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原著論文 江川賢一、神野宏司、種田行男、永松俊哉、北畠義典、荒尾 孝、真家英俊(2002)地域在宅高齢者を対象とした生活体力維持増進プログラムの効率的な介入頻度に関する研究、体力研究100,1-10 解説、資料、報告書、その他 江川賢一、荒尾孝、種田行男、西嶋洋子、永松俊哉、北畠義典、神野宏司、青木和江、真家英俊(2000)地域高齢者の生活体力全国版性・年齢階級別評価基準値の作成、体力研究98,18-29 学会発表 2002 第57回日本体力医学会大会 平成14年9月28日(土)、29日(日)
高齢者の生活体力維持増進プログラムが身体・精神・社会的生活機能に及ぼす短期介入効果に対する介入頻度の影響 江川 賢一1、神野 宏司1、種田 行男1、永松 俊哉1、北畠 義典1、真家 英俊1,2、荒尾 孝1 1財 明治生命厚生事業団 体力医学研究所、2東京リゾート&スポーツ専門学校 【目的】 我々は高齢期における健康づくりにおいては、日常生活の自立性を高く維持し、QOLを向上することが重要であると考え、運動を介入手段とした健康教育プログラムを開発してきた。これまでに、このプログラムが運動習慣の形成・継続や高齢者の身体的生活機能としての生活体力の改善に有効であることを報告してきた。 一方、高齢者のQOLは身体的生活機能のみならず、精神的および社会的生活機能とも相互に密接に関連しており、これらを総合的に評価することが必要である。また、健康づくりの現場においては、より少ない介入頻度によって最大の効果が期待されている。 このような観点から、本研究ではこのプログラムが身体的生活機能に加えて、精神的および社会的生活機能に及ぼす短期介入効果に対する、介入頻度の影響を明らかにすることを目的とした。 【方法】 神奈川県川崎市内4地区の老人福祉センターを利用している在宅高齢者で、同センターが1997年度より1999年度までに主催した健康フェア(対照群190名)または健康教室(介入群262名)に自主的に参加した男性133名(70.9±5.4歳)、女性319名(68.8±5.2歳)を研究対象とした。 介入期間は各年度とも10月から翌年2月までの5ヶ月間とした。介入群はさらに介入頻度別3群、すなわち1回のみ指導(1回指導群:30名)、定期的に3回指導(3回指導群:163名)および定期的に7回指導(7回指導群:69名)に分けられた。各群とも同一の内容を、それぞれの回数に応じて介入した。 対象者の割り付けは、個人単位での無作為割り付けが困難であることを考慮して、居住地区および参加年度ごとのクラスター割り付けとした。4群間で男女比および年齢には差が認められなかった。 身体的生活機能は生活体力(4項目法)により評価し、男女別に総合得点を算出した。精神的生活機能は、Sheikhらの抑うつ度(簡易版GDS尺度)、社会的生活機能の指標は、岩崎らの社会的行動(趣味、運動、外出、対人交流、老人クラブ、ボランティア活動)および老研式活動能力指標により評価した。 本研究では介入前後で、会場での体力測定および質問紙調査で有効データの得られた者を分析対象とした。前後の各得点の変化量(後値-前値)を目的変数、介入頻度を説明変数として、男女別に分散分析をおこなった。有意水準は5%未満とした。 【結果】 介入前値は男性の抑うつ度(P=0.05)以外には、4群間に有意差が認められなかった。また、分析対象者とそれ以外の者との間では、生活体力(P=0.00)以外には有意差が認められなかった。 男性(n=76)では、いずれの指標とも介入頻度とは関連が認められなかったが、1回のみの指導と比べて3回あるいは7回の定期的指導の方が改善傾向を示した。 女性(n=163)では、生活体力(P=0.00)および社会的行動(P=0.04)と介入頻度のとの間に有意な関連が認められた。Bonferroniの多重比較検定の結果、生活体力は対照-3回、対照-7回、1回-7回、抑うつ度は対照-7回、社会的行動は1回-7回の各群間に有意差が認められた。 【まとめ】 我々の考案した高齢者の生活体力維持増進プログラムを高頻度で介入することは、身体的生活機能としての生活体力のみならず精神的および社会的生活機能の改善にも有効であることが明らかにされた。
