日本聴神経腫瘍研究会 Japanese Society of Acoustic Neurinoma(JSAN)

患者さんのためのA&A

質問 患者さんのためのQ & A:治療
Q11 どんな治療法があるのでしょうか?
Q12 聴神経腫瘍の治療の目的はなんですか。
Q13 聴神経腫瘍と診断され、手術が必要と言われましたが、どうしても手術は必要ですか。頭を開ける手術が怖いのですが。
Q14 手術には、どのようなリスクがありますか?
Q15 耳の聞こえが悪くなり、聴神経腫瘍と診断されました。手術を受ければ聞こえるようになりますか?
Q16 耳鳴りがあり聴神経腫瘍と診断されました。手術すれば耳鳴りは消えますか?
Q17 手術を受けたら再発することはないですか?
Q18 手術で再発したらどのような治療がありますか?
Q19 放射線療法(γ-ナイフ、サイバーナイフ等)で治るのでしょうか?
Q20 放射線治療をする場合に、年齢制限はありますか?放射線治療後に腫瘍が増大してきた場合には、どのように治療するのでしょうか?
Q21 偶然聴神経腫瘍が見つかり、MRI撮影で定期的な経過観察を受けています。悪性化して手遅れになるようなことはないのでしょうか。
Q22 聴神経腫瘍のために片耳が完全に聞こえなくなりました。反対側の耳は普通に聞こえます。補聴器を使用すればもっと聞こえは良くなるでしょうか。また、身体障害者に認定されますか。
Q23 最近めまいがするので耳鼻科を受診しました。耳の聞こえには問題ありません。念のためにと勧められてMRIを検査したところ、右内耳道内に5 mm大 の聴神経腫瘍があると言われました。治療はどうすればよいのでしょうか。
Q24 聴神経腫瘍のフォローアップで毎年MRIを撮影しています。体に悪影響はないでしょうか?
Q25 何もしないで放っておいたらどうなりますか?
Q26 電磁波で脳腫瘍ができると聞いたことがありますが、携帯電話を使っていても大丈夫でしょうか?

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回答 患者さんのためのQ & A :診断
Q1 聴神経腫瘍とはどんな病気でしょうか?
A1 聴神経とは脳(脳幹)と耳を結ぶ第8脳神経のことで、聞こえの情報を脳に送る蝸牛神経(かぎゅうしんけい)と平衡感覚についての情報を送る前庭神経(ぜんていしんけい)の2種類の神経の総称です。そして、これらの神経に生じる腫瘍を聴神経腫瘍と言います(大部分は前庭神経から生じます)。ほとんどは良性腫瘍ですが、腫瘍が神経を障害することによって、めまいや難聴、耳鳴りを発症します。また、腫瘍が大きくなると、顔面神経麻痺(運動障害)や顔面のけいれん、顔面の知覚麻痺などを生じる他、脳を圧迫することで歩行障害や意識障害等を生じます。さらに腫瘍が大きくなると脳の圧迫が進み命に関わることもあります。

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Q2 耳の腫瘍ですか?
A2 違います。頭(頭蓋)の中で、内耳から脳(脳幹)に情報を送る神経(主に前庭神経)から発生する腫瘍で、代表的な脳腫瘍の一つです。

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Q3 悪性ですか?
A3 ごく稀に悪性のことがありますが、ほとんどが良性の腫瘍です。

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Q4 どれくらいの頻度でおきるのでしょうか?
A4 聴神経腫瘍は、脳腫瘍の7〜10%を占めるとされており良性の脳腫瘍の中では3番目に多い腫瘍です。その発生頻度は年間10万人に対して1人程度と言われています。ただし、最近はMRIの発達によって、早期に発見される症例が増加していることから,もう少し頻度が高いのではないかという報告もあります。

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Q5 どんな症状が出るのですか?
A5 耳の聞こえが悪くなったり(難聴)、耳鳴りや、めまいが生じるのが主な症状です。難聴は徐々に進行することが多いとされていますが、突然聞こえが悪くなることもあり、初診時に突発性難聴と診断されることもあります。また最近では、難聴の自覚症状がない小さな腫瘍がMRIによって発見されるようになっています。回転性のめまい発作を起こす場合もありますが、ふらつきを感じる程度のことが多く、全くめまいの自覚がないこともあります。腫瘍が大きくなると顔面半分の感覚が鈍くなったり、味が分からなくなったり、顔に力が入りにくくなったり、歩行時のふらふら感が出てくることもあります。

