第10回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


教育・特別講演1 人と動物の共通感染症研究会創始のエピソード
 
高島郁夫
人と動物の共通感染症研究会創始のエピソード
 
 1970 年代から世界各地で新興感染症が次々と出現し、人間社会へ重大な健康被害をもたらしてきた。これらの新興感染症のほとんどが人獣共通感染症であり、また野生動物を自然宿主とするものが多い。近年、森林や原野などの急激な開発に伴って人と野生動物の接触機会が飛躍的に増大した結果、人に対してきわめて危険な新興人獣共通感染症が世界各地で発生したと考えられる。これらの人獣共通感染症がグローバル化の進む中、日本に侵入してくる危険性が増大してきている。また、国内では人獣共通感染症の人における発生や各種動物における汚染についての情報が不足している。
 
【本研究会準備の頃】
   記の背景の下、平成12 年頃に日本獣医学会公衆衛生分科会のメンバーを中心に人獣共通感染症の予防に資する研究会を発足させようという機運が高まって来た。そこで同年12 月21 日に丸山務先生、品川邦汎先生、源宣之先生と高島で第一回研究会設立発起人会が開催された。そこで合意された研究会の目標は「国内外の人獣共通感染症の制御を最終目標とし、これにより人間の安全な動物環境を構築することにより動物とヒトとの共存共栄を計る。」とした。本研究会は獣医学関係者のみならず医学関係者や公衆衛生行政担当者にも参加してもらい、当面は年一回の学術集会の開催、ホームページの開設およびニュースレターの発行を実施することとした。
 
【役員と研究会の名称】
  平成13 年5 月には役員会準備会が開催され、研究会の名称は「動物由来感染症研究会」とした。会長に東京大学吉川泰弘先生、事務局は高島が務めることで合意され、役員のメンバーも示され、また副会長を国立感染症研究所の岡部信彦感染情報センター長にお願いした。その後、研究会の名称が「動物由来感染症研究会」では動物が一方的に悪役になるイメージがあるため「人と動物の共通感染症研究会」に変更した。
 
【第一回研究会の開催】
  研究会設立発起人会、役員準備会、役員会を経て、ついに第一回総会とシンポジウムの開催にこぎつけることになった。平成13 年10 月21 日に東京大学弥生講堂で午前中に総会を、午後にシンポジウムを開催した。参加者は203 名を数え、研究会は成功のうちに終了した。懇親会も多数の参加があり研究会の今後の活動と方向について夜遅くまで熱い議論が続いた。
 
【おわりに】
  研究会は発足からすでに10 年が経過し、熱心な若手(私より若い)の研究者により円滑に運営されている現状に心から感謝の意を表するとともに、本研究会が今後益々発展し人と動物の共通感染症の予防に貢献することを期待する。
 
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