第9回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


1 アフリカ南部の伝統農村における公衆衛生学的調査・研究
−感染症、とくに人獣共通感染症の予防について−
 
Rita M.Sakala1)、 J.M.Bwalya1)、 ○藤倉孝夫2)
1) ザンビア大學獣医学部 疾病予防学部門、2)(元)JICA専門家
 
【目的】
  亜熱帯の気候条件ならびに、リソーセスが十分とはいえない社会経済的条件下にあるアフリカ南部の伝統農村において感染症、なかんずく人獣共通感染症の予防について持続可能な予防対策を策定するため調査研究を行った。
 
【材料および方法】
  調査研究はザンビア共和国南部州Chalimbana、 Chikankataの2村落でおこなわれた。調査は49項目にわたりすべて現地語により聞き取り方式でおこなわれた。また、疫学調査に関わる国際倫理基準に準拠した。
 
【結果】
  調査対象の2村落は首都ルサカよりそれぞれ150 Km、200 Km離れた伝統農村であり互いに多くの共通点を有する。世帯数は36、29計65世帯であり、家族員数は世帯苧平均12.0人、うち子供は6.7人であった。1世帯はマンゴ樹を中心に居室、寝室、台所、納屋、家畜小屋、厠などにより構成され、子供部屋を別棟にそなえている世帯もあった。しかし厠のない世帯も認められた(40%)。ほとんどの世帯では農業が営まれていた(93.8%)。水源としては井戸(49.2%)、泉、川、流水が利用されていた。住居より水源までの距離は1Km以内が(61.5%)であったが1〜7Km以上の距離を毎日水を運搬せざるを得ない世帯も多かった(38.5%)。牛、山羊、鶏、豚、あひるなどの家畜も多く飼養され48世帯では牛が飼養されており(69.6%)、またほとんどの世帯では犬が飼われていた。自家で家畜を屠殺する(55.4%)、屍肉をたべる(43.1%)世帯が明らかになった。また 水を煮沸して飲むと答えた世帯は10.8%にすぎなかった。敷地内へ接近、侵入する野生動物はインパラ、レチェウエ、クドウ、ウオーターバック、ゼブラ、コヨーテ、ハイエナ、モングース、野兎、など9種以上が認められている。動物による村民の被害としては(1) 犬に噛まれる、(2) 牛の角に突かれて負傷、(3) 蛇に噛まれる、(4) サソリなどの衛生昆虫に刺されるなどであった。主な感染症(HIV感染を除く)としてはヒトでは下痢症(サルモネラ症、など)、マラリア、赤痢、結核、炭疽などであった。家畜ではタイレリア症、トリパノソーマ症、サルモネラ症、ブルセラ症、炭疽、結核( Mycobacterium bovis による感染)などであった。
 
【考察】
  アフリカ南部の伝統農村における人獣共通感染症を含む感染症の予防については気候・自然条件はもとより社会経済条件を基盤とした持続可能な対策が緊要である。すなわち本調査成績を重視したprimary health care(PHC) のコンセプトによる住民参加型の予防対策を普及させることが急務である。
 
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