文献紹介:体外受精の妊娠率を上げるための着床前診断

 

Fertil Steril. 2003 Aug;80(2):467-8.

"Preimplantation genetic diagnosis as both a therapeutic and diagnostic tool in assisted reproductive technology."

Werlin L, Rodi I, DeCherney A, Marello E, Hill D, Munné S.

 

着床前の卵の半数に染色体異数体が認められることから以下の3グループでPGD(着床前診断)が生殖医療の治療成績向上に有効かを調べた。

[1]自然流産を繰り返す群 2回以上の自然流産(RPL群)

[2]高齢群 38歳以上(AMA群)

[3]IVFに繰り返し失敗している群 2回以上の失敗(FC群)

 

200181日から2002830日までに57人の患者がこの研究に登録した。全員同じプロトコールで卵巣刺激と卵採取が行われ,ICSI(細胞質内精子注入)が行われた。PGDを受けたグループでは,一般に行われている方法通り,採卵3日目の6-8細胞期に受精卵生検と割球の固定が行われた。スライド(検体)はSt.Barnabasに送られて,染色体13番,15番,16番,17番,18番,21番,22番,XおよびYについてのFISH解析が行われた。採卵4-5日で結果が判明,染色体が正常な卵だけを採卵5日目に杯移植した。対照群では主治医の選択により3-5日目に胚移植を行った。

 

対照群のすべてで胚移植がなされたが,PGD群の28.6%では正常受精卵がなく,胚移植がなされなかった。χ(カイ)二乗検定によればPGD群と対照群の妊娠率はp<0.07で統計的に有意にPGD群の方が良い。ただし,それぞれのグループを比べるには症例数が少なすぎて統計学的な差を論じることはできない。結論としていくつかの点が明らかになった。

1)PGDにより,異数体は流産を繰り返す原因としてよくあることが判明した。

2)流産を繰り返す人達にはPGDが有用である。

3)高齢群にPGDが有用であるかどうかはまだ不明である。

4)IVFの失敗を繰り返す人たちにはPGDの有用性はない。

5)それぞれのグループにおいて異常卵が高率にあったということから,カップルは早期に他の選択肢,つまり卵子提供,受精卵提供,養子を迎えるなどを考慮することができるであろう。

 

PRL       AMA     FC          総数

全症例数                           19           19           19           57

PGD/対照数                  11/8        7/12        10/9        28/29

生検を受けた胚の数        44           41           28           113

異常胚の率%                    68.2        53.7        67.9        63.0

胚移植されなかった率% 27.3        14.3        40.0        28.6

妊娠率% PGD           63.6        43.0        20.0        43.0        妊娠率=妊娠症例数/全症例数

妊娠率% 対照群            37.5        25.0        0            20.7

http://www.reprogenetics.com/articles/40.pdfで全文参照可

 

 

Vol 7. No 1. 91–97 Reproductive BioMedicine Online; on web 15 May 2003

"Improved implantation after preimplantation genetic diagnosis of aneuploidy"

Santiago Munné, et.al

Institute for Reproductive Medicine and Science, Saint Barnabas Medical Centre, Livingston, NJ 07052, USA

 

高齢妊娠群で,染色体の数的異常についてのPGDが着床率を上げることができるかということを検討した。妊娠予後が判明する前にPGD群のそれぞれに対照群が設定された。受精卵の一細胞を採取して,XY13番,15番,16番,18番,21番,22番の染色体と一部では1番,7番,14または17番の染色体のいずれかも調べた。この結果は, IVFを受けた回数,染色体が正常と考えられた受精卵を採卵4日目に戻したときに二前核以上に分裂した受精卵を得られた数,も同時に検討した。結果として高齢群138周期(平均40歳)での着床率は18%で,対照群での通常のIVFによる着床率11%よりも高かった(p<0.05)。この差異は,二回以上のIVFを行ったことがある群や8個以下の受精卵しか得られなかった群では認められなかった。8個以上の受精卵が得られた群とIVFを受けた既往がない群(平均年齢40歳)では,着床率は対照群の8.8%から19.2%と大きな改善が認められた。なお,「着床」は超音波で胎児心拍が観察された例としています。

 

つまり高齢妊娠群でもIVFがなかなか成功しない人や質の良い受精卵が数多く得られない人では,PGDをやっても妊娠率を上げることはできない,言い換えれば,まだあまりIVFをやったことがなくて,受精卵も沢山とれる人で高齢だったら,PGDをやった方が着床率はよくなると言っています。ここでの着床率は、着床した卵の数/胚移植した卵の数です。

 

http://www.reprogenetics.com/articles/38.pdfで全文参照可

 

*引用・転載はご遠慮下さい。

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解説 山中美智子(神奈川県立こども医療センター産婦人科)

 

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