どこがいけないのか

多発性硬化症でお悩みで,あっちこっちでMRIをとっている患者さんからご質問をいただいた.

日本の医療が悪いとしたら,何が原因なのでしょうか?
> 厚生省が悪いんでしょうか。
> 患者が悪いんでしょうか。
> 医者/病院のせいでしょうかねえ。
> 一人一人を見るとそうは悪くはみえないんですがねー。

回答:

個々の問題を議論していると長くなりますので,共通基盤をまとめてみました.まず,日本は高度に発達した社会主義の国であることをご理解下さい.官僚による統制の徹底,一億総中流意識,政府の金の使い方に文句を言わない国民,護送船団企業の横並び意識.どの点から見ても日本が理想的な社会主義国家であることに異議を唱える人はいません.規制緩和とか言ったって所詮は横並び,自粛の積み重ねでみんな仲良くやってきたのです.

日本の医療は,典型的な社会主義国家のサービスなのです.競争する必要はないのですから,よりよいサービスを提供して,お客さんにたくさん来てもらおうとは考えないわけです.

MRIなんて高い検査があちこちでできるのは世界中で日本だけです.これは国民全体が平等に保険料を負担しているからです.この国民皆保険がすなわち社会主義です.その保険制度からお金が入ってくるから,病院は無理に客寄せしなくていい.

では,国民皆保険をとっぱらって,競争原理を本格的に導入すればどうなるか.結果は目に見えています.貧乏人は死ねという論理が罷り通る世界になります.合衆国の医療はそうなっています.

ばか高いMRIなんて機械に対する投資の元をとるには,検査の単価を高く設定しなくてはならない.そのサービスを買ってくれるのは上得意だけれども,金の払えない奴には用がない,というのが高い臨床水準を誇るアメリカ合衆国における資本主義の論理です.

国民一人一人がどちらを選ぶかという問題です.しかし,その選択が常に理想的とは限らないことは,やはり国民一人一人が選んだ現政権を見ればおわかりの通り.

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