排卵誘発剤の副作用について

 

<このページの内容>

■排卵障害誘発剤の副作用についての解説

■公的な文書に見る排卵誘発剤の副作用についての記述

■排卵誘発剤の副作用に関する統計資料

■排卵誘発剤の副作用に関連する裁判例

 

■排卵障害誘発剤の副作用についての解説

排卵誘発剤の副作用については、インターネット上にたくさんの解説がありました。そのうちのふたつを紹介します。

 

排卵障害誘発剤

無排卵症に排卵誘発剤は有効ですが、HMG-HCG療法による排卵誘発に伴い多胎妊娠と共に卵巣過剰刺激症候群(卵巣腫大、腹水、時に胸水)が起きることがあります。症状が重くなると血液循環動態にも影響が出て、血栓症や呼吸障害を起こすことがあります。症状が出たらすぐに医師に相談し有効な治療を受けましょう。(下線筆者)

 

参照:日本産婦人科医会のホームページ

http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/PUB/FUNIN_CHIRYO/hukusayou.htm

 

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

排卵誘発剤を使用したとき、卵巣が強い刺激を受けて大きく腫れることがあります。ほとんどは経過を見るだけで自然に消えますが、時にお腹に水が溜まって脱水状態になり、入院治療を行うこともあるので、注意が必要です。特に多嚢胞性卵巣症候群(PCO)や体外受精の治療時などで起こりやすくなります。

 

参照:よしみつ婦人科クリニックのホームページ(写真付きの解説があります)

http://www.ne.jp/asahi/clinic/yfc/ohss.html

 

■公的な文書に見る排卵誘発剤の副作用についての記述

 

厚生科学審議会生殖補助医療部会『精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書』(平成15年4月28日)より

「・・・卵子の採取のために、卵子の提供者に対して排卵誘発剤投与、経腟採卵法等の方法による採卵針を用いた卵子の採取等を行う必要があり、提供された卵子による体外受精を希望する当事者以外の第三者である卵子の提供者に対して排卵誘発剤の投与による卵巣過剰刺激症候群等の副作用、採卵の際の卵巣、子宮等の損傷の危険性等の身体的危険性を常に負わせるものである。」(下線筆者)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/04/s0428-5.html で全文参照可

 

「生殖医療技術に対する国民の意識2003」で用いられた説明用リーフレット『生殖補助医療技術を理解するために〜高度先進医療技術を用いて、不妊治療をおこなう〜』(平成15年1月より

「排卵誘発剤の副作用(卵巣過剰刺激症候群 OHSS

排卵誘発剤によって卵巣が過剰に反応してはれたり、お腹や胸に水がたまったりする副作用です。お腹がはる、口が渇く、軽い腹痛など軽い症状から、激しい腹痛、嘔気、呼吸が苦しくなるなどの重篤な症状まで、個人差があります。軽症の場合は時間がたてば治りますが、重症の場合は入院して治療する必要があります。不妊治療の中で最も問題となる副作用です。」(下線部は、下線+赤字で示されている)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/02/s0206-2b.html で全文参照可

 

■排卵誘発剤の副作用に関する統計資料

 

1.                        厚生労働省医薬局安全対策課の報告(平成14625日付)では、19942002年までに排卵誘発剤による副作用321人で440件(ひとりに複数件の副作用がある場合があるため)、うち5名死亡、未回復7名(転帰不明を含む)、後遺障害20名(失語症、半身麻痺、卵巣摘出など)などが記録されている。産婦人科学会による調査では死亡例は1例となっているが、厚生労働省の調査では5例となっている。この厚生労働省の調査は、社民党議員の北川れん子さんの国会質問をきっかけにして行われたもので、不妊当事者で組織されているフィンレージの会(http://www5c.biglobe.ne.jp/~finrrage/)の会報200212月号でも紹介されている。(この件に関する情報はフィンレージの会の鈴木良子さんからご提供いただきました)

 

*死亡例*

1995年 30歳代前半 メーグス症候群

1995年 20歳代後半 腹水、卵巣腫大、脳梗塞

1996年 20歳代後半 脳梗塞、卵巣過剰症候群

1996年 20歳代後半 脳梗塞、卵巣過剰症候群

1999年 30歳代前半 脳梗塞、卵巣過剰症候群

 

