ARDSに対するClinical Practice Guideline第2版
ARDSに対するClinical Practice Guidelineが改定されました。
雑誌「人工呼吸」第21巻1号p44~p61に掲載されています。
日本呼吸療法医学会・多施設共同研究委員会
目 次
はじめに
第一章:定義
【Ⅰ】ARDSの定義
第二章:ARDSの治療
【Ⅰ】気道確保と管理
【Ⅱ】人工呼吸器の初期設定
【Ⅲ】換気様式の選択と適正換気条件
【1】調節換気(VCV & PCV)
【2】部分的換気補助(SIMV & PSV)
【3】HFO
【Ⅳ】離脱時期(過程)の呼吸管理と抜管の基準
【Ⅴ】鎮静薬・筋弛緩薬の使用法
【Ⅵ】人工呼吸管理の合併症
【Ⅶ】呼吸理学療法
【Ⅷ】補助的治療法
【1】NO吸入療法 (Inhaled NO therapy)
【2】経静脈的薬剤 (Intravenous Drug)
【3】CRRT(Continuous renal replacement therapy)
【4】ECLA (Extracoporeal lung assist)
【5】サーファクタント (Surfactant therapy)
【Ⅸ】循環管理
おわりに
はじめに
呼吸療法医学会多施設共同研究委員会は2002年から、1999年に策定した急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome: ARDS)の臨床診療指針(Clinical Practice Guideline: CPG) の改訂作業に向けての準備を開始した。前回と同様にARDSまたはALIを対象とした臨床研究を集め委員間で分担して読み合わせを行い、改訂すべき点を検討した。
主な改訂点は以下の通りである。
1)臨床研究のランク付けや推奨の強さを示す指標を変えた。
2)この間に米国ARDS networkによるものをはじめ、ARDSに関する重要な臨床研究がいくつか発表された。
対象とした研究項目は
①一回換気量の制限
②感染症を合併していないARDSの慢性期に対するステロイド投与
③リソフィリン、N-アセチルシステインなどの薬物療法
④一酸化窒素吸入治療
などである。
レベル | 内容 |
Ⅰ | 最低一つのRCTやMeta-analysisによる実証 |
Ⅱ | RCTではない比較試験、コホート研究による実証 |
Ⅲ | 症例集積研究や単なる専門家の意見 |
推奨度 | 内容表現 |
A | 強く推奨する?する。または、?しない。 |
B | 一般的に推奨する?した方がよい。または、?しない方がよい。 |
C | 任意でよい、または推奨しない不明である。?してもよい。または、?しなくてもよい。 |
定期的見直しの必要性
このガイドラインは現時点での推奨に根拠を与える収集可能な最大限の文献を参考に作成されている。今後、本ガイドラインには2-3年ごとの定期的な見直しが必要であるが、そのための組織を恒常的に確保することが必要である。
第一章:ARDSの疫学
【Ⅰ】ARDSの定義
実態調査にあたってARDSの定義はアメリカ・ヨーロッパのコンセンサス会議に従った 。
表:ARDSの定義 アメリカ・ヨーロッパコンセンサス会議22)胸部レントゲン写真上、両肺野に浸潤陰影を認める
3)酸素化障害がある。動脈血酸素分圧(PaO2)と吸入酸素濃度(FIO2)の比(P/F比)が200mmHg以下
4)測定できるのなら肺動脈楔入圧が18mmHg以下。または、臨床上左房圧の上昇を示す所見がない
P/F比とは、動脈血酸素分圧(mmHg)を吸入酸素濃度で割ったものである
第二章:ARDSの治療
【Ⅰ】気道確保と管理
【1】気道確保の方法- 気管挿管
ARDSでの気道確保としては、経口気管挿管を行う[推奨度 A、Level III]。
状況に応じて以下の気道確保法を選択して良い。
- 経鼻挿管(適応:頸椎の安静確保や可動性不足のため、経口挿管が困難である場合。注意点:鼻孔・鼻翼の壊死、副鼻腔炎などの合併症を起こしやすい。チューブの閉塞や屈曲、狭窄などが起こりやすい。気管支ファイバー検査が行いにくい。)
- 気管切開(適応:経口、経鼻での気管挿管が不能であるか禁忌である場合。また、経口や経鼻気管挿管患者で、長期にわたる場合に、いつ気管切開を行うかについて一定の基準はない。患者の安楽や苦痛、処置に伴う危険性、予測される人工呼吸期間などを考慮して決定する)
- 非侵襲的陽圧換気、ラリンゲルマスク
陽圧換気を要するARDS患者に対して気管挿管を行わず鼻マスクやフェイスマスクを用いた非侵襲的陽圧換気行うことは推奨しない。NPPVに慣れていない施設では、ARDSに対する人工呼吸の気道確保としては気管挿管を選択するべきである[推奨度 A, Level I]。
但し、血液悪性疾患、臓器移植後の免疫不全患者では、非侵襲的人工呼吸の方が有効であることが示されている。NPPVに慣れている施設では試みるべきである[推奨度 B, Level I]
NPPVを用いてもARDSの半数では気管挿管が必要であった。NPPVには技術や手技に差があるので、それぞれの施設の経験や体制に十分考慮して適用を考慮する必要がある。
血液悪性疾患、免疫不全患者に伴う呼吸不全の場合、死亡率が高く人工呼吸関連肺炎を併発するとほぼ全例死亡することが示されている。このような症例に関してはNPPVを試みることで気管挿管をさけられる患者があり、全体として予後改善効果を示す結果が複数のRCTで示されている。痰の多い患者は除外される。
ただし、ARDS患者が含まれると思われる低酸素血症を主症状とした急性呼吸不全患者に対する非侵襲的陽圧換気の予後改善効果は示されておらず、効果は不明である 。
また、ラリンゲルマスクは確実な気道確保の方法ではなくARDSには推奨できない。
- 気管チューブの固定 経口挿管では左右の口角に24時間ごとに固定し直し、固定部位の長さを記載する。経鼻挿管では鼻翼、鼻孔の圧迫・壊死に注意する。
- カフ圧の管理 気管チューブのカフ圧はカフ圧計にて通常15~25cmH2O以下に設定する。一日に2~3回の測定が必要である。大量の空気を入れてもカフ圧が上昇しない場合はカフ洩れかカフの咽頭での膨張を考える。定期的にカフを虚脱させる必要はない。
- 気管チューブの交換 定期的な気管チューブの交換が、肺合併症の発生頻度を低下させたという証拠はないため、気管チューブの入れ替えを定期的に行う必要性はない。入れ替えは気管チューブの狭窄・閉塞の場合にのみ適応となる。
- 説明と同意 気管挿管および人工呼吸開始にあたっては、緊急の場合以外、その理由、状況などを患者や家族に説明し、理解と同意を得る。特に、気管挿管のため、しばらくは発声・会話ができなくなることを説明する。
【2】気道管理
気管内吸引の手順
①1~2時間ごとに行なう。ただし、喀痰量が多い場合には更に頻回に行なう。
