Movement analysis for rehabilitation

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歩行分析(関節運動)

歩行周期の各時期で、関節はどう動いているのか?

前回、歩行分析は運動の記述と解釈を分けて考えることを強調しました。今回はどのように運動を記述するのか、についてお話します。運動は歩行周期の各時期に、関節がどのような位置にあるのかを解剖学の定義に沿って記述します。実際にやってみます。2人一組になり、歩行する人と観察する人を演じます。観察する人は、歩く人を矢状面、または前額面から観察します。この時、まずは一つの関節に注目して見ていきます。例えば、膝関節に着目してみていきます。あらかじめ、観察記録用のシートがあるとよいでしょう。歩行の各時期の膝の角度を、「屈曲〇度」、「伸展〇度」、のように記述します。グラフ用紙に観察された角度をプロット(印をつける)してもよいでしょう。

膝関節記録例

膝関節の角度はどこをみたらよいのか?について今一度確認すると、大腿の長軸と下腿の長軸のなす角度をみます。大腿の長軸の延長線上に下腿の長軸がある時を屈伸0度、過伸展をマイナスとし、屈曲方向をプラスとします。正常の膝関節の可動域は伸展0度、屈曲140度です。

膝関節角度定義

足関節の角度は、下腿の長軸と足部の長軸のなす角度をみます。ただ、足関節角度は下腿と足部のなす角が90度の時に底背屈0度と定義します。正常可動域は、背屈15度、底屈40度です。

足関節角度定義

股関節角度は、観察による歩行分析では解剖学の定義と少し異なります。体幹の角度をみつつ、股関節の角度をみる、というのが難しいので、便宜上、鉛直線と大腿のなす角でみます。体幹が直立であればほぼ解剖学的股関節角度と同じですが、体幹が屈曲、あるいは伸展している場合は異なってきます。正常可動域は、屈曲120度、伸展30度です。

股関節角度定義

最後に体幹角度です。体幹の角度は股関節と同様、股関節(大転子)を通る鉛直線と体幹とのなす角です。体幹は肩(肩峰)と股関節(大転子)を結んだ線を想定します。前傾が屈曲、後傾が伸展です。

体幹関節角度定義

矢状面における歩行時下肢関節運動

歩行周期を8つに細分化し、各時期の膝関節角度をグラフにプロットしました。各点をつないでいけば、一歩行周期の角度変化が予想できます。ここで、それぞれの関節の角度変化を詳しく調べるとどのような軌跡が描かれるのか、機械を使って計測した結果をみていきます。

歩行時角度変化

変化のパターンの特徴を一言でいえば、股関節と足関節は一峰性(山が一つ)、膝関節が二峰性(山が二つ)です。膝関節は着地で伸展、荷重応答期に屈曲、そして、立脚中期に伸展してその後は遊脚期にかけて大きく屈曲していきます。歩行周期の各時期の運動を記述すると、正常歩行は次のようにまとめられます。

歩行時下肢関節運動

まとめると、歩幅をかせぐため、初期接地にかけて股関節は屈曲し、足を伸ばします。着地後は体重を受け止め衝撃を緩和するため、足関節の底屈、膝関節は底屈します。その後、股関節と膝関節が伸展し、体を持ち上げることで、反対側の振り出しを助けます。そして、足を振り出すときは、床につま先がすれないよう、下肢をコンパクトに縮めるため、膝が屈曲、足が背屈します。そして、下肢関節のこのような協調的な運動は、重心の上下振幅を最小化することにも貢献しています。

ロッカー機構

地面と接する足関節は、スムーズな歩行動作に大きく貢献すると考えられ、背屈して着地、その後すぐ底屈、そして、下腿の前傾に伴い背屈、遊脚にかけて再び底屈する、という一連の動きをロッカー機構と称することがある。これは、このような動きがロッカー(転がり運動)で成立しているという考えで、最初の底屈をヒールロッカー(かかとの丸みによるころがり)、次の背屈をアンクルロッカー(足関節の丸みによるころがり)、その後の底屈をトゥーロッカー(中足骨頭のまるみによるころがり)と呼んでいる。

歩行時関節運動(矢状面)まとめ

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