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Q6 何も症状はないのに脳ドックで聴神経腫瘍と言われました。そんなことってあるのでしょうか?
A6 症状として多いのは片耳の進行する難聴などですが、全く症状がないこともあります。ドックのMRIでは造影剤を使わないことがほとんどなので、聴神経腫瘍の可能性は指摘できても確実に診断することは困難です。確定診断のために専門医(耳鼻咽喉科か脳外科)で詳しく診てもらって下さい。

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Q7 どのような検査をするのですか?
A7 確定診断をつけるためには、まずは種々の聴力検査を行い聴覚障害の程度を検討します。さらに平衡機能の検査を行って、前庭神経の障害の程度についても確認します。また症状によっては、顔面神経の機能など、その他の神経の状態についても、いろいろな検査を追加しますが、最終的には造影剤を使ったMRIが必要になります。

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Q8 CT検査では頭の中は大丈夫と言われましたが、心配ないでしょうか?
A8 CTでは大きな腫瘍はわかりますが、小さな腫瘍は診断できないことが多いと言われています。また、造影剤を使用していなければさらに診断率は下がります。CT検査で大丈夫と言われても腫瘍がないとは言えません。確実に腫瘍を診断するには造影剤を使ったMRIが必要です。

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Q9 顔面神経麻痺のためMRIを撮影ところ耳の奥に腫瘍があると診断されました。聞こえは正常でふらつきもありません。聴神経腫瘍でしょうか?
A9 顔面神経麻痺のみで難聴や眩暈のない聴神経腫瘍は極めて稀です。MRIで耳の奥に腫瘍が指摘されたのであれば、顔面神経鞘腫やその他の脳腫瘍の可能性が高いと思います。聴神経腫瘍(前庭神経由来)と顔面神経鞘腫(顔面神経由来)は神経からできる腫瘍という点は同じですが発生する神経が異なりますので、症状も好発部位も異なります。「耳の奥」という漠然とした範囲では判断が困難ですが、腫瘍の場所が特定できれば、診断はつき易くなります。MRIを撮影された病院で、もう一度確認されてみてはいかがでしょうか。?

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Q10 MRIの検査前に,アイシャドーを落とすようにいわれました。本当に必要なのでしょうか?
A10 MRIは微弱な電磁波を使用します。アイシャドー、マスカラなどの色素の中には微量な金属が含まれているため、これが電磁波によって熱をもち、稀に火傷の原因となる場合があることが知られています。このため、原則としてアイシャドーなどは落としていただくようお願いしています。また、最近増えているカラーコンタクトレンズでも同様の事例が報告されており、検査前にはずしていただきます。

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回答 患者さんのためのQ & A:治療
Q11 どんな治療法があるのでしょうか?
A11 聴神経腫瘍の治療法には、手術と放射線治療の2つがあります。また、聴神経腫瘍のほとんどが良性腫瘍であり、多くの場合1年で平均1mm程度以下しか大きくならないことから、腫瘍が大きくなければしばらく経過を観察することもあります。
 治療を行うか経過を観察するかは、腫瘍の大きさと聴力障害の程度、年齢などを考えて決定します。また、どの治療法を選択するかも、腫瘍の大きさ、聴力障害の程度、患者さんの年齢と全身状態を考慮しながら、また、それぞれの治療の特徴をご説明し、患者さんの希望をお聞きしながら決定します。
 なお、腫瘍内部が変性を起こし液状化して比較的急速に大きくなることがありますので、経過観察をする場合は、必ず専門医への定期受診を継続してください。

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Q12 聴神経腫瘍の治療の目的はなんですか。
A12 腫瘍が小さいときには、将来難聴が進行するのを予防すること(聴力温存)が目的です。腫瘍が大きくなり、脳に触れたり、脳を圧迫する場合には、将来的に生命を脅かす事を予防する目的で治療が必要となります。

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Q13 聴神経腫瘍と診断され、手術が必要と言われましたが、どうしても手術は必要ですか。頭を開ける手術が怖いのですが。
A13 聴神経腫瘍の多くは良性腫瘍ですので、悪性腫瘍の様に直ちに治療しなければ致命的になるというものではありません。しかしながら、腫瘍が大きくなると脳を圧迫するため、致死的な状況になる可能性はあります。したがって、定期的にMRIで腫瘍の大きさの変化を観察していくことには限界があります。また、ガンマナイフを始めとする放射線療法も、腫瘍が大きすぎると治療ができない場合があり、開頭手術でしか治療できないこと大きさの場合もあります。治療法が選択できるか、専門医とよく相談してください。