2.                        日本産科婦人科学会の生殖・内分泌委員会報告として、卵巣過剰症候群(OHSS)の診断基準ならびに予防法・治療指針の設定に関する小委員会による調査結果報告が日本産科婦人科学会雑誌54巻6号(2002年)に掲載されており重症例12例(うち死亡例1例)が検討されている。また、これ先立つ調査結果の報告が、同誌54巻6号(2002年)に掲載されている。

 

■排卵誘発剤の副作用に関連する裁判例

新聞記事のデータベースで検索したところ、報道されているだけでも3件(新潟、秋田、広島)の裁判が起きている。このうち新潟裁判(1995年、患者は死亡)がきっかけとなって19964月には、厚生省薬務局安全課(当時)から、HMG―HCG療法に対する緊急安全情報も出されている。

 

広島市民病院の敗訴確定 不妊治療で脳梗塞発症

2004.02.03 中国朝刊 社会 (全349字) 

 広島市民病院の投薬による副作用で重い障害を負ったとして、同市の主婦が賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(浜田邦夫裁判長)は二日までに市の上告を退ける決定をした。約八千五百万円の支払いを命じた市敗訴の二審判決が確定した。決定は一月三十日付。

 二審判決によると、主婦は不妊治療中の一九九五年三月から排卵誘発剤の投与を受け、数日後には腹痛などの症状を訴えた。その後、脳血栓と診断され手術を受けたが、脳梗塞(こうそく)が発症し、右半身や言葉に障害が残った。

 広島地裁判決は請求を棄却したが、広島高裁は昨年六月、「排卵誘発剤の副作用による卵巣過剰刺激症候群を発症した後も、経過観察を怠り投与を続け、入院措置を取らなかった」と医師の過失を認めていた。

中国新聞社

 

「排卵誘発剤で後遺症」訴訟、国に770万円支払い命令 /秋田

2003.08.28 東京地方版/秋田 33頁 秋田版 (全520字) 

 秋田大学医学部付属病院で排卵誘発剤を使った不妊治療を受けた後、脳血栓症を発症し、左腕が動かなくなるなどの後遺症が残ったとして、鹿角市の女性(41)が病院を設置している国を相手取って約9657万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、仙台高裁秋田支部であった。矢崎正彦裁判長は、一審の秋田地裁判決の一部を変更し、国に対して770万円を支払うよう命じた。

 判決によると、女性は92年1月から同病院などで、排卵誘発剤を使った不妊治療を受けた。体外受精の後、受精卵を体内に戻されて退院したが、吐き気などの症状を発症し同年7月、同病院に再入院。脳血栓症となり、左腕が動かないなどの後遺症が残ったという。

 一審の秋田地裁は、排卵誘発剤と脳血栓症の因果関係を認め、副作用に関する担当医の説明不足を指摘して国側に330万円の支払いを命じた。これに加え、この日の判決で矢崎裁判長は「大学病院の医師らは、原告に対する経過観察を怠ったことによって原告に精神的苦痛を与えた」などと指摘し、一審より重い損害賠償を命じた。

 秋田大は判決後、「大学側の主張が受け入れられず、まことに残念。判決を精査した上で、関係機関と十分に協議、検討して対処していきたい」とコメントした。

朝日新聞社

 

国など3800万の賠償を 不妊治療による死亡の訴訟

2002.09.13 共同通信 (全540字) 

 不妊治療で排卵誘発剤の投与を受けた妻が死亡したのは医療ミスとして、新潟県上越市の会社員が国と県に約五千二百万円の損害賠償を求めた訴訟で新潟地裁(片野悟好裁判長)は十三日、両者に約三千八百万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、会社員の妻=当時(31)=は一九九五年七月から、新潟大病院と、同病院の指示を受けた県立病院など二カ所で排卵誘発剤の投与を受けた。同十月中旬ごろから下腹部の痛みなどを訴え、卵巣がはれる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になり、同年十一月八日、肺水腫による多臓器不全で死亡した。

 片野裁判長は、OHSSが発症する確率が相当高いことや危険性について説明していれば、排卵誘発剤の投与に同意しなかった可能性が高いなどと、病院側の責任を認めた。

 原告側は、妻は「多のう胞性卵巣型」といわれる不妊症状で、製剤投与による副作用や危険性を事前に説明して同意を得なければならないのに、病院側はそれらを怠り、痛みを訴えた後も、適切な処置を取らなかったと主張。これに対し病院側は、十分な説明はしており責任はないとしていた。

 下條文武・新潟大病院長は「主張が受け入れられず誠に残念。今後の対応については、判決の内容を十分検討した上で決定したい」と話している。

共同通信社

 

 

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