2001 第60回日本公衆衛生学会総会 平成13年10月31日(水)~11月2日(金) 高齢者の生活体力維持増進プログラムの開発 第7報
運動プログラムの実施状況と運動行動セルフエフィカシーとの関連
我々は地域高齢者の身体的生活機能の維持増進対策として「生活体力維持増進プログラム」を考案した。これまでに、5ヶ月間の介入は運動行動を変容させ、生活体力の改善効果を有することを報告した。本報では、これまでに5ヶ月間の介入に参加した者について、運動プログラムの実施状況と介入前後の運動行動に対する自己効力感(セルフエフィカシー)の変化との関係を明らかにすることを目的とした。
川崎市内4地区の老人福祉センターが主催した健康づくり学習会に自主的に参加した262名を研究対象とした。生活体力改善のための「運動プログラム(速歩、ストレッチ、筋力体操)」および運動継続のための「支援プログラム(セルフモニタリング、個別指導)」が5ヶ月間提供された。この期間中の運動実施記録から、運動プログラム実施量(1日の歩数、速歩時間、ストレッチ実施回数および筋力体操実施回数)を算出した。介入前後に、橋本らの健康管理自信感尺度および運動自信感尺度(セルフエフィカシー)に関する自記式調査を実施した。関連性を検討するために、介入前後の得点の変化量と運動プログラム実施量について、年齢調整した相関分析を男女別に試行した。
男性の健康管理自信感得点の変化量と介入期間中の総歩数(n=36、r=0.41、p=0.02)、および運動自信感得点の変化量と介入期間中の総歩数(n=36、r=0.40、p=0.02)との間に正の相関が認められたが、女性では有意な関連性は認められなかった。 生活体力維持増進プログラムの介入による日常生活における歩数の増加は、男性における介入期間中のセルフエフィカシーの改善に有効であることが示唆された。 2001 第56回日本体力医学会大会 平成13年9月19日(水)~21日(金) 日本体力医学会プロジェクト研究高齢者の健康づくり事業に関する実態調査
2.高齢者を対象とした健康づくり事業の実施状況 2000 第59回日本公衆衛生学会総会平成12年10月18日(水)~20日(金) 高齢者の生活体力維持増進プログラムの開発 第5報 運動プログラムの実施量と生活体力との関連性
江川賢一、神野宏司、種田行男、永松俊哉、北畠義典、真家英俊、荒尾 孝 高齢者が健康づくりの手段として運動を実施するためには、その運動が安全で手軽に実施でき、身体機能の維持増進に効果的であることが必要である。 本研究の目的は、我々が考案した5ヶ月間の「生活体力維持増進プログラム」で指導した運動プログラムの実施量と生活体力に対する効果との関連性を明らかにすることである。
川崎市在住の60歳以上の高齢者で、老人福祉センターが1997年から1999年までの秋期(9月から11月)に開催した生活体力測定会(初回調査)に、自主的に参加した452名を研究対象とした。その後、介入群(262名)には5ヶ月間の生活体力維持増進プログラムを提供し、非介入群(190名)には5ヵ月後に第2回測定会を実施した。 このプログラムは、次の3つの運動プログラムから構成された。1)速歩:毎日の平均的な歩数よりも1000歩増加、普段の歩幅よりも大股でウォーキングを1日15分、2)ストレッチ体操:体幹、肩、股関節、大腿部など全身の柔軟性を高める体操を1セット(4種目、10分程度)および3)筋力体操:体幹および下肢筋群の筋力向上のためのトレーニング(7種目:ひざのばし左右各5回、もも上げ左右各5回、腹筋5回、背筋5回、ひざ曲げ10回、かかと上げ10回、タオル運動2回の合計42回を1セット)を、体調や体力水準といった個人特性に応じて行う。プログラム参加者はこの運動プログラムの方法を健康教室において習得し、自主的に実践した時間および回数を「運動日記」として毎日記録するように指導された。
