「着床前診断」記述比較1

第23回平成15年8月1日 第24回平成15年8月27日
2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用 2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用
b .着床前遺伝子診断 b .着床前遺伝子診断
○ 現在、ヒト受精胚の着床前診断は、体外授精において、4 細胞期又は ○ 現在、ヒト受精胚の着床前診断は、体外授精において、4 細胞期又は
8 細胞期の胚から1 個又は2 個の胚性細胞を取り出して遺伝子検査や染 8 細胞期の胚から1 個又は2 個の胚性細胞を取り出して遺伝子検査や染
色体検査を行い、疾患遺伝子の有無等とそれによる誕生後の遺伝疾患発 色体検査を行い、疾患遺伝子の有無等とそれによる誕生後の遺伝疾患発
現の可能性を判断する方法によって行なわれているものである。その結 現の可能性を判断する方法によって行なわれているものである。その結
果、胚性細胞に疾患遺伝子の存在等が認められた場合は、親の判断に基 果、胚性細胞に疾患遺伝子の存在等が認められた場合は、親の判断に基
づいて、胚性細胞を取り出した後の受精胚は廃棄されることがある。着 づいて、胚性細胞を取り出した後の受精胚は廃棄されることがある。着
床前診断の結果、遺伝性疾患発現等の可能性がないと判断された場合に 床前診断の結果、遺伝性疾患発現等の可能性がないと判断された場合に
は、もとの受精胚は子宮内に移植される。 は、もとの受精胚は子宮内に移植される。
○ 1997 年までに、世界35 施設において、377 症例に対して着床前診断 ○ 1997 年までに、世界35 施設において、377 症例に対して着床前診断
が行われ、96 人の子が出生している。着床前診断は、米国、スウェー が行われ、96 人の子が出生している。着床前診断は、米国、スウェー
デン、イタリアなどでは規制されていないが、フランス、イギリスでは デン、イタリアなどでは規制されていないが、フランス、イギリスでは
規制下で認められており、ドイツでは禁止されている。我が国では、日 規制下で認められており、ドイツでは禁止されている。我が国では、日
本産科婦人科学会の会告が、重篤な遺伝的疾患を診断する目的に限り、 本産科婦人科学会の会告が、重篤な遺伝的疾患を診断する目的に限り、
臨床研究として着床前診断を行うことを認めている。 臨床研究として着床前診断を行うことを認めている。
第25回平成15年10月28日 第26回平成15年11月28日
2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用 2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用
b .着床前遺伝子診断 b .着床前遺伝子診断
○ 現在、ヒト受精胚の着床前診断は、体外授精において、4 細胞期又は ○ 現在、ヒト受精胚の着床前診断は、体外授精において、4 細胞期又は
8 細胞期の胚から1 個又は2 個の胚性細胞を取り出して遺伝子検査や染 8 細胞期の胚から1 個又は2 個の胚性細胞を取り出して遺伝子検査や染
色体検査を行い、疾患遺伝子の有無等によって誕生後の遺伝疾患発現の 色体検査を行い、疾患遺伝子の有無等によって誕生後の遺伝疾患発現の
可能性を判断する方法が行なわれている。その結果、胚性細胞に疾患遺 可能性を判断する方法が行なわれている。その結果、胚性細胞に疾患遺
伝子の存在等が認められた場合は、親の判断に基づいて、胚性細胞を取 伝子の存在等が認められた場合は、親の判断に基づいて、胚性細胞を取
り出した後の受精胚は廃棄されることがある。着床前診断の結果、遺伝 り出した後の受精胚は廃棄されることがある。着床前診断の結果、遺伝
性疾患発現等の可能性がないと判断された場合には、もとの受精胚は子 性疾患発現等の可能性がないと判断された場合には、もとの受精胚は子
宮内に移植される。 宮内に移植される。
○ 1997 年までに、世界35 施設において、377 症例に対して着床前診断 ○ 1997 年までに、世界35 施設において、377 症例に対して着床前診断
が行われ、96 人の子が出生している。着床前診断は、米国、スウェー が行われ、96 人の子が出生している。着床前診断は、米国、スウェー
デン、イタリアなどでは規制がないが、フランス、イギリスでは一定の デン、イタリアなどでは規制がないが、フランス、イギリスでは一定の
要件の下でのみ許容されている。ドイツでは禁止である。我が国では、 要件の下でのみ許容されている。ドイツでは禁止である。我が国では、
