生命倫理調査会の議事録その他の資料(第27回まで)からの抜粋 

〜着床前診断関連の記述に注目して〜

 

20031212日の第27回生命倫理調査会をもって井村会長は退任しました。また、この回をもって中間報告の案がまとめられ、同年1226日の総合科学技術会議の本会議を経て、現在、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(中間報告書)に対する意見の募集、いわゆるパブリックコメント(2月末日まで)が始まっています。

 

ここでは、27回目までの生命倫理調査会の議事録その他配布資料など、公開されている資料を分析した結果を紹介します(ただし第27回生命倫理調査会議事録はまだ公開されていないので、公開されている資料のみを対象としました)。

 

平成13年 8月29日(水) 第7回 生命倫理専門調査会

■平成13年10月5日(金)第8回生命倫理専門調査会で配布された、資料1「総合科学技術会議第7回生命倫理専門調査会議事概要(案)11頁から13頁より

 

(井村会長)勝木先生の資料に書かれたところで、もう一つ大きな目的として、

治療があると思います。例えば着床前診断、遺伝子診断、それから将来的には

ミトコンドリア異常症の治療法があると思います。

(勝木委員)それは確かに現実に語られていることですので、(2 )のところの

生殖医療だけではなくて、ヒト胚を用いた疾患の診断と治療を、是非付け加え

たいと思います。

(石井()議員)ドイツでは着床前診断が、それについての研究の自由と人間

の尊厳との関係が憲法的な問題になっています。研究が積み重なり、臨床の治

療に用いられるようになるのは当然ですが、さしあたりこうした診断を研究に

含めて良いのか、それともやはり別だと考えるのか。

(井村会長)私はその範囲を超えていると思います。藤本委員から産科婦人科

学会で着床前診断についてはかなり議論されたと思いますので、ご報告いただ

きます。

(藤本委員)着床前診断については、着床前の体外受精の胚に対して、遺伝子

診断等を行うということで、着床前診断に関する会告を平成10 年に作りまし

た。これはあくまでも重篤な遺伝性疾患が対象であり、しかも遺伝子診断を採

用し得る背景で行うことにしています。単に男女の性別の診断をするものでは

無いということです。現実に申請はこれまでにありましたが、実状を調べたり、

申請者と話し合いをしてみますと、遺伝子診断にまだ限界がある症例でしたの

で、許可はしませんでした。現在は、会告を策定し、遺伝子診断ができるので

あれば、学会の倫理委員会等で慎重に審議して、着床前診断を認める方向です。

現在のところ、まだ一例も一施設も認めていません。重要なことは、症例ごと

に検討することです。申請のあった例は、筋ジストロフィーでしたが、同じ筋

ジストロフィーにしてもいろいろな種類があって、症例ごとに遺伝子変異も違

いますので、大きな疾患のくくりで審査をしないで、症例ごとに検討をすると

いう条件を付けて、申請があれば審査をすることにしています。

(石井()議員)遺伝子診断をした結果、非常に重篤な病気が見つかったとき

には、遺伝子操作をして、直すという前提で話が進んでいるのですか。

(西川委員)ドイツでは、例えばA さんとB さんが結婚されて、受精卵を作る

わけですが、全ての卵が異常であるとは限りません。一番の問題はその中で卵

を選ぶというプロセスです。遺伝的な異常がない卵を分割した片割れで診断し

て選ぶという行為が、裁判だけでなく、連邦議会で議論をして、だめという話

しになったのです。ところが私がニュースを見ていたら、これはオランダでは

許可されていて、オランダにそれをやるツアーというのができているのです。

そういう話しがあるくらいですから、ドイツでは基本的には選ぶというプロセ

スを自然ではないということで批判されるし、ドイツ医師会、カソリック、エ

バンゲルキルヒ、それら全ての団体が、選ぶというプロセスについて反対して

いるのです。ただ、ドイツのもう一つの問題は、羊水診断でダウン症の子供を

人工中絶して良いという指導を比較的頻繁に行なっています。そういう矛盾が

一つの国の中でもあるという問題は、認識された方が良いと思います。

(井村会長)筋ジストロフィーというのは、かなり悲惨な病気ですから、親と

しては極めて大きな懸念になるわけです。子供が遺伝子を持っているかどうか。

体外受精で数個の受精卵ができると、それについて検査をして、遺伝子を持っ

ていないものを選んで着床させることになります。

(藤本委員)着床前診断は、人工妊娠中絶を回避し得る一つの手段であるとい

う見方も背景にあると思います。現に欧米では3 百数十例の着床前診断が行わ

れています。

(高久委員)先ほどの石井議員のお話ですが、今のところ受精卵に遺伝子操作

をしてはいけないことになっていますので、遺伝子治療はできないということ

です。もう一つは確かに藤本先生の言われるように、人工妊娠中絶をしないと

いうことですが、日本の母体保護法では、胎児に異常があるという理由で中絶

はできないことになっていますから、基本的に日本の考えでは、遺伝子診断を

して正常な受精卵だけを選り分けるということができない、人工妊娠中絶と同

じアイデアなのです。反対をする人は、強く反対します。それは人工妊娠中絶

で胎児に異常があるからといって中絶することに強く反対する人たちは、受精

卵に異常があって、それをディスカードするということに強く反対をします。

ですから、可能性が言われていますが、かなり実際には難しい可能性がありま

す。

(井村会長)障害者の差別に繋がるという考え方からですね。やはり反対がか

なり出ますし、本当に難しい問題だと思います。

 

平成13年 10月5日(金) 第8回 生命倫理専門調査会

■平成13年11月6日(火)第9回生命倫理専門調査会で配布された、資料1「総合科学技術会議第8回生命倫理専門調査会議事概要(案)」7頁から8頁より

 

[2頁から続く藤本委員の発言として]