測定会では生活体力測定(起居、歩行、手腕作業および身辺作業能力)、および習慣的に実施している運動種目、頻度および時間について自記式調査を実施し、運動による1日あたり消費エネルギー量を算出した。生活体力に対する効果は生活体力総合得点の変化量、指導した運動プログラムの実施量は介入期間中の1日あたり平均値(時間、回数)をそれぞれ評価指標とした。 【結果と考察】 介入前後において測定調査の有効データ保有者(233名)について、初期値、性、年齢、消費エネルギー量を調整した分散分析の結果、介入群の生活体力は非介入群よりも有意に改善した(p=0.00)。 さらに、関連要因を抽出するために介入群についてステップワイズ法による重回帰分析を試みた。その結果、筋力体操(β=0.19、p=0.03)が抽出され、筋力体操の実施量が多いほど生活体力に対する効果が高い関係が認められた。 以上より、本プログラムは生活体力の維持増進に対して介入効果が認められた。また、体幹および下肢筋群の筋力向上のための筋力体操が、その効果を高める可能性が推察された。 2000 第55回日本体力医学会大会 平成12年9月20日(水)~22日(金) 高齢者の生活体力維持増進プログラムを用いた短期介入効果に対する介入頻度の影響 ○江川賢一、神野宏司、種田行男、北畠義典、真家英俊、永松俊哉、西嶋洋子、荒尾 孝 我々は、身体的生活機能を維持増進するための生活体力維持増進プログラム(体操および歩行の運動プログラムおよび運動習慣継続のための支援プログラム)を考案し、5ヶ月間の短期介入効果について報告した。
健康づくりの現場においては、より少ない介入頻度によって効果をあげることが期待されている。そこで本研究では、プログラムの短期介入効果に対する介入頻度の影響を明らかにすることを目的とした。 【方法】 神奈川県川崎市内4地区の老人福祉センターを利用している在宅高齢者で、1997年度から1999年度の毎年9月にセンターが主催した行事(健康フェア、健康教室)に自主的に参加した男性133名(70.9±5.4歳)、女性319名(68.8±5.2歳)を研究対象とした。介入期間はいずれの年度も10月から翌年2月までの5ヶ月間とした。 研究対象者のうち健康フェア参加者を対照群(190名)、健康教室参加者を介入群(262名)とした。介入群のうち、1997年および1998年参加者(A地区)は定期的に7回介入する7回介入群(69名)、1998年参加者(M地区)は1回のみ介入する1回介入群(30名)、1999年参加者(A、M、T、N地区)は定期的に3回介入する3回介入群(163名)とした。介入頻度別4群(対照、1回、3回、7回)間で男女比(χ2検定、χ2=4.00、p=0.26)および平均年齢(分散分析、男性p=0.57、女性p=0.19)には差が認められなかった。 介入前後に生活体力(4項目法:起居時間、歩行時間、手腕作業時間および身辺作業時間)を測定した。生活体力の性差を考慮して、男女ごとに4項目のtスコアの10分の1を合算し、総合得点を算出した。
本研究では介入前後のデータを有する者を分析対象とした。介入前後の総合得点の変化量(後値-前値)を目的変数、介入頻度を説明変数、性、年齢および介入前における総合得点を調整変数とした分散分析、Bonferroni法による多重比較を行った。 【結果】 研究対象者について介入頻度別に介入前総合得点を比較すると、男女ともに差は認められなかった(男性p=0.58、女性p=0.98)。介入群で2/3以上教室に出席した者の割合は、1回介入群(1回出席)が100%、3回介入群(2回以上出席)が83%、7回介入群(5回以上出席)が96%であった。
分散分析の結果、介入頻度の主効果(F=16.19、p=0.00)が認められ、介入頻度が高いほど効果が高い関係が明らかにされた。また多重比較の結果、対照群と3回介入群(p=0.00)、対照群と7回介入群(p=0.00)、1回介入群と3回介入群(p=0.01)、1回介入群と7回介入群(p=0.00)との間にそれぞれ有意差が認められた。 【総括】 我々の考案した生活体力維持増進プログラムは、5ヶ月間に3回以上の頻度で定期的に介入することで効果が得られることが明らかになった。
