肥満と消化器疾患研究会(The Japan Society of Obesity and Digestive Disease)

日本消化器病学会関連研究会

代表者挨拶

代表者挨拶

肥満と消化器疾患研究会代表世話人 池嶋健一

肥満と消化器疾患研究会 代表世話人
順天堂大学大学院医学研究科消化器内科学 教授
順天堂大学医学部消化器内科学講座 チェアパーソン
池嶋健一

肥満と消化器疾患研究会は、メタボリックシンドロームなど肥満関連疾患に注目が集まる中、当時日本消化器病学会の理事長であられた菅野健太郎先生の肝煎りで、理事の恩地森一先生を代表世話人として2011年に発足した附置研究会に端を発します。その後、日本消化器病学会関連研究会に移行し、坂井田功先生および竹井謙之先生が代表世話人をご歴任され、発足以来10年以上に渡って学術集会を継続開催してきました。2021年より、前任の竹井謙之先生(現:三重大学名誉教授)から引き継ぎ、不肖私が代表世話人を務めさせて頂いております。

消化器は、食物の摂取・消化吸収、そして取り込まれた栄養素の有効利用から老廃物の排泄に至る一連の生命現象を司る臓器・器官群であり、生命維持の根幹に関わる極めて重要な部分を占めていると言えます。生体は、遺伝的にその適正なプロポーションが規定されていますが、様々な環境・エピゲノム因子やホメオスタシスの失調に伴い、その規格から外れる現象がみられます。肥満は、その最たるものの一つであり、多くは摂食・エネルギー消費のアンバランスに起因しますが、消化器が中心的役割を演じていることに疑いの余地はありません。また、肥満に伴う様々な臓器障害には、消化器系の障害も多く含まれます。メタボリックシンドロームの肝病態である非アルコ―ル性脂肪性肝疾患(NAFLD)に至っては、わが国の生産人口の3割を占めるほどの、極めて高頻度にみられる疾患です。また、肥満と消化器がんに密接な関連があることも、多くの疫学調査から明白です。一方で、消化器関連の病態が、全身の臓器ネットワークに影響を及ぼしていることも注目されており、特に腸内微生物の共生が生体の維持に極めて重要で、そのバランス変調が全身性の疾患に多大なインパクトを与えていることが明らかにされつつあります。その観点からも、腸内微生物とメタボリックシンドロームの連関や、肝臓を基軸とした全身の代謝・免疫ネットワークなど、消化器病学と肥満関連病態の新たなテーマには枚挙に遑がありません。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、ライフスタイルの変化に伴う健康問題はもとより、疾患構成やリスク管理の在り方についても多くの新たな課題が生じています。研究会のあり方も多大な影響を被り、Web開催やハイブリッド形式での開催へと移行を余儀なくされていますが、活発な討議や情報交換が出来る場を提供できるように模索しています。本研究会を通じて、日本消化器病学会会員の諸先生方はもちろん、この領域に関心を寄せられている多くの方々に、これからの消化器関連問題の要である「肥満と消化器疾患」について一層と理解を深めて、一緒に学際的活動を推進して頂けることを切望しています。

令和4年4月

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