第6回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 | 研究会目次 |
7 家庭で飼育されている爬虫類におけるSalmonella の保有状況 | ||
中臺 文 1),岩田剛敏 1),塩谷 亮 2),加藤行男 4),黒木俊郎 4),廣田好和 1),○林谷秀樹 1) | ||
1)東京農工大学大学院共生科学技術研究院 2)ジェントルマン ルーサー 3)麻布大学獣医学部 4)神奈川県衛生研究所 |
||
【目的】 | ||
近年、我が国では欧米諸国と同様に爬虫類のペットとしての人気が高まっており、さまざまな種類の爬虫類が飼育されるようになってきている。それに伴い、これらペットの爬虫類を感染源とする人のサルモネラ症の発生が数多く報告されるようになってきた。我々はこれまでに国内のペットショップで販売されている爬虫類のSalmonella保有状況を調査した結果、これらの爬虫類は非常に高率にサルモネラを保菌していることを明らかにした。今回、各家庭で飼育されている爬虫類におけるSalmonella保有状況について調査を行った。 | ||
【材料と方法】 | ||
2005〜2006年に、日本小動物獣医師会の協力を得て、我が国の家庭で飼育されている爬虫類、29種113検体の糞便を採取し、供試材料とした。供試検体はbuffered peptone培地に接種し、37℃で24時間前増菌培養後、ハーナ・テトラチオン酸塩培地で37℃ 24時間増菌培養したものを、DHL寒天培地、20μg/mlノボビオシン加BG寒天培地ならびにMLCB寒天培地に塗抹し、37℃で24時間培養した。各分離培地上に発育してきたSalmonellaを疑うコロニーについてtrypticase soy寒天培地を用いて純培養後、生化学的性状を調べ、Salmonellaと同定した。Salmonellaと同定された菌株については、さらに生物群の型別を行うとともに、市販抗サルモネラ免疫血清を用いて血清型を決定した。 | ||
【結果と考察】 | ||
1. | 家庭で飼育されている爬虫類におけるSalmonella保菌率は、31.9%(32/113)であった。 | |
2. | 動物種別にSalmonellaの保有状況をみると、ヘビ類で90.0%(9/10)、カメ類で17.2%(15/87)およびトカゲ類で75.0%(12/16)がSalmonella陽性であった。 | |
3. | 分離菌株における生物群の分布をみると、I 群が43.9%で最も多く、次いでIII b群が31.7%、II 群が19.5%およびIV 群が4.9%で、ペットショップの爬虫類由来株の場合と同様に、I 群とIIIb群の割合が高かった。 | |
4. | 生物群 I 群のSalmonellaは9血清型に型別された。分離された血清型には、S. TyphimiriumやS. Tenesseeのように、人のSalmonella感染事例からの分離頻度が高い血清型もみられた。 | |
5. | これらの結果から、家庭で飼育されている爬虫類はペットショップの爬虫類同様、高率にSalmonellaを保菌しており、人への感染が危惧される状況であることが明らかになった。したがって、爬虫類をペットとして飼育する際には、爬虫類がSalmonellaを常在菌のように高率に保菌していることをよく理解し、その取り扱いには十分注意する必要がある。 | |
←前のページ/次のページ→ |
研究会目次 | |