研究内容


興奮性シナプス伝達調節分子機構の生後発達変化

   

 われわれの脳・脊髄では数百億個を越える神経細胞が回路網を構成し、その一部分に電気信号「活動電位」を伝播させることによって、様々な情報を入出力しています。神経細胞間のつなぎ目「シナプス」では前シナプス末端の「活動電位」が化学伝達物質の媒介によってシナプス後細胞の電位変化「シナプス後電位」に変換されます。シナプス後電位の振幅は様々な調節機構によって修飾されますが、これが最終的に活動電位の発火点を越えるか否かによって神経回路の開閉が決定されます。この全過程は千分の一秒以内に行われます。哺乳動物のシナプスは胎児期に形成され、生後発達と共に機能が成熟、分化しますが、このプロセスにおいて、様々なタンパク質の消長と、それに起因すると思われるシナプス特性の変化が観察されます。私達はこの分子・機能間の因果関係を明確にすることがシナプス伝達・調節の分子機構の解明につながると考えています。特にシナプス前末端における研究は、技術的に困難なために取り残されていますが、私達はヘルドのカリックスと呼ばれる巨大神経終末端と後細胞から同時に電気信号記録を行うことを可能にしました。生後の様々な時期のネズミの脳幹を取り出して、薄い切片を作ると、顕微鏡下に神経細胞とシナプスを生きたままの状態で観察することが出来ます。先端1ミクロンの電極を使ってシナプスから細胞内記録を行うと電気信号が記録されます。
 またナプスタンパク質は蛍光抗体を使って可視化できるので、成長に伴うタンパク質再構成の様子を知ることができます。これらの方法に加えて前末端細胞内への物質注入、シナプス小胞の開口回収の膜容量測定、ノックアウトマウス、内耳破壊などの方法を駆使して、シナプス分子と機能の関連を明らかにしつつあります


 
この研究は文部科学省科学研究費補助金・特別推進研究のサポートによって行われています。



 
進行中の主な研究テーマ

(1)シナプス小胞回収分子機構の生後発達変化。
(2)シナプス小胞の伝達物質取り込み速度。
(3)前末端Caチャネルサブユニットの生後発達スイッチ分子機構。
(4)シナプス生後発達変化の聴覚入力依存性、
(5)伝達物質放出促進分子機構。



 
研究方法      

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神経終末端からのホールセル記録
 *神経終末端灌流法

 *神経終末端からの膜容量測定
 *神経終末端免疫組織化学
 *神経終末端組織培養・細胞培養
 *両側性内耳破壊
 *定量的単一細胞PCR
 *神経終末端Caイメージング
 *ケージド物質の神経終末端への適用
 *パッチ膜へのピエゾ急速灌流投与

 *ノックアウトマウス