②一回毎に、滅菌ディスポ手袋、滅菌カテーテルを使用し、無菌的に施行する(摂子でカテーテルを操作してはならない。また、チューブを薬液に浸漬して再使用しない)
③吸引カテーテルの太さは気管チューブの1/2以下とする
④ECGモニターとパルスオキシメーターによる監視下で行う。
⑤吸引操作により低酸素血症の発生が予測される場合には、100%酸素で充分に換気した後に行なう。
⑥吸引操作は愛護的に行ない、1回10~15秒以内とする。
⑦吸引カテーテルを無理に深く入れない。
⑧カテーテルの入りぐあい、咳嗽反射の程度、吸引物の性状・量も観察する。
⑨吸引終了後、肺を充分に拡張させる。
⑩吸引圧は成人で120~150mmHg、小児で80~120mmHgに設定する(吸引圧上限が設定できる吸引装置を使用する)。
閉鎖式吸引カテーテルキット
吸引中の低酸素血症が予測される患者では、閉鎖式吸引カテーテルキットの使用を推奨する[推奨度 B Level II]。閉鎖式吸引カテーテルキットを使用すると、PEEPをかけたまま、あるいは換気を続けながら気管内吸引でき、しかも、手袋を使わなくても清潔操作ができるなどの利点がある。挿管患者を対象にしたランダム化比較試験で、人工呼吸器関連肺炎の発生頻度の減少を示唆する結果が示されている 。
このキットは同一の吸引カテーテルを繰り返し使うことになるので、細菌が繁殖する危惧がある。しかし、従来のカテーテルを毎回交換する方法と比較して、細菌繁殖はないという報告がある 。交換頻度を毎日交換しなくても人工呼吸器関連肺炎の頻度は変わらなかったという報告がある , 。ただし、この一方の研究の肺炎発生頻度は1.9/1000人工呼吸日数と人工呼吸気関連肺炎発生率が低い現場で行われている9。肺炎が高頻度で見られる現場での使用期間の延長には注意が必要である。メーカーは24時間の使用を保証している。使用期間の延長はしない方がよい。
トイレッティング
喀痰が粘稠な場合に行なってよい。ただし、低酸素血症などの合併症が起こることがあり、ルーチンの施行は奨励されない。
気管内吸引施行時の合併症
低酸素血症、血圧変動、頻脈、徐脈、不整脈、頭蓋内圧上昇、気道損傷と気道出血などがある。したがって、気管内吸引はバイタルサインに注意しながら短時間で行なう。
口腔内清拭
人工呼吸中の肺炎の多くは咽頭・口腔から侵入した常在菌によって起こることが多い。口腔内清拭は重要である可能性は高いが、人工呼吸器関連肺炎の予防に関する結果は出ていない。従って、その頻度、使用薬剤は不明であるが、8~12時間に一回、イソジンガーグル液(30倍希釈)を用いた口腔内清拭などが行われている。
【Ⅱ】人工呼吸器の初期設定
【1】人工呼吸器の始業点検と動作確認回路の組み立て後、患者に接続する前に、リークテスト、テスト肺を用いて動作確認をする。 【2】初期設定
- (1)換気様式
- ①自発呼吸が無い場合
調節換気(controlled mechanical ventilation:CMV)の設定とする。 - ②自発呼吸がある場合
SIMV、PSV、補助・調節呼吸(Assist/Control)などを選択する。自発呼吸をトリガーできるように、圧トリガーでは吸気トリガー感度を-1~-2cmH2Oに、流量トリガーでは、2~3L/分に設定する。
頻呼吸(40回/分以上)や強い吸気努力を伴い、患者-人工呼吸器の同調性が悪い場合は、適正量の鎮静薬、筋弛緩薬を投与して調節換気に変更する。
- ①自発呼吸が無い場合
- (2)吸気酸素濃度(FIO2)
初期設定では1.0(100%)とする。15~30分後に血液ガス分析を行い、PaO2を参考にFIO2を低下させる。 - (3)一回換気量(VT)
10ml/kg以下とする。PSV、PCVなどの圧規定型換気様式の場合、一回換気量は二次的に決定される。すなわち、モニターされる一回換気量を参考にPSV、PCVの圧を設定する。
- (4)換気回数
補助・調節換気、SIMVの場合に設定が必要である。10~30回/分に設定する。 - (5)PEEP
PEEPの初期設定値は5 cmH2O以上とする。PaO2、最高気道内圧、循環抑制の程度などを参考に調節する(通常は5~20 cmH2Oになる)。
- (6)その他のパラメータ
必要に応じて、吸気フローパターン(矩形波、漸減波)、吸気フロー、吸気ポーズなどを設定するが、どれが優れているかは不明である。
- (7)アラーム
最高気道内圧と最低分時換気量(最低一回換気量)のアラームを設定する。分時換気量の測定が出来ない機種では低圧アラームを設定する。バックアップ換気が設定できる人工呼吸器ではその設定を必ず行なう。また、無停電電源のない病棟ではバッテリー駆動ができる人工呼吸器を使用する。 - (8)加温加湿器
加湿器の水分供給能力について、アメリカ標準規格(ANSI)では絶対湿度33mg/L以上としている。実際には、加湿器の温度を気管チューブ内に結露がある程度に調節する。- ①カスケ-ド加湿器
Bubble diffusion型の改良されたもので、ガスを水中に導き、細かい泡状にしてガスと水との接触面積を増やしている。ガスが水中に入るため気流抵抗が高くなり、吸気トリガーの遅れの原因になる。水温は、ヒーター調節用ダイアルで設定する。しかし、実際の吸入気の温度は口元の温度計でモニターする。
- ②Pass-over型加温加湿器
使い捨ての加温加湿チャンバーを使用する。気流抵抗は小さいが、高流量ガスに対して加湿効率は低下する 。従って。高流量で使用する際には口元の温度を高めに設定する。ホースヒーター(熱線)付きのタイプは、吸気回路内に電熱線を入れることにより、吸気ガス冷却による回路内結露を防ぐ。気管チューブ内および吸気回路終末部分にうっすらと結露していることを確認する。
- ③水蒸気透過膜型
液体状の水は通過せず、水蒸気のみを通過させる高分子膜を利用した加温加湿器が開発されてきた。この膜は一枚構造のものや、中空糸構造にして表面積を大きくしたものなどがある。加湿効率は良好で高流量にも対応が可能である。
- ①カスケ-ド加湿器
- (9)人工鼻(heat and moisture exchanger:HME)
人工鼻(HME)はYピースと気管チューブの間に装着する。内部は繊維、紙、スポンジなどでできており、呼気中の熱や水分を貯え、次の吸気時に放出するものである。機種によって加湿効率や気流抵抗、死腔量、さらには、除菌フィルター機能の有無などの違いがある 。しかし、人工鼻の加湿性能は絶対湿度30mg/L前後である。ARDS患者では吸気流速が速いために人工鼻の加湿効率は低下し、加湿が十分であるかどうかは明らかでない。また、長期人工呼吸が予測され、分泌物の除去は重要な問題である。ウイニング困難な症例の場合、人工鼻の気道抵抗増加による呼吸仕事量の増加、死腔の増加は問題となる。使用にあたっては慎重に判断する。