1999 第58回日本公衆衛生学会総会 平成11年10月20日(水)~22日(金) 高齢者の生活体力維持増進プログラムの開発 第3報 短期プログラムの1回指導による効果の検討
江川賢一、神野宏司、種田行男、永松俊哉、北畠義典、西嶋洋子、真家英俊、荒尾 孝 昨年までに我々は、5ヶ月間の運動継続による生活体力維持増進プログラムのる繰り返し指導が、高齢者の運動量を増加させ、生活体力の改善に有効であることを報告した。しかし、地域保健事業における健康教育の現場では、より少ない指導頻度によるプログラム効果が期待されている。 そこで、本研究ではより少ない指導頻度による短期プログラムの効果を明らかにするために、介入期間およびプログラムを同一条件とした2つの運動教室を開催し、1回のみの指導に効果と繰り返し指導による効果について比較検討した。
川崎市内のAおよびB地区の老人福祉センターを利用する在宅高齢者を対象として、運動教室に自主的に参加した者を介入群(99名、68.3±5.0歳)、生活体力測定会のみに参加した者を非介入群(120名、69.6±5.2歳)とした。 介入群には教室での運動プログラム(生活体力維持増進のための体操および歩行)および運動継続支援プログラム(担当者による個別目標の設定および運動実施内容のセルフモニタリング)を指導した。このうち、A地区(男性5名、女性25名)では初回のオリエンテーションで1回のみの指導をした(1回指導群)。B地区(男性23名、女性46名)では初回のオリエンテーションの後、2週毎に運動教室を開催し、定期的に12回の繰り返しを指導した(定期指導群)。 生活体力の効果を比較するために、教室前後の生活体力総合得点の変化量を算出し、介入の有無および指導頻度の2要因の2元配置分散分析を施行した。
介入前において習慣的に運動を実施している者の割合は、両地区において有意差は認められなかった。 介入群において、本プログラムで指導した体操および歩行の1日あたり平均実施状況(回数および時間)は、1回指導群と定期指導群との間で有意差が認められなかった。 分散分析の結果、2要因の交互作用は認められず(P>0.05)、介入の有無(P<0.01)および指導頻度(P<0.01)の主効果がそれぞれ認められた。介入群の生活体力は対照群よりも改善し、1回指導群は定期指導群よりも改善される程度が低かった。
以上の結果から、本プログラムは、より少ない指導頻度でも、プログラムで指導した運動量を増加させ、生活体力の改善に有効であることが明らかにされた。しかしながら、1回指導後においては生活体力の改善効果が少なかったことから、本プログラム以外での運動や、日常生活全般における身体活動量に対する増量効果が少なかったものと推察される。したがって、1回指導においては、日常生活における全般的な活動性を高める指導を加えることが必要であるものと思われる。 1999 第54回日本体力医学会大会 平成11年9月19日(水)20日(木)21日(金) 2I011 高齢者の生活体力維持増進プログラムが生活機能に及ぼす効果
第2報 精神・社会的生活機能に及ぼす効果 1998 第53回日本体力医学会大会 平成10年9月19日(水)20日(木)21日(金)
2F003 1997 第56回日本公衆衛生学会総会 平成9年10月16日(木)~18日(土) 高齢者の健康づくり長期介入研究 第6報 社会・精神的生活機能の2年間の変化
江川賢一、種田行男、北畠義典、神野宏司、永松俊哉、西嶋洋子、荒尾孝、安富恵美子 1997 第52回日本体力医学会大会 平成9年9月21日(水)~23日(金) 高齢者の生活体力維持増進に関する長期介入研究 第1報 健康教育プログラムと生活体力について
江川賢一、種田行男、北畠義典、神野宏司、西嶋洋子、永松俊哉、荒尾孝 1996 第51回日本体力医学会大会 平成8年9月18日(水)~20日(金) 高齢者の生活体力と医学的健康指標との関連性 江川賢一、種田行男、荒尾孝、北畠義典、西嶋洋子、神野宏司 |