日本産科婦人科学会の会告が、重篤な遺伝的疾患を診断する目的に限り、 日本産科婦人科学会の会告が、重篤な遺伝的疾患を診断する目的に限り、
臨床研究として着床前診断を行うことを認めている。 臨床研究として着床前診断を行うことを認めている。
第27回平成15年12月12日
25回、26回に同じ

「着床前診断」記述比較2

第23回平成15年8月1日 第24回平成15年8月27日
3 .ヒト受精胚の利用 3 .ヒト受精胚の利用
a .医療目的での利用 a .医療目的での利用
<着床前診断> <着床前診断>
○ ヒト受精胚の着床前診断には、@重篤な遺伝性疾患を有する子供を持 ○ ヒト受精胚の着床前診断には、@重篤な遺伝性疾患を有する子供を持
つことによる母親への精神的・肉体的負担を防止できること、A社会的 つことによる母親への精神的・肉体的負担を防止できること、A社会的
現実の問題として、遺伝病を持つ子供を出産する可能性がある両親に対 現実の問題として、遺伝病を持つ子供を出産する可能性がある両親に対
し、子を持つことを断念したり、養子縁組をすること以外の選択肢を提 し、子を持つことを断念したり、養子縁組をすること以外の選択肢を提
供できること、B着床後、出生前診断の結果行われる中絶手術による母 供できること、B着床後、出生前診断の結果行われる中絶手術による母
体への大きな負担を避けることができることといった長所がある。 体への大きな負担を避けることができることといった長所がある。
○ こうした利点は当事者の立場に思いを致せば単純に個人のエゴイズム ○ そうすると、ここで検討されなくてはならないのは、母親の幸福追求
等と否定的にとらえ排除するのは難しいところであり、介護や養育に伴 権(憲法13 条)と胚の価値との競合関係をどのように考えるかにある。
う精神的乃至肉体的な重圧は、胚の尊重といった点と比較しても決して そして、上に述べたような利点は当事者の立場に思いを致せば単純に個
軽んずることのできない重い現実である。したがって、一定範囲内で認 人のエゴイズム等と否定的にとらえ排除するのは難しいところであり、
められると考える。 介護や養育に伴う精神的乃至肉体的な重圧は、胚の尊重といった点と比
  較しても決して軽んずることのできない重い現実である。このことから
  諸外国でも着床前診断は認められている。したがって、極めて重篤な遺
  伝性疾患等一定範囲内で認められると考える。
○ ただし、例えば、@疾患遺伝子の有無とは言え、ヒト受精胚をその遺 ○ ただし、例えば、@疾患遺伝子の有無とは言え、ヒト受精胚をその遺
伝情報に基づいて選別することには相違ないし、A現在の技術では疾患 伝情報に基づいて選別することには相違ないし、A現在の技術では疾患
遺伝子等を有するヒト受精胚に限って排除することはできず、対象とし 遺伝子等を有するヒト受精胚に限って排除することはできず、対象とし
た疾患遺伝子を持たないヒト受精胚が廃棄される可能性も、少ないなが た疾患遺伝子を持たないヒト受精胚が廃棄される可能性も、少ないなが
らあるといった課題もあるから、実施に当たっては慎重に判断する必要 らあるといった課題もあるから、実施に当たっては慎重に判断する必要
がある。 がある。
○ また、遺伝性疾患や遺伝子異常を原因としないヒト受精卵の選別は、優 ○ また、遺伝性疾患や遺伝子異常を原因としないヒト受精卵の選別は、優
生主義につながり許されない。また、上に述べた遺伝性疾患や遺伝子異 生主義につながり許されない。また、上に述べた遺伝性疾患や遺伝子異
常を排除するためにヒト受精胚の性別を調べてこれを行う場合もあるが、 常を排除するためにヒト受精胚の性別を調べてこれを行う場合もあるが、
十分な確度で疾患遺伝子による遺伝子診断を行うことが可能である場合 十分な確度で疾患遺伝子による遺伝子診断を行うことが可能である場合
には、この方法は許されない。 には、この方法は許されない。
○ 以上のように、着床前診断は母親の立場を考慮したやむを得ない方法 ○ 以上のように、着床前診断はあくまでも母親の立場を考慮したやむを
として考慮せざるを得ない医療であって、生命の価値による選択であっ 得ない方法として考慮せざるを得ない医療であって、生命の価値による
てはならない。遺伝性疾患、先天性疾患を持つ人への差別は決して許さ 選択であってはならない。遺伝性疾患、先天性疾患を持つ人への差別は
れるものではなく、社会はこうした疾患を持つ人の人権に今後とも十分 決して許されるものではなく、社会はこうした疾患を持つ人の人権に今
な配慮をしなければならない。 後とも十分な配慮をしなければならない。