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Q14 手術には、どのようなリスクがありますか?
A14 手術の前から存在(潜在)している聴神経の障害を除けば、顔面神経の障害がリスクとなります。顔面神経は、聴神経と並行して存在するので、聴神経腫瘍のまわりに圧迫されて走行存在しています。このため、腫瘍の摘出操作で障害を起こす可能性があり、術後顔面神経麻痺といって手術側の顔の力が入りにくくなることがあります。顔面神経麻痺は、腫瘍が大きい程、障害の可能性が高くなる傾向にあるため、この点も考慮して比較的早期に手術をする場合があります。しかしながら、手術技術の進歩により、手術の慣れた施設では大きい腫瘍でも10%程度のリスクです。
 また、腫瘍のある側の聴力が良好の場合はその聴力が悪くなる、あるいは全く聞こえなくなるリスクもあります。しかし、聴神経腫瘍の治療では手術でも放射線でも聴力障害のリスクはある程度避けられません。
 それ以外は、脳を圧迫するような大きな腫瘍での脳の障害のリスクがありますが、これは一般の脳腫瘍の手術と同様のリスクです。

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Q15 耳の聞こえが悪くなり、聴神経腫瘍と診断されました。手術を受ければ聞こえるようになりますか?
A15 手術で聞こえが良くなることはほとんどありません。手術の目的は、放っておくと大きくなって命にかかわる可能性のある腫瘍を切除することであり、聞こえを良くすることではありません。一般に手術前の聞こえが手術後にそのまま残る確率もそう高くはないとされ、腫瘍が小さく聞こえが良い場合でも5割から7割とされています。腫瘍の大きさや聞こえの程度などの条件によって結果はかなり違うので、担当医に相談してみて下さい。

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Q16 耳鳴りがあり聴神経腫瘍と診断されました。手術すれば耳鳴りは消えますか?
A16 過去の報告では、聴神経腫瘍の手術を行って耳鳴りが改善または消失した人は2割から6割とまちまちで、手術の方法によっても結果が異なるようですが、耳鳴りは変化しないことのほうが多いようです。聴神経腫瘍の手術の目的は放っておくと命にかかわる腫瘍を切除することであり、耳鳴りを消すことではありません。手術の方法や必要性は腫瘍の大きさや聴力などによって検討されるため担当医とよくご相談ください。

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Q17 手術を受けたら再発することはないですか?
A17 聴神経腫瘍は良性腫瘍ですので、腫瘍のすべてが摘出されれば再発の可能性はなくなります。顔面神経や、聴神経の機能を温存するため、神経に強く癒着した部分がわずかに残った場合を含めて、再発のリスクは数%です。ただし、手術後のMRIで腫瘍がはっきりとわかる程度の切除にとどまった場合(部分摘出)は、再び大きくなることがありますので注意して経過を見る必要があります。

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Q18 手術で再発したらどのような治療がありますか?
A18 再発した腫瘍の程度にもよりますが、再手術か放射線療法で対応することになります。

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Q19 放射線療法(γ-ナイフ、サイバーナイフ等)で治るのでしょうか?
A19 この治療法の目的は、腫瘍を消失させるのではなく、腫瘍の増大を阻止するものです。従って、この治療後に腫瘍が縮小しても消えるものではありません。一般的には、治療後2年程度、腫瘍はむしろ一過性に増大し、その後縮小してくる経過をとります。したがって、長期にわたり画像による経過の観察が必要です。
 なお、技術的な理由から、大きな腫瘍では、治療の対象とはなりません。しかしながら顔面神経麻痺などの合併症のリスクは、手術より低いと考えられますので、高齢者や、全身麻酔の手術リスクの高い方には、良い治療法です。ただし極めて稀ですが、放射線治療により悪性化することがあります。

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Q20 放射線治療をする場合に、年齢制限はありますか?放射線治療後に腫瘍が増大してきた場合には、どのように治療するのでしょうか?
A20 基本的には年齢制限はありません。しかし、極めて稀ですが放射線治療により腫瘍が悪性化することがありますし、また、この治療法が腫瘍を消失させるのではなく増大を阻止する治療法であるため、治療後長期にわたり画像による経過の観察が必要となるので、若年者に対しては手術治療を優先させる考え方があります。さらに、大きな腫瘍では技術的に効果的な治療ができないため、腫瘍サイズの制限があります。
 放射線治療後には、一過性に腫瘍が増大し、その後徐々に縮小していきます。腫瘍の増大が生じることで、ふらつきや頭痛など、日常生活に支障が生じるような症状が持続する場合には手術が必要になります。また、縮小後の長期の経過観察で、腫瘍が再増大した場合にも手術治療が必要となります。放射線治療後の手術では顔面神経や聴力の機能保存は大変難しくなります。