HMEの交換頻度に関しては、1週間までであれば、回路内の細菌発生頻度の上昇などは見られず、合併症の増加もないことが示されている 。
【Ⅲ】換気様式の選択と適正換気条件
一回換気量は10ml/kg以下に設定する。吸気終末のプラトー圧は30 cmH2O以下となるように設定する[推奨度 A Level I]。一回換気量は12ml/kg以上としてはならない。吸気終末のプラトー圧は35 cmH2Oを超えるように設定してはならない[推奨度 A Level I]。
ただし、一回換気量を設定する場合の体重は実測体重ではなくpredicted body weightかdry body weightを用いる。Predicted body weightについては付録の換算表を参照
ARDS患者に対する人工呼吸器の初期設定としては原則としてVCVよりもPCVを選択したほうがよい。[推奨度 B Level I]
換気様式には、調節換気としてvolume control ventilation(VCV)とpressure control ventilation(PCV)、部分的換気補助としてsynchronized intermittent mandatory ventilation(SIMV)、pressure support ventilation(PSV)があり、さらに評価の一定していないinverse ratio ventilation(IRV)、airway pressure release ventilation(APRV)などがある。初期設定としてはPCVを推奨した。しかし、特定の換気様式がARDSに対して有用であるとする強い根拠はない。それぞれの換気モードについては、以下に解説した。
ARDSの呼吸管理は気管挿管下の部分的換気補助で対応可能である。しかし、部分的換気補助を用いた場合、患者-人工呼吸器の不同調が問題となる。特に、患者の吸気努力が不規則であったり大きすぎたりする場合、呼吸器系のコンプライアンスが低下した場合、吸気感知が困難である場合などには、鎮静剤などを用いて患者の呼吸努力を抑え調節換気とする。
【1】調節換気換気方法
PCVでは吸気時の気道内圧と吸気時間、呼吸回数を設定する。換気量は肺のコンプライアンスにより変動するが、気道内圧は設定以上には上昇しない 。換気量を設定するVCVでは一回換気量が規定されるので換気量の維持に優れる。しかし、コンプライアンスの低下によって最高気道内圧の上昇が起こる。PCVがVCVに比較して合併症予防の点から優れていることを示唆する研究があり、多くのARDSに対する人工呼吸器管理を論じた臨床研究でもPCVが検討対象となっていることから、このガイドラインではARDS患者に対する換気設定としてPCVを推奨した 。
換気設定
高い気道内圧は残存する正常肺胞の過伸展を起こす。これを防ぐ気道内圧の上限圧は確立されていなかった。従来から、Total lung capacityにおける経肺胞圧差は30 cmH20であること、また多くの動物実験のデータから判断すると、吸気終末の気道内圧のプラトー圧は35 cmH20を超えないことが望ましい とされてきた。その後、気道内圧を制御することによりARDS患者の生存率を改善させる報告と改善させない報告があったが、ARDSnetによるランダム化比較試験で、一回換気量を12ml/kgとし、吸気終末のプラトー圧を50 cmH2O以下にする呼吸管理の方が、一回換気量を6ml/kgとし最高気道内圧を30 cmH2Oとする呼吸管理のよりも、入院死亡率が高かったが示され 、このガイドラインでもこの結果を踏まえた設定を推奨した。ただし、必ずしも一回換気量を6ml/kgが適正な一回換気量であることを示した結果ではなく、あくまでも12ml/kgの一回換気量の害を示したものであるというメタ分析による解釈を考慮し、10ml/kg以下の一回換気量を推奨した。
自発呼吸の出現にそなえてトリガー感度を-1~-2cmH2Oに設定する。
FIO2の設定は低酸素血症を防ぐために1.0で開始する。調節換気時のPaO2は平均気道内圧に相関するため、PaO2が低下している場合はPEEPを3~5cmH20きざみに上げて平均気道内圧を上昇させる(PEEPの上限は20cmH20、PEEPによる循環抑制や脳圧の上昇などが問題となる症例では上限を低く設定すること)。それでも十分なPaO2が得られない場合は吸気時間を延長させることを考えるが、通常吸呼気比が1を超えることはない。PaO2>60mmHgを保つ限り、FIO2を0.6まで低下させる。
肺胸郭系の圧-容量曲線のlower inflection pointを測定し、PEEPレベルはlower inflection pointを超える値が良いとする報告があった 。このような呼吸管理の有効性を検討するランダム化比較試験がARDSnetによって行われた。Steinbrookのレポート によれば、この試験結果は紙上発表されていないが有効性がないことから2002年2月に中断されている。従って、現時点で推奨できない。
- (1)Pressure control ventilation (PCV)
初期設定として最高気道内圧15~25 cmH2O、吸気時間0.7~1.0 秒とし、一回換気量が10ml/kg以下であることを確認する。呼吸数を10~30 回/minに設定する。換気量の低下によるPaCO2の増加は、頭蓋内圧亢進症状の危険性がない場合は容認する(permissive hypercapnia)。PaCO2の上限は明らかでないが、一般的にはpH > 7.2でPaCO2<80 mmHgを目安とする。
- (2)Volume control ventilation (VCV)
初期設定として、一回換気量は10ml/kg以下で呼吸数は10~30回/minとする。吸気流速は吸気呼気比が1:2から1:3前後になるように30~50 L/minで設定する。肺胞の過伸展を防ぐために、吸気終末のプラトー圧が35 cmH2Oを超える場合には一回換気量を低下させる。結果として起こるPaCO2の上昇は、PCVと同様に許容する。
- (3)Inverse ratio ventilation (IRV)
IRVはPEEPを用いてもPaO2の改善が見られないときに試みられる。しかし、IRVがPEEPを用いた従来の換気様式と比較して、酸素化に有効である証拠はない。IRVを用いるときは深い鎮静や筋弛緩を必要とし、auto-PEEPによる循環抑制や圧外傷の発生の危険があるため、用いない方がよい[推奨度 B, Level II]。
【2】部分的換気補助
- (1)Synchronized intermittent mandatory ventilation (SIMV)
