しかし,一方で,添付文書ばかりでなく,承認審査の情報も広く一般に公開していこうとするFDAの姿勢は大いに評価すべきである.承認審査の過程を公開することによって,透明性,説明責任,公平性が担保されるからだ.税金をどこに投入するのか,決めるのは,本来一般市民の権利である.その権利を積極的に行使しようとせずに,テレビや新聞を見てごまめの歯軋りを繰り返す限り,役所の透明性,説明責任,公平性はいつまでたっても確保できない.

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