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
第25回平成15年10月28日 第26回平成15年11月28日
3 .ヒト受精胚の利用 3 .ヒト受精胚の利用
a .医療目的での利用 a .医療目的での利用
<着床前診断におけるヒト受精胚の取扱い> <着床前診断におけるヒト受精胚の取扱い>
○ ヒト受精胚の着床前診断は、前に述べたとおり、ヒト受精胚から1 又 ○ ヒト受精胚の着床前診断は、前に述べたとおり、ヒト受精胚から1 又
は2 個の細胞を取り出して疾患遺伝子の有無等の検査を行うものであり、 は2 個の細胞を取り出して疾患遺伝子の有無等の検査を行うものであり、
その結果によってはこれを子宮内に移植しないことになるが、@重篤な その結果によってはこれを子宮内に移植しないことになるが、@重篤な
遺伝性疾患を有する子どもを持つことによる母親の負担をなくすことが 遺伝性疾患を有する子どもを持つことによる母親の負担をなくすことが
できる、A遺伝病を持つ子どもを出産する可能性がある両親にも、遺伝 できる、A遺伝病を持つ子どもを出産する可能性がある両親にも、遺伝
病のない子どもの出産を保障することができるため、実子を持つことを 病のない子どもの出産を保障することができるため、実子を持つことを
断念する必要がなくなる、B着床後の出生前診断の結果行われる中絶手 断念する必要がなくなる、B着床後の出生前診断の結果行われる中絶手
術は母親に身体的・心理的に大きな負担をもたらすが、これを避けるこ 術は母親に身体的・心理的に大きな負担をもたらすが、これを避けるこ
とができる、といった利点がある。 とができる、といった利点がある。
○ 両親、特に母親がこのようなことから着床前診断を受けることは、単 ○ 両親、特に母親がこのようなことから着床前診断を受けることは、単
なる個人のエゴイズムであるとすることはできない。これも、憲法第13 なる個人のエゴイズムであるとすることはできない。これも、憲法第13
条によって保障された個人の幸福追求権であると考えるべきである。し 条によって保障された個人の幸福追求権であると考えるべきである。し
かし、着床前診断による受精胚のスクリーニングは遺伝病の可能性のあ かし、着床前診断による受精胚のスクリーニングは遺伝病の可能性のあ
るヒト受精胚の生命を絶つものであり、すでに述べた意味での「人の生 るヒト受精胚の生命を絶つものであり、すでに述べた意味での「人の生
命の尊厳」を侵害しない範囲で認められるべきである。遺伝性疾患、遺 命の尊厳」を侵害しない範囲で認められるべきである。遺伝性疾患、遺
伝子異常を原因としないヒト受精卵の選別は、優生主義につながるもの 伝子異常を原因としないヒト受精卵の選別は、優生主義につながるもの
であり、許されない。両親の権利はここに限界を見出すのである。諸外 であり、許されない。両親の権利はここに限界を見出すのである。諸外
国でも着床前診断は認められているが、極めて重篤な遺伝性疾患などの 国でも着床前診断は認められているが、極めて重篤な遺伝性疾患などの
範囲に限られている。 範囲に限られている。
○ しかし、現在の着床前診断の技術では、対象とした疾患遺伝子を有す ○ しかし、現在の着床前診断の技術では、対象とした疾患遺伝子を有す
るヒト受精胚だけを排除することはできず、疾患遺伝子を持たない胚も るヒト受精胚だけを排除することはできず、疾患遺伝子を持たない胚も
廃棄される可能性も少ないながら存在する。許容される着床前診断の実 廃棄される可能性も少ないながら存在する。許容される着床前診断の実
施にあたっても、このような可能性を極力排除することが求められてい 施にあたっても、このような可能性を極力排除することが求められてい
るのであり、伴性遺伝を排除するために、受精胚の性別を調べて一律に るのであり、伴性遺伝を排除するために、受精胚の性別を調べて一律に
片方の性の受精胚を廃棄するようなことは許されるべきではない。 片方の性の受精胚を廃棄するようなことは許されるべきではない。
○ 以上のように、着床前診断はあくまでも両親、特に母親の立場を考慮 ○ 以上のように、着床前診断はあくまでも両親、特に母親の立場を考慮
した、やむを得ない方法として考慮せざるを得ない医療であって、生命 した、やむを得ない方法として考慮せざるを得ない医療であって、生命
の価値による選択であってはならない。遺伝性疾患、先天性疾患を持つ の価値による選択であってはならない。遺伝性疾患、先天性疾患を持つ
人への差別は決して許されるものではなく、これからも、社会はこうし 人への差別は決して許されるものではなく、これからも、社会はこうし
