はじめに
IPSは、1974年に開催された第1回のマルセイユ(フランス)から2年に1度、各国で開かれており、チュービンゲン(ドイツ)、東京、ブリストル(イギリス)、サクラメント(アメリカ)、サンタ・マルガリータ(イタリア)、アムステルダム(オランダ)、バンクーバー(カナダ)、マルメ(スウェーデン)、京都、ワシントンDC(アメリカ)と続き、12回目の今回は、ドイツのビュルツブルグで6月4日から7日まで開催された。主宰は当地のグラマー教授でした。
ビュルツブルグは、日本でも有名なロマンチック街道の北の起点に当たり、車でフランクフルトから1時間、ミュンヘンから2時間の場所にある。また、南にはローテンプルグやアウグスブルグ、白鳥城で有名なフュッセンが点在している。
ビュルツブルグの中心部は徒歩でも回れるほどであるが、中世の趣を色濃く残した町並みの中を路面電車が走り、新旧がうまく調和した落ち着いた町である。日本では多くの路面電車が姿を消して久しいが、ヨーロッパでは今でも路面電車の走っている都市が多い。自動車産業を最優先に考えた日本の各都市と異なり、路面電車を残したヨーロッパ各都市と日本の交通行政の違いを、訪れるたびに痛感する。
出席者
日本からは、大鳥利文教授や松本長太講師らの近畿大学、北澤克明教授や岩瀬愛子講師らの岐阜大学、可児一孝教授夫妻や西田保裕講師らの滋賀医科大学と神戸大学、そして、われわれ東京医科大学のグループであった。
全体の出席者は200人程度で、毎回、同じ顔ぶれが多く家庭的な雰囲気の研究会である。ただ、私が初めて出席した第4回のブリストル当時は、ゴールドマン、オールホルン、アーマリー、ドランス、ハルムス、フリードマン、フランクハウザー教授など、視野計や測定法で有名な先生が多数おられ、また、ヨーロッパ勢が多かったが、徐々に出席される方も減り、代わって最近はアメリカ勢が多くなった。
特に今回は、翌月に日米緑内障ミーティングがバンクーバーであり、このためか前会長のドランス教授も欠席であった。また日本からの出席者も、いつもと比べ少なかったのが残念であった。
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岩瀬先生とカリフォルニア大学バークレー校のエノック教授(右)
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ウエルカム・レセプション
前列左から可児教授のご令嬢とご夫妻、私。
後列左から松本先生と木村先生(共に東京医科大学)、西田講師
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夕方のプリンス・ビショップ宮殿
ドイツの夏は陽が長い。パーティーの終わる頃、ようやく日が暮れる。
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発表中の山田重喜先生(滋賀医科大学)
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Business Meeting
今回は8年ごとの会長の交代期に当たり、会長がA・ヘイル教授(マルメ・スウェーデン)からJ・ワイルド(バーミンガム・イギリス)に代わった。また、副会長M・ジンジリアン教授(ジェノバ・イタリア)が名誉会員に、評議員に岩瀬愛子先生(多治見市民病院、岐阜大学)が新たに選出された。
次回は開催年が国際眼科学会と重なるため、オランダの立候補があるかと思ったが、アムステルダム大学のグレープ教授は欠席であった。
次回の開催国にはフランス、イタリア、アメリカ(テキサス)の立候補があり、研究会会員の多数決にてイタリアに決定した。
ホストはBrescia大学教授のE・ガンドルフォ。開催地はミラノ近くのガルダ湖の予定とのことである。
学術講演
IPSの学術講演は朝早いのが特徴で、毎日、朝の8時から講演が始まる。また毎晩、夜中まで親睦会があり、われわれ日本人は眠い目をこすりながら出席しているのに、欧米人は元気いっぱいで、口角泡を飛ばして討論をしており、彼等のタフさにはいつもながら関心させられる。
演題の多くは緑内障に関係したもので、最近とみにこの傾向が強い。特に、前回のワシントンDCからは乳頭画像解析や網膜神経線維層厚解析に関する発表が盛んで、視野よりも画像解析に主点をおいた発表が目立っている。
一方、新しい視野測定法として短波長の刺激光を使った測定(Short Wave-length Automated Perimetry:SWAP)についての発表も多かった。これは、ハンフリー自動視野計740型で青視標による視野測定が可能になったためである。この色視野はIPSの古くからの研究テーマの一つで、日本では東京慈恵会医科大学の北原健二教授が以前から基礎研究を行ない多数発表されていたのに、今回は欠席され残念であった。そのほかは視野への白内障の影響、視路疾患と視野、フリッカー視野や時間和についての発表がみられた。