SIMVは強制換気と自発呼吸が混在する換気様式である。強制換気と自発呼吸を合計した呼吸数が30 回/min以下になるように強制換気の回数は10~20 回/minで設定する。強制換気はPCVあるいはVCVで行う。強制換気の回数あるいは一回換気量の増加に伴い患者の呼吸仕事量は低下する。強制換気の間に存在する自発呼吸の呼吸仕事量を軽減させるために、SIMVにPSVを併用することは有用である。
- (2)Pressure support ventilation (PSV)
PSVにおいてはすべての自発呼吸を一定の気道内圧で補助する。送気時間は一定のサポート圧を維持するのに必要な吸気流速が設定値より低下すると終了する。PSVレベルは呼吸数が30 回/min以下になるよう15~25 cmH2Oとする。5 cmH2O程度のPSVは、気管チューブなどによる負荷呼吸仕事量を代償する。麻薬や鎮静薬などを用いて呼吸ドライブを抑制することにより、相対的に低いPSVレベルで患者‐人工呼吸気の同調性が改善し、呼吸仕事量の増加を防ぐことができる。ARDSのようにコンプライアンスの低い肺では人工呼吸器の種類によってプレッシャーサポートが患者の吸気時間より早く終了する(premature termination)ため、十分な一回換気量や吸気努力の軽減が得られない場合がある。このような場合はサポート終了基準流量がなるべく低い人工呼吸器を使用するか、終了基準を調節できる機種を選び患者の吸気努力終了と合うように調節する。
ARDSを対象としたHFOのランダム化比較試験では、HFO装着直後の酸素化能の改善が見られ、30日後の死亡率にも従来の換気では52%、HFO 37%と低下が見られたが統計学的な有意差はなかった(実死亡率減少15%, p=0.102, 95%信頼区間 -32%から +2%) 。ただ、30日後の転帰を見ると、HFO群で人工呼吸器から離脱できていない患者が多く、人工呼吸器から離脱している生存者の割合で見ると、31%と36%と差が少なくなっていた。ARDS患者についてHFOが生存率を改善するか、長期的な予後を改善するかはまだ不明である。ただし、装着によって酸素化能が改善することは他の研究でも示されている 。低酸素血症の患者においては使用しても良い。
【Ⅳ】離脱時期(過程)の呼吸管理と抜管の基準
【1】離脱の開始の条件(1)ARDSが改善していること。
(2)酸素化が十分であること。
(FIO2≦0.6でPaO2/FIO2≧200 mmHg 、SpO2≧90% 、FIO2≦0.4、PEEP≦5cmH2OでPaO2≧60~100mmHg )
(3)一回換気量(VT)≧5ml/kg・BW、呼吸数≦30~35回/分、努力性呼吸がないこと。
PaO2が60~100mmHgを目標にFIO2とPEEPを下げていく。FIO2が0.6以下になるまでは、まずFIO2を0.05~0.1刻みに下げる。FIO2が0.6まで下がったらPEEPを2~3cmH2O刻みに3~5cmH2Oまで下げる。
【3】換気補助の軽減方法離脱時期に推奨される換気様式にSIMV、PSV、T-ピースがある。しかし、どれが挿管の期間を短くし、再挿管を避けるという点で優れているかは不明である。また、ARDSに限定した検討はなされていない。したがって、その施設でなれている方法で離脱を行えばよい。
呼吸不全患者で24時間以上人工呼吸を受け急性期を脱した後、2時間のT-ピース・トライアルに耐えられない患者を対象にT-ピース、SIMV、PSVを比較したランダム化比較試験では、PSVによる離脱が他の2法に比べて失敗率が低く、離脱に必要な期間、ICU在室日数ともに短かった32。一方、同様に24時間以上人工呼吸を受けている急性呼吸不全患者で、SIMV、PSV、1日1回のT-ピース・トライアル、1日2回以上の自発呼吸試行、の4法を比較した多施設ランダム化比較試験では30、1日1回のT-ピースによる自発呼吸の試行がSIMV、PSVと比較してそれぞれ3倍及び2倍早く抜管が可能であった。また、2時間の自発呼吸の試行を行う場合、T-ピースによるものもPSVによるものも同様の抜管成功率を示した34。
具体的な手順を以下に示す。- (1)SIMVでは設定換気回数を2~3回/分ずつ下げる。
- (2)PSV ではサポート圧を2~3cmH2Oずつ下げる。
- (3)T-ピースによる場合、自発呼吸の時間を徐々に延長していく(2時間まで)。
- (4)何れの方法でも、呼吸回数の総数30~35回/分以下、分時換気量10 L/min以下を目安に進める。
- (5)参考にすべき換気パラメータとしてP0.1≦4.5cmH2O、f/VT<100、 、(<80 、<105 )がある。
【4】抜管の指標
感度及び特異度が十分に高い単一指標はない。抜管 (あるいは人工呼吸器離脱) の成否に関わる古典的な換気パラメータのカットオフ値としては、換気回数(RR)≦30~35回/分、一回換気量(VT) >5~10ml/kg、肺活量(VC) >10~12ml/kg、最大吸気陰圧(MIP) <-20cmH2O(-25 cmH2O)、分時換気量(VE) <10~15 L/分 などがある。しかし、例えばVC>10ml/kgの場合の離脱成否の感度は18%で特異度は50% 、>15ml/kgの場合でも感度が15%で特異度は63% というように、単一の指標での離脱成功の予測率は低い。
Rapid shallow breathing index (f/VT)33、35は、1分間のT-ピース・トライアルでの値が105回/分/Lを越えるか否かで抜管の成否が決まるとされる が、その有用性に関しては異論も多い 。f/VTのカットオフ値が80、100、120の人工呼吸器離脱成功に関する感度と特異度はそれぞれ81%と89%、97%と68%、97%と50%といわれ 、感度が高くても特異度は低い。
【Ⅴ】鎮静薬・筋弛緩薬の使用法
【1】人工呼吸中の鎮静薬と筋弛緩薬投与の目的
ARDSに対する人工呼吸中には患者の苦痛を軽減し安静を得るために鎮静薬・鎮痛剤の投与が必要となる。また、体動やシバリングに伴って血行動態が悪化したり、危険なほどの体動がある場合には筋弛緩剤が投与される。
- (1)患者の快適性・安全性の確保
- ①不安を和らげる
- ②気管チューブ留置の不快感の減少
- ③動揺・興奮を抑え安静を促進する
- ④睡眠の促進
- ⑤自己抜管の防止
- ⑥気管内吸引の苦痛を軽減
- ⑦処置・治療の際の意識消失(麻酔)
- ⑧筋弛緩薬投与中の記憶消失
- (2)酸素消費量・基礎代謝量の減少
- (3)換気の改善と圧外傷の減少
- ①人工呼吸器との同調性の改善
- ②呼吸ドライブの抑制
【2】鎮静薬と筋弛緩薬を投与する前に考慮すべきこと
まず、鎮静剤を用いないで解決できる問題がないか検討すること。例として以下のような方法を考慮する。
- ①患者とのコミュニケーションを確立する。
- ②患者のおかれた状況の詳しい説明を行う。
- ③頻回の体位変換を行い安静による苦痛を取り除く。
- ④患者家族のICU滞在時間の延長し家族と共にいる時間を多くする。
