原著

大腿骨近位部骨折の手術前後における肺炎発症の危険因子

目谷浩通, 椿原彰夫, 平岡 崇, 関 聰介, 長谷川徹
Jpn J Compr Rehabil Sci 6: 43-49, 2015

【目的】大腿骨近位部骨折に併発する肺炎の危険因子について調査し,摂食嚥下リハビリテーションや口腔ケアの有り方を検討することを研究の目的とした.
【方法】新たな大腿骨近位部骨折のために入院し,手術的治療を行った145名について後方視的病歴調査を行い,肺炎の併発率とその危険因子を調べた.
【結果】肺炎の併発率は14.5%であった.精神障害の並存,脳卒中の既往,入院から手術までの期間,血中ヘモグロビン濃度,血清総タンパク質値,血清アルブミン値が肺炎に関連する危険因子であった.中でも血清アルブミン値と精神障害の並存が,独立した危険因子であった.
【結論】大腿骨近位部骨折に併発する肺炎の大半は誤嚥性肺炎と考えられるが,その頻度は予想以上に高率であった.低栄養や精神障害を並存する患者では肺炎を発症しやすく,誤嚥性肺炎発症を予防するためには, 受傷前の生活状況の聴取,徹底した口腔ケアを行うことが重要であると考えられた.

【キーワード】大腿骨頸部骨折,大腿骨転子部骨折,誤嚥性肺炎,摂食嚥下障害,低栄養

第6巻 目次