 そういう状況の中で、いわゆる第3 世代の生殖医療にどのようなことが考え

られるかです。まず一つは、着床前診断への応用です。もう一つは、細胞質移

植によって、発生能を改善することです。これは例えば、何回体外受精しても

受精しない、受精してもその後の受精卵の発育が悪い、あるいは子宮へ戻して

も着床しない、そういうものがあります。それに対して細胞質移植をしたり、

あるいは細胞質を置換して、受精胚の発生を少しでも正常化しようという試み

があります。それから成長期の卵母細胞核の活用があります。これは抗ガン剤

を使ったり、放射線治療をしたり、卵巣を切除したりなどの治療をしなければ

ならない状況があるわけですが、予め卵巣の中から卵母細胞を採取して保存し

ておいて、患者さんの病気が治ったときに、利用しようということです。その

他にもいろいろありますが、3 つのことについて、概要だけをご説明したいと

思います。次のスライドをお願いします。

 まず着床前診断に関する状況ですが、成功率はあまり高くはありません。1

993 年、94 年のイギリス、アメリカを中心とする欧米のデータを示してい

ますが、その後少し改善され、症例数も増えたと聞いていますが、生児獲得率

が周期あたり19 %です。これは当時の欧米においても、体外受精等での生児

獲得率が20 %を切るような状態でしたので、この着床前診断、すなわち割球

を取ってきて、いろいろ分析して、残りの割球で、胎児の発育を期待するとき

の生児獲得率は、普通の体外受精とほとんど変わりがないということです。従

って、その操作によって特別失敗がなければ、その後の胚の発育には影響がな

いだろうと予想されるわけです。それは妊娠率からも言えます。そういうこと

で、着床前診断に関しては、まだまだ診断の成功率が低いという問題はありな

がらも、その操作そのものは受精胚のその後の成長、発育にあまり悪い影響は

もたらしていないと言えるかと思います。次のスライドをお願いします。

 これは1995 年のものでちょっと古いのですが、今はこの倍以上の300

例を越える症例が世界で報告されているようです。スライドが古くて申し訳な

いですが、5 年前には150 例くらいの症例数が検討されていました。周期数、

移植数、妊娠数、分娩数、出生児数が現在は越えていると思います。これは先

ほど申しましたように、20 %近い生産率になっていますので、技術的な面で

の問題はない。技術的な問題は、きちっと単一遺伝子異常を診断できるかとい

うことです。もう一つの性別診断は、我が国では少なくとも学会として認めな

い方針で着床前診断に対応しています。精密診断だけによる着床前診断は、欧

米では現在行われていますが、我が国ではこれを原則として取り入れています。

単一遺伝子が分かっているわけですから、それが分かっているときのみ、着床

前診断が適用され、単一遺伝子の診断を適用しています。次のスライドをお願

いします。

 一つの受精胚から、一つないし二つの割球を取り出してきて、そのDNA を

増幅して検査をすることは、その胎児の発育に問題は残さないわけですが、技

術的には先ほど申しましたように、たった一つあるいは2 つの割球からのDN

A を取り出し増幅していく中において、技術的な限界もあるし、そこから出た

遺伝子解析に十分な信頼をおけないという場合があります。理論的には一つの

割球でもできるわけですが、現実にはそういう状況ではありません。そこで胚

核移植による遺伝子解析用の胚の作成が考えられるわけです。これによって、

たくさんの細胞を集めてきて診断できますから、より正確度が上がるし、技術

