原著

下剤使用の有無による嚥下造影検査後の消化管内バリウム残留

田中貴志,加賀谷斉,山之内直也,飯田貴俊,柴田斉子,才藤栄一
Jpn J Compr Rehabil Sci 11: 73-77, 2020

【目的】摂食嚥下機能評価に用いる嚥下造影検査 (VF)ではおもにバリウムを使用するが,VF後の下剤使用についてのコンセンサスは得られていない.本研究の目的はVF後の消化管内バリウム残留を評価し,下剤使用の有用性を検討することである.
【方法】Study 1ではVF,および3日後に腹部X線撮影を施行した88例を対象に投与バリウム量と残留位置,残留部位数,消化管症状を評価した.Study 2ではVFで10g以上のバリウムを使用しかつ下剤投与を行った51例とStudy 1で10g以上のバリウムを使用した63例を比較した.
【結果】Study 1では60例にバリウム残留を認め10g以上バリウムを使用した症例で残留と残留部位数が多かった(p<0.001).Study 2では下剤を投与した症例ではもっとも口側のバリウムがより肛門側に移動し(p=0.043),バリウム残留部位数が少なかった(p=0.017).
【結論】VF中にバリウムを10g以上使用するとバリウム残留が多くなる.また,下剤投与はバリウムの排泄を促進する.

【キーワード】摂食嚥下障害,嚥下造影検査,バリウム,下剤

第11巻 目次