鎮静の目的に応じた鎮静薬を選択し投与する。
筋弛緩剤は意識を落とすことなく不動化するため、単独での使用は行ってはならない。必ず鎮静剤・鎮痛剤と併用する。また、筋弛緩に伴い患者の吸気努力や咳反射がなくなる点を考慮し、筋弛緩剤投与直後に人工呼吸器設定の変更や長期管理にあたっては気管支ファイバースコープによる気道分泌物吸引などが必要でないか検討する。
【3】鎮静薬・筋弛緩薬の選択
- (1)鎮静薬として推奨する薬剤
- ①ミダゾラム
短時間作用性のベンゾジアゼピン系薬剤である。水溶性。作用発現は速やかである(2~2.5分)。逆行性健忘をきたす。速やかに再分布し、作用時間は短いので、長時間の鎮静には持続静注する。0.03mg/kg/hrで持続静注する。鎮静効果をみて適宜増減するが、一日一回は投与を中止し、過剰の鎮静を防ぐ。長時間の持続静注を行うと効果が遷延することがある。
- ②プロポフォール
静脈麻酔薬。鎮静量の投与で鎮静、催眠、抗不安作用がある。逆行性健忘をきたす。ミダゾラムとほぼ同様に有用な鎮静薬 である。鎮静量を静注投与すると1~2分で効果が現われ、効果は10~15分持続する。鎮静には持続静注がよい。長時間の持続静注を行うと脂肪組織に蓄積し、半減期は延長して300~700分に達する。投与は0.5mg/kg/hrで開始し、5~10分ごとに0.5mg/kgずつ増量し、効果をみながら調節する0.5~3mg/kg/hrで維持が可能である。副作用として低血圧がある。
脂肪製剤であるため、静注ルートから感染する危険性が高く、厳重な衛生管理が必要である 。鎮静のためにバイアルから直接プロポフォールが投与されるとき、プロポフォールの未使用部分は12時間以内に廃棄しなければならない 。また、筋融解や代謝性アシドーシスなどの重篤な合併症も知られており、特に小児に長時間使うことは避けるべきである。
- ③ジアゼパム
ベンゾジアゼピン系薬。末梢静脈から静注すると局所の疼痛や静脈炎を頻繁に起こすこと、作用時間が長いこと、などから最近はあまり用いられなくなった。
- ④ハロペリドール
神経遮断薬。意識をとる鎮静薬としてではなく、せん妄治療に用いられる 。(せん妄に対してベンゾジアゼピン系薬や麻薬を用いるとせん妄を悪化させることがある)。本薬は静注後30~60分で効果が現われ4~8時間持続する。2~10mgから開始し、これを2~4時間ごとに繰り返し投与する。副作用として錐体外路症状がある。抗パーキンソン病薬の併用が必要となることもある。また、心電図上、QT延長がみられることがあり、同様の副作用のある薬剤との併用は注意する。
- ⑤モルヒネ
麻薬。強い鎮痛作用があり、多幸感をもたらす。呼吸抑制作用があり、呼吸ドライブを抑制する。鎮咳作用もある。疼痛やストレスの強い人工呼吸患者にはモルヒネが最もよい。価格も安い。半減期は正常者で1.5~2時間である。モルヒネにはヒスタミン遊離作用があり、低血圧、掻痒感などの副作用が現われることがある。また消化管の蠕動を抑制するため、胃内容の停滞やイレウスがみられることがある。
成人に対する投与量は効果をみながら調節するが、0.05mg/kgを初回投与量とし、これを5~15分かけて静注し、2~4mg/hrを追加する。追加投与は適宜一回静脈内投与とするか持続静注するがなるべく持続投与は避ける。
- ⑥フェンタニ-ル
麻薬。モルヒネとほぼ同様の利点を持つ。モルヒネよりも作用発現が速やかである。静注後すみやかに末梢組織に再分布して血中濃度は低下する。半減期は30~60分で モルヒネよりも調節性に富む。しかし、長期に投与すると末梢組織に蓄積し半減期は9~16時間に達する 。ヒスタミン遊離はなく、循環動態に与える影響は少ない。モルヒネにみられるような多幸感はほとんど得られない。まず1~2mcg/kgを静注し、0.5~2mcg/kg/hrの持続静注を行うが、可能な限り、持続投与は避ける。
- ⑦ブプレノルフィン
Opiate agonist-antagonist。軽度?中等度の疼痛には有効である。
- ⑧ペンタゾシン
Opiate agonist-antagonist。15~30mgを使用する。
- ⑨吸入麻酔薬
鎮静目的での安全性、有効性は不明である。
- ①ミダゾラム
- (2)鎮痛薬として避けるべきもの
- ①非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs:nonsteroidal anti-inflammatory drugs)
鎮痛作用において麻薬に劣る。消化管出血、血小板機能低下、腎機能障害、ショックなどの副作用があるため、使用は避ける。
- ①非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs:nonsteroidal anti-inflammatory drugs)
- (3)鎮静薬として推奨できる根拠を示した論文はないが、わが国で鎮静目的に臨床使用されている薬剤
- ①ケタミン
鎮痛効果も持つ静脈麻酔薬。痛みを伴う処置時の鎮静薬として用いられることがある。ケタミンは血圧上昇、心拍数増加、頭蓋内圧上昇などの作用がある。
- ①ケタミン
- (4)筋弛緩薬として推奨する薬剤
適切な鎮静薬の使用にもかかわらず、患者と人工呼吸器の同調性が得られない場合のみ筋弛緩薬の使用を考慮する。
- ①パンクロニウム
非脱分極性筋弛緩薬。0.06~0.08mg/kg静注により4分以内に効果が現われ75~90分持続する。0.02~0.03mg/kgを1~2時間ごとに静注し維持する。持続投与する場合は0.06~0.08mg/kgを静注し、0.02~0.03mg/kg/hrの速度で持続静注する。過剰投与をさけるため、一日一回は持続投与を中止する。
パンクロニウムは形質細胞の脱顆粒を起こしてヒスタミンを遊離する 。皮膚発赤、頻脈、軽度低血圧が現われることがある。通常は迷走神経遮断により頻脈、血圧上昇をきたす。
- ①②ベクロニウム
非脱分極性筋弛緩薬。0.08~0.1mg/kgの静注後2.~3分以内に効果が出現する。持続時間は25~30分と短いため、筋弛緩作用を持続させるには持続静脈内投与がよい。0.04~0.08mg/kg/hrを維持量とする。
- ①パンクロニウム
【4】効果の評価
- (1)鎮痛・鎮静深度
鎮痛・鎮静深度は定期的に評価しなければならない。深度モニターとして広く用いられているものはRamsey鎮静スケール以外ない。覚醒していても不安はなく協調的であるか、眠っていても刺激に対して正確に反応し、咳反射の抑制がないレベルが望ましい(Ramsey鎮静スケールで3?4)。
- (2)筋弛緩作用
基本的には、過量投与を避けるために、不動化の必要に応じて単回投与をくり返す。投与回数が頻回となる場合には、持続投与を考慮する。その場合には過剰投与をさけるため、一日一回は持続投与を中止し体動を確認する。あるいは、筋弛緩モニターで筋弛緩状態を確認しても良い。