的問題も克服するだろうという予測のもとに、核移植による遺伝子解析用の胚

作成があります。これは、ヒト胚核移植胚を作ることと同じことになりますの

で、特定胚の研究の中で、将来はこういう検査のために認められるかも知れま

せんが、今は認められていないわけです。しかし、将来のために、こういうこ

とも頭に入れておくことも必要かと思いまして、敢えてお話をさせていただき

ました。体外培養してこういう状態で前核を除去しまして、細胞質だけにする、

そういう卵子をまず作ります。この中に、4 細胞期、あるいは8 細胞期の胚の

細胞核を移植します。そして電気融合させて、体外培養をして、これを発生さ

せます。要するにヒト胚核移植胚です。そうしますと、たくさんの細胞が増え

てきますから、遺伝子を解析するのに有利です。現在の技術の改良に繋がる胚

です。一方、本来子供のために残しておきたい胚は、一時凍結保存しておきま

す。こういう状態で凍結しておいて、解析の結果正常であるということが分か

りましたら、凍結を解除して、母胎へ戻すということが行われるわけです。こ

の間、体外培養をして、戻すということもありますが、多くは最終的な診断が

つくまでは、時間を稼ぐため、凍結保存をすることが行なわれると思われます。

それから申し遅れましたが、4 細胞、6 細胞、8 細胞くらいで今受精胚を子宮

に戻すことが多いのですが、より胞胚に近い状態で母胎に戻す、これが受精、

着床率を上げ妊娠率を上げるということが分かってきています。そういうわけ

で、遺伝子解析用の胚を作るということで、特定胚になりますが、将来考える

余地のあることかも知れません。

 

平成13年 12月21日(火) 第10回 生命倫理専門調査会

■平成14年1月31日(火)第11回生命倫理専門調査会で配布された、資料2「総合科学技術会議第10回生命倫理専門調査会議事概要(案)21頁より

 

(石井()議員)例えば着床前診断のような、別のことを「操作する」という

ことの中に含めていると思います。

(勝木委員)着床前診断については、急に聞かれても分かりませんが、その線

には乗っていないと思います。なぜならば、着床前診断の前提は、そこから健

康な子供が産めるかどうかという視点ですので、あくまで個体に発生させると

いうことが前提になっていますので、廃棄して余剰胚という状態には絶対に到

達しない操作だと思います。

(石井()議員)選別の要素は問題になりませんか。

(勝木委員)着床前診断をどうするかという話は、また別に議論にすべきだと

思います。この間から申し上げているように、この技術の本質は選別だと思い

ますので、体外に出た瞬間から、そのことが一番重要だと思っています。

 

平成14年 2月27日(火) 第12回 生命倫理専門調査会

■資料4「ヒト受精胚の人の生命の萌芽としての取扱いの在り方について(現時点で想定される論点メモ)」より

 

3 .ヒト受精胚の操作について

@生殖補助医療の一環として胎内の移植を前提に行われる場合

(凍結・解凍、着床前診断、核移植等)

A研究の一環として行われる場合

(ES 細胞の樹立、核移植、遺伝子操作等)

Bその他の場合

 

平成14年 4月10日(金) 第15回 生命倫理専門調査会

■資料4「ヒト受精胚の人の生命の萌芽としての取扱いの在り方について(現時点で想定される論点メモ)」より

 

2 .ヒト受精胚の操作等について(ヒト受精胚の存在を前提に)

(1)生殖補助医療の一環として行われる場合

@操作(凍結・解凍、着床前診断、核移植等)

