第9回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次

7 Capnocytophaga canimorsus 感染症
 
○鈴木道雄、木村昌伸、今岡浩一、山田章雄
国立感染症研究所獣医科学部
 
【目的】
  Capnocytophaga canimorsus はイヌやネコによる咬傷・掻傷に伴って発症する感染症の原因菌の1つである。感染しても発症は稀であるが、発症すると症状が急激に悪化する例が多く、発症時の死亡率は約30%とされる。日本国内での発生状況についてはほとんど情報がなかったが、近年、症例報告等を通じて、国内症例についての知見も徐々に集まりつつある。
 
【材料と方法】
  イヌ325匹、ネコ115匹の口腔内スワブについて、PCR法を用いてCapnocytophaga spp. の保有状況を調査した。また、ヒト臨床分離株およびイヌ・ネコ分離株について生化学的性状、16S rRNAシーケンスならびに薬剤感受性等を解析した。
 
【結果】
  イヌの73%、ネコの57%がC.canimorsus を保有していた。分離菌株間の生化学的性状の差異は小さかったが、16S rRNAの塩基配列にはバリエーションが認められた。薬剤感受性試験の結果、ペニシリン系、セフェム系、テトラサイクリン系等の多くの抗菌剤に感受性を示したが、一部の菌株はβラクタマーゼを有していたほか、マクロライド系抗生物質に対しても一部で耐性がみられた。
 
【考察】
  イヌ・ネコは高率にC.canimorsus を保有していることが明らかとなった。C.canimorsus 感染症は近年、国内でも散発的に症例が報告されており、イヌ・ネコ咬傷・掻傷時に留意すべき感染症の1つである。
 
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