【Ⅵ】人工呼吸管理の合併症
【1】人工呼吸器に関連する肺炎(1)頻度と予後
人工呼吸管理を48時間以上必要とした243症例を対象とした調査 では、人工呼吸器に関連する肺炎(ventilator associated pneumonia: VAP)の合併率はARDS症例の55%(31/56)に対しARDS以外では28%(53/187)であった。本委員会のデータベースから同じ条件の症例を抽出しVAPの頻度を調べると全症例でのVAP の合併は5.9%(237/3984)で、ARDS症例では31.3%(91/291)で、両調査結果に大きな開きを認めた。しかし、いずれの報告でもARDS以外の人工呼吸施行症例における肺炎の合併は死亡率を増加させたが、ARDSについて検討すると合併例と非合併例との間に死亡率の差を認めなかった。
(2)抗菌薬の予防的治療- ①静脈内抗菌薬投与
感染を合併していないARDSに予防的に抗菌薬を全身投与しなくてもよい。 - ②
選択的消化管内殺菌(selective decontamination of digestive tract: SDD)[肺炎予防に関してはLevel Iであるが、耐性菌発現の問題が未解決でありARDSに用いることは推奨しないこととした 推奨度 C]
SDD により肺炎の合併率は減るが、死亡率、入院期間、人工呼吸期間は対照群と変わらない。死亡率を改善したとする報告は1編のみである 。人工呼吸患者に対する抗菌薬の予防投与を検討したシステマティックレビューでは、抗菌薬を予防投与しない群と全身投与と経口投与を併用した群では死亡率が減少しているが、経口投与をしたかしないかだけで比較すると死亡率は同等であった 。SDDに関するシステマティックレビューにでは重症なサブグル-プでSDDをおこなった群で死亡率が改善している 。いずれにおいても、肺炎の予防効果は示されている。ただし、SDDでは薬剤耐性菌の保菌が増加することが知られているため、院内感染対策からの評価も必要である。また、これらの臨床試験では研究の質によって肺炎予防効果に一定の傾向があり、厳密な研究の結果ほどSDDの効果が小さいことから過去の研究を統合した結果そのものについての疑義も示されている 。
オランダでICU入室患者を対象としたランダム化比較試験結果が報告され、ICU内死亡が15%と23%、病院内死亡が24%と31%とSDDを行った群で少なかった 。しかし、このICUでは非常に耐性率が低い環境であり、日本のICUでの現状と大きく異なると考えられた。これらのことを踏まえてこのガイドラインではARDSに対するSDDの使用は強く推奨しないことにした。
- ③空腸内経管栄養[ARDS患者に対して空腸内投与による経腸栄養を行ってよい 推奨度 C, Level I]
腹部術後患者を中心とした重症患者に対する栄養管理として、経静脈栄養と空腸経管栄養のRCTにおいて空腸経管栄養の方が肺炎の発症率が低かった (オッズ比0.29; 95% CI: 0.01-0.83)。また、メタ・アナリシスでも空腸経管栄養で肺炎の発症率が低いと報告されている 。(肺炎の発症率のオッズ比 0.35; 95% CI: 0.13-0.94)[推奨度 B]ただし、ARDSに対する経管栄養が肺炎の合併を低下させるかどうかは不明である。
- ④声門下吸引[推奨度 B, Level I]
持続的声門下吸引による人工呼吸器関連肺炎の予防効果を論じた発症率を減少させる。声門下持続吸引を対象群と比較すると、1000人工呼吸日数に対する肺炎発症数は19.9と39.6であった (相対危険度1.98;95%CI 1.03 - 3.82)このあとに行われた心臓外科術後患者にした研究では早期の人工呼吸器関連肺炎が減少し 、挿管患者を対象にしたものでは肺炎の発生率を下げる結果が示されている 。ただ、死亡率や在院日数などには有意な差が認められていない。
【2】ストレス潰瘍[全てのARDS症例に対する予防的薬剤投与しなくてもよい 推奨度 C, Level I]
日本における頻度は不明である。欧米の報告でも潰瘍・消化管出血の診断基準が異なるため報告によって頻度はまちまちであり比較は困難である。メタ・アナリシスによると臨床的に重要な消化管出血発症率は1.5%としている。しかし、ARDSに限定すると発症頻度は不明である。
(1)現在使用可能なストレス潰瘍予防薬- ①抗酸剤
- ②H2ブロッカー
- ③スクラルフェート
- ④選択的ムスカリン受容体拮抗剤
- ⑤プロトンポンプインヒビター
- ①H2ブロッカーがプラセボに対して明確な出血と臨床的に重要な出血の頻度を減らした
- ②H2ブロッカーが制酸剤に対して明確な出血の頻度を減らした。
- ③スクラルフェートがプラセボに対して明確な出血の頻度を減らした。
出血の予防に関しては両薬剤ともに有効である。肺炎の発症は、スクラルフェートのほうが少ないが、統計学的な有意差は認められない。従って、ストレスによる消化管出血のリスクの高いARDS患者においてはH2ブロッカーまたはスクラルフェートの予防投与を推奨する。
【Ⅶ】呼吸理学療法
呼吸理学療法とは、呼吸障害の予防および治療を目的に徒手的治療手技、体位操作などで構成される呼吸管理の一手段である。貯留した気道分泌物の排除、末梢気道の開存、肺胞換気の維持・改善、酸素化の改善が主たる目的で、人工呼吸器からの早期離脱、早期離床と入院期間短縮、ADLの改善など、患者の最終転帰の改善が目標として行われている。
ARDSに対する呼吸理学療法は、体位変換と体位ドレナージによって構成される。前者は新たな肺合併症の予防が目的であり、後者は排痰手技を併用して貯留分泌物の排出を促進することが目的である。
【1】体位変換
(1)通常の体位変換
体位変換は、左右側臥位を1~2時間毎に繰り返す。
(2)半坐位(ファーラー位)[人工呼吸中はなるべく半坐位を保つ。推奨度 B, Level I]
人工呼吸患者を対象に45度の角度で頭を起こすのと仰臥位とするのを比較したランダム化比較試験によれば、臨床所見からの肺炎の頻度が3/39と16/47であった 。リスク比で見ると0.26(95%信頼区間0.10-0.42)と効果は大きく、人工呼吸中はなるべく半坐位を保つほうがよい。死亡率は7/39と13/47と半坐位を保った方の死亡率が低かったが、統計学的な有意差はなかった(p=0.29)。
(3)持続的体位変換[行わなくてよい。推奨度 C Level I]
Kinetic Treatment Table(KTT)による持続的体位変換は左右40度、1日に120回で行なう。KTTに関するメタ・アナリシス では、肺合併症を減少、挿管およびICU在室期間を短縮させたが、死亡率、入院日数には影響を及ぼさず、ARDSや敗血症の患者には無効であるとしている。ARDS患者に対するKTTと2時間毎の体位変換はARDSにおけるガス交換、その他の転帰に関して、両者は同等であった 。
