
- 大阪国際がんセンター 消化管内科
- 上堂 文也
この度、第112回日本消化器内視鏡学会近畿支部例会の会長を拝命いたしました、大阪国際がんセンターの上堂文也です。私はこれまでがん専門施設の内視鏡医として長く勤めてきましたが、以前より内視鏡の分野は個人の技術や経験(プラクティス)にもとづく報告が多く、薬物療法の分野と比べて科学的根拠(エビデンス)にもとづく報告が少ないと感じていました。それを改善すべく、内視鏡に関連するいろいろな臨床試験を時に計画し、時に参加してきました。ただ、その過程で感じたことはレベルの高い科学的根拠も、結局は個々の内視鏡医の優れた技術と経験があってこそ良い結果がでるものであるということです。そのため、経験にもとづく優れた技術を身につけることと、それを再現してまとまったデータとすることとは良いバランスで結びつける必要があります。そのような考えから、今回の主題のテーマを各種内視鏡におけるエビデンスとプラクティスとまとめさせていただきました。内視鏡診療における少数例の経験から多数例の検討にまでつながるさまざまな局面を、楽しく熱く討議していただければと考えます。また、まとまった科学的データも結局は一例一例の経験の積み重ねであるため、分かち合いたい内視鏡経験・症例として、良かった・悪かった症例経験を共有するセッションを設けました。さらに特別企画として内視鏡教育をテーマに、シミュレーターを用いた内視鏡トレーニングを活発に行っているフィリピン総合病院のMark Anthony De Lusong先生と、スウェーデンで内視鏡基本手技の指導に尽力された経験のある北海道大学の宮本秀一先生とを招いた講演会を予定しています。本会が近畿地区のより良い内視鏡診療に寄与することを祈念しております。