Movement analysis for rehabilitation

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立ち上がり動作時の大腿四頭筋張力

楽に立ち上がれるための条件とは?

持ち上げ動作

椅子からの立ち上がり動作では、どの筋を主に使うでしょうか?立ち上がるのに苦労のない皆さんは実感しにくいかもしれませんが。この動作は大腿四頭筋の負担が大きい動作です。膝関節は90度屈曲位から0度まで伸展します。重心も50センチくらい持ちあがります。立ち上がりに働く筋は他にも大殿筋、下腿三頭筋などがありますが、膝の伸展筋である大腿四頭筋に大きな負荷がかかります。

介助動作
立ち上がる時の膝の負担が最も大きくなる瞬間は、椅子から殿部が離れた瞬間です。この時の大腿四頭筋への負荷を剛体モデルによって求めていきます。今、膝の回転運動に着目していますので、剛体とするのは、膝から上か膝から下の2パターンです。床反力がわかれば、膝から下のモデルを使うのですが、床反力を使わなくても、体重から負担を推測できる、膝から上を一つの剛体と考えることにします。

立ち上がりHATモデル

膝から上をひとつの剛体モデルとする。この剛体に加わる力は、剛体の重心位置に体重による力があり、また、これに対抗する大腿四頭筋の張力である。剛体の力は、HATの重さに両大腿の重さを加え、その半分である(左右均等にがかかるとして)。体重の60kgの人を想定すると、HATは40kg、両大腿は合わせて10kgと見積もってみる。すると、体重による力は50kgの半分、25kgとなる。今、膝から水平距離で10㎝ほど重心が離れているとする。大腿四頭筋のモーメントアームを5cmとすると、大腿四頭筋の張力Fはモーメントのつり合いより計算できる。

回転する剛体

時計回りの回転方向を正とすると、
10 cm × 25 kg - 5 cm × F = 0
これを解いて、
F = 50 kg

さて、今は立ち上がりのはじめ、殿部が離れた瞬間を取り上げました。では、立ち上がりの終わり付近、膝が伸展するあたりではどうなるでしょうか?これよりも大きい負荷となるでしょうか?あるいは、軽くなるでしょうか?
膝が伸びるにつれて、重心は膝に近づきます。すると、体重による力のモーメントは小さくなります。そして、それに対抗する大腿四頭筋の張力も小さくなります。

低いイスより高いイスの方が立ち上がりやすいのも同じ理由です。「膝が伸びているので立ちやすい」のではなく、体重による力のモーメントが小さくなるのです。立ち上がりが困難な人の立ち上がり練習では、重心を膝に近づけるよう気を配ります。具体的には、体幹をしっかり前傾させて立ち上がるようにします。

「立ち上がり動作時の大腿四頭筋張力」のまとめ

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