(4)腹臥位[ルーチンに行わなくてよい。推奨度 C Level I]
腹臥位呼吸管理がARDS患者の酸素化能を改善するという数多くの報告があった 、 。この効果を確かめるためにヨーロッパで行われたRCTでは、一時的な酸素可能の改善が見られたが、死亡率や在院日数などの予後に関する効果は示されなかった 。過去の報告では、腹臥位の時間は、30分~20時間と報告者によって異なる。多くは2~8時間ほどである。腹臥位による皮膚障害(褥創など)などの合併症も増えるため、ルーチンに行う必要はない。
【2】排痰手技を併用した体位ドレナージ:急性期のルーチンでの実施は控えた方がよい[推奨度 B, Level III]。
体位ドレナージは、貯留した気道内分泌物を肺区域から排出させる治療手段である。体位ドレナージが有効であるとする科学的根拠があるのは無気肺、分泌物(もしくは血液)の貯留など、ごくわずかの場合に限られる。したがって、ARDSでもそのような場合でのみ有効である。
体位ドレナージは治療体位(ドレナージ体位)、気道内分泌物の移動を促すための手技、咳嗽と強制呼出法または気管内吸引によって構成される。正確なドレナージ体位をとり、気道内分泌物の移動促進を目的に用手的もしくは機械的な軽打法、あるいは振動法を併用するのが従来からの標準的な方法であった。しかし、急性呼吸不全における体位ドレナージは、低酸素血症を改善しない。むしろ、低酸素血症の増悪、心負荷の増大、酸素消費量の増加などの有害性が指摘される75。したがって、このような場合には頭低位などの極端なドレナージ体位は推奨できない。
気道内分泌物に流動性があれば側臥位などのドレナージ体位のみでも分泌物を排出し得る。ARDSで分泌物の誘導排出に軽打法を併用した体位ドレナージが有効かどうかは不明であり、その他の急性呼吸不全において軽打法の施行に伴う疼痛や重症不整脈 などの合併症が高率に発生することから、ARDSでは軽打法の併用は推奨できない。近年、それらにかわって、本邦では分泌物貯留部位に相当する胸壁上を呼気時に圧迫するスクイージングという分泌物移動の手技が試みられているが、その有効性は証明されていない。
ARDSの場合、分泌物は末梢気道に存在することが多いため、体位ドレナージ実施後15~30分後に気管内吸引を行う。本法の実施時間や頻度に関する一定の基準はないため、分泌物の量や性状により決定する。
【3】吸入療法(エアロゾル療法):投与しない方がよい [推奨度 B, Level III]
人工呼吸管理中のエアロゾル療法では、ネブライザーを用いて、気管支拡張薬、喀痰溶解薬、抗菌薬が投与されることがある。しかし、ARDSにおけるこれら薬剤の有効性は証明されておらず、感染の機会となることが指摘されているので、推奨しない。
【4】その他
呼吸理学療法にはリラクセーション、呼吸訓練、呼吸筋訓練、離床と運動療法などの手段がある。これらは、慢性呼吸不全とその急性増悪時に有効性が認められているが、ARDSの急性期呼吸管理においては推奨しない。
【Ⅷ】補助的治療法
【1】NO吸入療法:投与しない方がよい[推奨度 B, Level I]
RCTによる評価では、30日死亡率、合併症発生率、人工呼吸器装着時間には有意差を認めず 、酸素化、死亡率に関しても有意差を認めていない。また、これらの研究を統合したシステマティックレビューにおいても、一時的な酸素化の改善は認めるものの死亡率の改善効果は認められていない 。これらのことから、ARDSに対する適応はない。[Level I]
【2】経静脈的薬剤
(1)ステロイド
急性期ARDS、コントロールされていない感染症を持つ患者、肺感染症を合併した患者には投与しない[推奨度 A, Level I]。
慢性期(発症7日以降)に対して呼吸器感染症を否定した上での使用は行っても良い[推奨度 C, Level I]
ARDSの後期の線維増殖相でのステロイドの使用が有効であるとの症例報告が出た 。さらに、発症後7日の時点で血液ガスの改善がみられなかったARDS症例に2mg/kg/dayのmethylpredonisoloneを投与したRCTでは、肺傷害スコア、P/F比、気管チューブの抜管、ICUの死亡率、院内死亡率が対照群に比較して改善したことが報告された 。この研究はRCTでステロイド投与の有効性を示したものであるが、コントロールされていない感染症患者を除外し、肺感染症についてはBALにて除外をしている。さらに、ステロイド投与群16名、対照群8名と規模が小さく、確かな結果を得るためには今後、大規模なRCTが必要である。感染症患者には使用しない方がよい。
ARDSの発生には活性化された白血球をはじめ多くのケミカルメディエーターの関与が考えられている。ステロイドはこれらのメディエーターの作用を抑制することから、ARDSに対してパルス療法として用いられてきた。しかし、血液ガスの改善を認めたという報告はあるが、死亡率などの転帰に差は見られなかった 。これは、ステロイドにより一時的なガス交換の改善が見られても、リバウンド現象や免疫能抑制作用による感染症発生のため予後が改善しないことが考えられる。また、筋弛緩薬との併用で長期にわたる筋力低下が報告されている。従って、ARDSの急性期に対する適応はない。
(2)タンパク分解酵素阻害薬 効果不明 投与しなくてよい [推奨度 C, Level I]
Serine protease、 elastase、 collagenase などの酵素はマクロファージ、多核白血球の貪食機能に重要な位置を占めている。ARDS発症機序や組織傷害に関連して、BAL液中のelastase活性の上昇を認める点から、その重要性が示唆された。本邦で行われたARDSを除いたALIに対するエラスターゼ阻害薬の臨床治験では、極少量投与群に比較して通常量投与群では肺傷害スコアの改善がみられたが、臨床上有用な指標に差はなかった。後付(post-hoc)と思われるサブグループで人工呼吸器装着日の短縮が認められた。後解析で死亡率に差はなかった。より重症のARDS患者を主とした対象に行われた海外での試験ではこれらの効果は示されなかった(未発表)。このように効果に関してはばらつきがあり、ARDSに対する使用は勧められない。軽症の患者に対しての効果は不明である。
(3)GCSF 投与しなくてよい [推奨度 C, Level I]
重症敗血症の患者において検討したRCTがある。その結果は、感染症重症化の効果は一定しておらず、死亡率の低下を示すものはない 。
(4)N acetylcysteine (内服液がアセトアミノフェン中毒の解毒薬として市販されている) 投与しなくてよい[推奨度 C, Level I]
過去のRCTで死亡率には有意差を認めない 。また、使用する時期によっては死亡率を増加させたという研究もあり、使用は推奨できない。