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Q21 偶然聴神経腫瘍が見つかり、MRI撮影で定期的な経過観察を受けています。悪性化して手遅れになるようなことはないのでしょうか。
A21 聴神経腫瘍は良性の腫瘍であるため、MRIを用いて経過観察のみを行うことがよくあります。悪性化することはほとんどありませんが、徐々に大きくなることが多く、急に大きくなることもありますので、主治医の指示に従い定期受診を継続することを強くお勧めします。

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Q22 聴神経腫瘍のために片耳が完全に聞こえなくなりました。反対側の耳は普通に聞こえます。補聴器を使用すればもっと聞こえは良くなるでしょうか。また、身体障害者に認定されますか。
A22 片耳が正常に聞こえる場合、一般には補聴器の効果は望めません。また片側のみの難聴では身体障害者(聴覚障害)には認定されません。

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Q23 最近めまいがするので耳鼻科を受診しました。耳の聞こえには問題ありません。念のためにと勧められてMRIを検査したところ、右内耳道内に5 mm大 の聴神経腫瘍があると言われました。治療はどうすればよいのでしょうか。
A23 聴神経腫瘍の多くは良性の腫瘍ですので、転移することはなく、急に大きくなることも多くありません(一般には、1年間で平均1 mmづつ大きくなると言われています)。しかしながら、腫瘍の大きくなり方は、患者さんによってまちまちです。現時点での治療方針としては、1)腫瘍が小さく、聴力が良好なうちに手術で腫瘍をとる、2)半年毎にMRI検査を行い、腫瘍が大きくなるようであれば、その時に治療を考える、という2つの選択肢があります。手術を行った場合、術後に聞こえが悪くなる可能性がありますが、手術をしないで経過観察している途中でも、腫瘍の影響で聴力が急に悪化することがあります。この場合、副腎皮質ステロイドなどの投与で改善する場合がありますが、改善できない場合が少なくありません。一方、経過観察中にめまいの発作を繰り返すこともあります。めまいの発作の程度、頻度が日常生活の障害になっている場合には、腫瘍を摘出することによってめまい発作を軽減できる可能性があります。

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Q24 聴神経腫瘍のフォローアップで毎年MRIを撮影しています。体に悪影響はないでしょうか?
A24 MRIは,地磁気の数千倍〜数万倍というきわめて強い磁力と,微弱な電磁波を使用する検査法です.発癌など明らかな有害作用が知られているエックス線と異なり,このいずれも人体に悪影響を及ぼすことはありません.ですから安心して検査を受けて下さい。
例外として,心臓ペースメーカーなど医療用電子機器を使用されている場合は,機器の動作不良の原因となるため検査できません.また,妊娠前半期の患者さんについては,特に緊急性がない限りは検査を控えるのが一般的です.これは,MRI導入期に,磁気や電磁波の妊娠,胎児への影響が未知であることを理由に導入された米国での勧奨事項に基づくものです.しかし,MRIが臨床に供されて既に30年経ちますが,MRIが妊娠経過や胎児に有害作用の原因となった事例の報告はありません.ただし,MRIで用いる造影剤は胎児への悪影響の可能性があること,乳汁中にも分泌されることから,妊娠中および授乳中は,造影剤を使用せずに検査します。

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Q25 何もしないで放っておいたらどうなりますか?
A25 腫瘍の大きくなり方はゆっくりであることが多いので、すぐに命に関わることはありません。しかし、ゆっくりでも徐々に大きくなった場合には、脳を圧迫して命に関わることになります。さらに、ある程度の大きさの腫瘍では、急に大きくなって緊急事態に陥ることもあります。定期的にMRIで腫瘍の大きさを見ておくことは絶対に必要です。

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Q26 電磁波で脳腫瘍ができると聞いたことがありますが、携帯電話を使っていても大丈夫でしょうか?
A26 世界保健機関(WHO)の組織が、携帯電話の電磁波には聴神経腫瘍の限定的リスクがあると発表しましたが、実際には「関係あるかもしれない」程度のようです。もちろん、現時点で聴神経腫瘍の患者さんが携帯電話を使っていて影響が出るという証拠は一切ありません。

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