症例報告

リハビリテーションへ拒絶反応を示した運動性失語症患者への抑肝散(TJ-54)の使用経験

佐藤新介, 文野喬太
Jpn J Compr Rehabil Sci 1: 7-10, 2010

 失語症患者は意思疎通が困難なことから,しばしば 情動不穏を呈し,病棟管理に支障を来たしたり,リハ ビリテーション(以下,リハ)への拒絶反応さえ認め ることがある.
 抑肝散(Yi-Gan San;以下,YGS)は近年,アルツ ハイマー型認知症などに伴うBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia の改善にも効能を 示すとされているが,YGS を用いて運動性失語患者 の精神症状の安定を図り,リハ拒否の状態から回復期 リハの治療へ適応できた3 症例を経験した.投与開 始後,1〜2週間で不穏症状の著名な改善を認めた. 短期間に改善していることから,セロトニン5-HT1A 受容体のパーシャルアゴニスト作用が薬理効果の主因 と考察した.
 運動性失語などのコミュニケーション障害により, 二次的に情動不穏などの精神諸症状を呈した症例に対 してYGS は有効であり,試みる価値のある補助的治 療と考えた.

【キーワード】抑肝散,失語症,リハビリテーション,漢方,脳卒中

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