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マリエンベルグ要塞の元兵器廠内のフランケン博物館
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マイン橋とマリエンベルグ要塞
マイン川に架かるマイン橋からマリエンベルグ要塞を望む。
橋には11人の聖者の像が並んでいる。
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ローテンブルグの街並み
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ローテンブルグへ向かう途中の町の庭園で小休止。 C・ジョンションとチャウハンの顔が見える。
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Social Program
本研究会の特色は、毎夜、出席者の親睦のためのプログラムが深夜まで組まれていることである。昼間に討論し足りなかったものは、ここで相手をつかまえて夜が更けるまで討論の続きをしている。
まず、現地到着後に出席登録。その夜は歓迎レセプションが行なわれた。このレセプションは、いつもは気楽なスタイルで軽食を取りながら談笑することが多かったが、今回は市内のプリンス・ビショップ宮殿でビュルツブルグ大学の医局貝によるミニコンサートを聞きながらのディナーであった。
このバロック様式の宮殿は、もとは大司教の居城で、その規模はドイツ最大とのことである。また、学会の翌週から当地では、モーツァルトフェスティバルが開かれるとのことで、街もにぎわいを見せていた。
2日目はマリエンベルグ要塞での晩餐会とコンサートが開催された。この要塞はマイン川を挟んで町の対岸の丘の上にあり、ここも大司教の居城であった。この中にはリーメンスュナイダーのアダムとイブの彫刻がある。晩餐は元兵器廠内のフランケン博物館でシューベルトのソナタを聞きながら行なわれた。
3日目は午後から恒例のバスツアーであった。今回は日本ではつとに有名なロマンティック街道と、そのハイライトであるローテンプルグを回った。ローテンプルグは周囲を城壁で囲まれた典型的な中世の城塞都市で、私にとっては3回目、10年ぶりの再訪であった。ただし、あふれる観光客(われわれも、そのうちであるが)とロマンティック街道と日本語で書かれた道路標示が、日本人観光客の多さを物語っていた。
夕食は、城壁内にある中世貴族の館を改造したアイゼンハット・ホテルであった。この日がたまたま古くからの会員であるオランダの視野測定士(M・ラークマン)の誕生日に当たり、主催者の一人であるハンブルグ大学のダンハイム教授の発起で彼女の誕生日を祝った。
4日目、研究会最後の日はIPS恒例の宴会が催された。この会では毎回、国別歌合戦が行なわれる。今回も最初にイタリア・ジェノバ大学のジンジリアン教授率いる一団が、ラジカセのカラオケ持参でカンツォーネを熱唱するとともに、スライドによる今までのIPSの思い出のシーンを見せてくれた。アメリカはSWAP(短波長視標自動視野測定)をテーマにした恒例の替え歌を熱唱してくれた。そして日本のメンバーは、合唱と前回のワシントンで大好評であった近畿大学の岩垣厚志先生によるエルビスプレスリーの物まねを披露し、大好評であった。そのほかにも、出席した各国の歌や余興が夜更けまで続いた。
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アイゼンハット・ホテルでの晩餐
手前のテーブルはイタリアの一団。
正面にガンドルホ教授の顔が見える。
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ローテンブルグの時計台
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IPSバンケット
ジンジリアン教授率いるイタリア合唱団のカンツォーネの熱唱。
団員は医局員とその家族。
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IPSバンケット
ホストの一人であるハンブルグ大学の
ダンハイム教授の一輪車での曲乗り
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