【3】CRRT (continuous renal replacement therapy):おこなわない方がよい [推奨度 B, Level II]
CRRTのひとつであるCHDFは濾過膜を介して、細胞外液とともに各種サイトカインを含む分子量3,000から10,000の中分子量を濾過して体外に排出する。しかし、ARDS症例にCHDFを施行し、炎症性サイトカインの血中濃度が減少したことを示す報告はない。また、CHDFにより、肺血管の透過性の亢進、酸素化の改善、生存率の改善を得たとの症例集積報告がなされているが、その科学的根拠としての妥当性は弱い 。急性腎不全を伴ったARDSでは酸素化が改善することがあるが、これが限界濾過による除水効果かCHDFによるサイトカインの除去が関与しているものか不明である。加えて、CHDFとCHFを比較した研究結果はない。侵襲性を考慮すれば、血行動態の不安定な急性腎不全などの持続的血液浄化が必要な場合以外には行わない。
【4】ECLA、ECMO:行わない[推奨度 A, Level I]
ECLAは、ARDS患者においてPaO2、PaCO2を一時的に正常範囲に維持することが可能である。しかし、抗凝固薬を必要とする、出血の危険性が高い、侵襲が大きい、マンパワーと高額の医療費を必要とする、などの短所がある。また、成人に対するRCTによる検討では死亡率に有意差は認めず、ECMOの有効性は証明されていない 、
【5】サーファクタント補充療法:合成サーファクタントは行わない[推奨度 A, Level I]。低酸素を主とする小児症例には牛由来のサーファクタント注入療法をオプションとして考慮してよい[推奨度 C, Level I]
ARDSにおいては、サーファクタントの産生異常や消費増大、肺胞内への血漿蛋白の漏出などにより活性低下が起こることが知られている 。サーファクタント補充療法がARDSにおいて酸素化能の改善や救命に有効であったとの症例報告 や非無作為化比較試験の報告 はある。しかし、感染性ARDSに対するサーファクタント吸入のRCTでは、有効性は認められなかった 。重篤な敗血症性ARDS 725例で、合成サーファクタントであるExosurfRを吸入に用いたRCTでは治療群(364例)とPlacebo群(361例)の間で、投与30日後の生存率、ICU滞在日数、人工呼吸の期間、循環動態、酸素化などに差はみられなかった。しかし、サーファクタント補充療法は使用するサーファクタントの種類、投与量、投与方法などによって効果も異なる可能性が高く、未だにその結論は確定していない。ウシ由来サーファクタントを用いた小規模の研究では有効性が報告され 、また、本邦でのウシ由来サーファクタント(サーファクテンR)による予備研究でも生存率の改善が認められている。しかし、現状ではARDSに対するサーファクタントの有効性を支持する強い根拠はない。大量の投与が必要であることも使用を困難にしている。リン酸脂質に換算して100mg/kgの注入を4回以上しなければ優位性が示されなかった104。
【Ⅸ】循環管理
【1】輸液の質と量
ARDS患者の適正循環血液量あるいは目標とする循環系指標に関する統一見解はない。初期輸液としてコロイド液とクリスタロイド液のどちらを選択すべきかの結論は得られていない。低アルブミン血症の重症患者へのアルブミン投与が死亡率を上昇させることを示すメタ・アナリシスが示されており 、タンパク製剤の使用にあたっては慎重にすべきである。低タンパク血症のARDS, ALI患者に対してアルブミンとフロセミドの併用が肺の酸素化能の改善血行動態の安定を示すランダム化比較試験があるが、予後の改善効果は示されていない 。
【2】カテコラミン
重症患者に対する低容量ドーパミンといった、安易なカテコールアミンの使用は効果が不確かであることが示されてきた 。ショック状態からの離脱や心不全患者の循環管理目的など、最低限の使用にとどめるほうがよい。
【3】肺動脈カテーテル
急性呼吸不全実態調査委員会の報告によるとARDS症例では35.7%(104/291)に使われていた。使用群の予測病院死亡率は56.9%、病院実死亡率は70.7%であった。これに対し非使用群ではそれぞれ53.6%、61.8%であった。つまり、肺動脈カテーテルの使用によって生命予後の改善は見られなかった。また、重症患者に対するスワンガンツカテーテルの使用は死亡率を上げるとする症例対照試験の報告がある 。したがって、重症心不全を合併した症例以外では肺動脈カテーテルによる循環管理は推奨しない。
おわりに
わが国においては依然としてARDSの患者数とその生命予後が継続的には調査されていない。従って、わが国では医療政策上のARDSの重要性は依然として不明である。
本ガイドラインは現時点でARDSの治療に関してどこまでその有効性が証明されているかを明らかにし、標準的なARDS治療法をどこの施設でも行えるようにすることを目的として作成された。この医療の標準化はARDS治療の全体の治療成績をあげることは言うに及ばず、今後臨床試験を行う際の背景要素のバラツキを少なくし、より効率的な臨床試験を行うことに貢献できると考える。
ここにまとめたのはあくまでもガイドラインであり、各施設に強制するものではない。それぞれの施設で本ガイドラインを参考に施設の独自性を加味したARDS治療のマニュアルを作成する際の参考にして頂ければ幸いである。
付録
Predicted body weight の換算表身長cm | 男性 | 女性 | 身長cm | 男性 | 女性 |
134 | 33.3 | 28.8 | 160 | 56.9 | 52.4 |
136 | 35.1 | 30.6 | 162 | 58.7 | 54.2 |
138 | 36.9 | 32.4 | 164 | 60.6 | 56.1 |
140 | 38.7 | 34.2 | 166 | 62.4 | 57.9 |
142 | 40.5 | 36.0 | 168 | 64.2 | 59.7 |
144 | 42.4 | 37.9 | 170 | 66.0 | 61.5 |
146 | 44.2 | 39.7 | 172 | 67.8 | 63.3 |
148 | 46.0 | 41.5 | 174 | 69.7 | 65.2 |
150 | 47.8 | 43.3 | 176 | 71.5 | 67.0 |
152 | 49.6 | 45.1 | 178 | 73.3 | 68.8 |
154 | 51.5 | 47.0 | 180 | 75.1 | 70.6 |
156 | 53.3 | 48.8 | 182 | 76.9 | 72.4 |
158 | 55.1 | 50.6 | 184 | 78.8 | 74.3 |
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