た疾患を持つ人たちの権利と福利に十分な配慮をしなければならない。 た疾患を持つ人たちの権利と福利に十分な配慮をしなければならない。
 疾患を持った子どもは不幸であるから、そのような子どもの出生を防  疾患を持った子どもは不幸であるから、そのような子どもの出生を防
止する必要があるという論理によって出生前診断を正当化することは、 止する必要があるという論理によって出生前診断を正当化することは、
障害を持つ人は不幸な存在であるということを前提にするものである。 障害を持つ人は不幸な存在であるということを前提にするものである。
このような「生まれざりせば良かりしものを」という考え方は、まさに このような「生まれざりせば良かりしものを」という考え方は、まさに
障害者の差別を前提にしたものといわざるをえない。着床前診断を最終 障害者の差別を前提にしたものといわざるをえない。着床前診断を最終
的に両親の決定にかからせる本報告書の立場は、これとは異なることは 的に両親の決定にかかるものとする本報告書の立場は、これとは異なる
いうまでもない。 ことはいうまでもない。
○ ヒト受精胚のスクリーニングである着床前診断の倫理的許容性は、胎 ○ ヒト受精胚のスクリーニングである着床前診断の倫理的許容性は、胎
児のスクリーニングを行う人工妊娠中絶の法的許容性の延長において考 児のスクリーニングを行う人工妊娠中絶の法的許容性の延長において考
えられなければならない。このことは、胎児とヒト受精胚との関係につ えられなければならない。このことは、胎児とヒト受精胚との関係につ
いて述べたところである。 いて述べたところである。
 現在の産科の医療現場の実態として、胎児に重大な障害があるときに ○ 現在の産科の医療現場の実態として、胎児に重大な障害があるときに
は、母胎保護法14 条1 項1 号の「経済的・身体的条項」によって中絶手 は、母胎保護法14 条1 項1 号の「経済的・身体的条項」によって中絶手
術が行われている。成長の段階においては胎児以前のところにあるヒト 術が行われている。成長の段階においては胎児以前のところにあるヒト
受精胚について、これより狭い範囲で着床前診断を行うことは許される 受精胚について、これより狭い範囲で着床前診断を行うことは許される
と考えられるであろう。 と考えられるであろう。
第27回平成15年12月12日
3 .ヒト受精胚の利用
a .医療目的での利用
<着床前診断におけるヒト受精胚の取扱い>
○ ヒト受精胚の着床前診断は、前に述べたとおり、ヒト受精胚から1 又
は2 個の細胞を取り出して疾患遺伝子の有無等の検査を行うものであり、
その結果によってはこれを子宮内に移植しないことになるが、@重篤な
遺伝性疾患を有する子どもを持つことによる母親の負担をなくすことが
できる、A遺伝病を持つ子どもを出産する可能性がある両親にも、遺伝
病のない子どもの出産を保障することができるため、実子を持つことを
断念する必要がなくなる、B着床後の出生前診断の結果行われる中絶手
術は母親に身体的・心理的に大きな負担をもたらすが、これを避けるこ
とができる、といった利点がある。
○ 両親、特に母親がこのようなことから着床前診断を受けることは、単
なる個人のエゴイズムであるとすることはできない。これも、憲法第13
条によって保障された個人の幸福追求権であると考えるべきである。し
かし、着床前診断による受精胚のスクリーニングは遺伝病の可能性のあ
るヒト受精胚の生命を絶つものであり、すでに述べた意味での「人の生
命の尊厳」を侵害しない範囲で認められるべきである。重篤な遺伝性疾
患以外のヒト受精卵の選別は、優生主義につながるものであり、許され
ない。両親の権利はここに限界を見出すのである。諸外国でも着床前診
断は認められているが、極めて重篤な遺伝性疾患などの範囲に限られて
いる。
○ しかし、現在の着床前診断の技術では、対象とした疾患遺伝子を有す
るヒト受精胚だけを排除することはできず、疾患遺伝子を持たない胚も
廃棄される可能性も少ないながら存在する。このような可能性を極力排
除するべきであり、伴性遺伝を排除するために、受精胚の性別を調べて
一律に片方の性の受精胚を廃棄するようなことは許されるべきではない。
○ 以上のように、着床前診断はあくまでも両親、特に母親の立場を考慮
した、やむを得ない方法として考慮せざるを得ない医療であって、生命
の価値による選択であってはならない。遺伝性疾患、先天性疾患を持つ
人への差別は決して許されるものではなく、これからも、社会はこうし
た疾患を持つ人たちの権利と福利に十分な配慮をしなければならない。