A胎内への移植

B他者への提供

C長期保存

Dその他

[中略]

3 .ヒト受精胚の操作について

@生殖補助医療の一環として胎内の移植を前提に行われる場合

(凍結・解凍、着床前診断、核移植等)

A研究の一環として行われる場合

(ES 細胞の樹立、核移植、遺伝子操作等)

Bその他の場合

 

平成14年 4月26日 第16回 生命倫理専門調査会

■資料3「ヒト受精胚の人の生命の萌芽としての取扱いの在り方について」より

 

2 .ヒト受精胚の操作等について(ヒト受精胚の存在を前提に)

(1)生殖補助医療の一環として行われる場合

@操作(凍結・解凍、着床前診断、核移植等)

A胎内への移植

B他者への提供

C長期保存

 

■平成14年5月24日第17回生命倫理専門調査会で配布された、資料1―4「総合科学技術会議第16回生命倫理専門調査会議事概要33頁から35頁より

 

(藤本委員)大本についての理解を深めるという目的で、周辺のところを聞か

せていただきます。胚の操作のことを書いてありますが、滅失と操作という言

葉が所々に出てくるのですけれども、例えば着床前診断のように胚の細胞の1

つを取りだしてきて、その胚としての生命の尊厳は保つということが行われる

ことがあると思うのですが、そういう着床前診断のような操作自体についても、

しない方がいいというお考えなのかどうか。それが、まず第1 点です。人工妊

娠中絶を、大本としてはどのように受けとめておられるか、それが第2 点です。

受精の瞬間から生命としての始源があり、受精する前の卵子・精子にも、生命

のもとになる性質が備わっているというお考えですね。第3 点は、そういう観

点に立ったときの、避妊については、大本としてどのような受けとめ方をして

いるのかを教えていただきたいと思います。

(斉藤氏)生命科学のいろいろな技術には、生命にかかわることがありまして、

その1 つ1 つに対して我々も、勉強はさせていただいています。それに対して、

1 つ1 つ是々非々で考えるというよりも、我々は信仰的な思いから、人の命が

破壊されるとか、命の犠牲があるかないかということを1 つの大きなポイント

にしていまして、それについては、脳死・臓器移植も含め、心情的に許せない

という気持ちから反対しています。例えば着床前診断等は、結論的には明確に

判断はしていません。ただ、できるだけ、我々の素朴な感情ですけれども、人

工的な操作が少なければ少ないほど、我々はやはり、自然に近いということで、

よりありがたいなという認識です。

次の人工妊娠中絶についてですけれども、ヒト胚の滅失そのものを我々この

ように申し上げているので、基本的な我々の考えは、すぐに理解いただけると

思います。この問題については、一般的な倫理問題、またどういった状況で中

絶せざるを得なかったかということも含めて、いろいろなケースがありますの

で、十把ひとからげにこうでなければならないと、やはり言えない状況もある

と思いますので、一般的な問題も考えた上で、1 つの見解はもっておるところ

です。

(藤本委員)今のところ、理解できません。1 つの見解を持つとはどういうこ

となのでしょうか。

(斉藤氏)中絶については、胎児の命を奪ううえに、母体の危険も伴うもので

すから、基本的に倫理的に許されるという倫理観をもっている宗教はほとんど

ないと思います。我々の素朴な感情としては、授かったからには、授かった命

を大切に出産まで至るというのが基本にあると、それがまず1 点です。

(松田氏)1 点目の説明が不足していたかと思うので、補足させていただきま

す。着床前の診断は、いわゆるこの子を産むかどうかという判断のもとになる

という意味での診断ということですね。それは、大本としては、基本的には賛

成はしていません。というのは、実際にこういう我々の活動の中での報告、具

体的な中に出てくる、例えばダウン症という形で、これは専門的に私が、着床

前か出生前か、ちょっと混同している部分があるかもしれませんが、そういう

場合に、要するに、命を選別するような形になる場合ということで言えば、大

本の教えからすると、やはり命の操作になりますので、そうなれば賛成という

形はとるとは言えないのが現状です。

(藤本委員)着床前診断や出生診断は、産ませるか産ませないかのためだけで

はないのです。我々がいろいろな検査を受けると同じように、胎児も人として、

検査を受ける権利はあろうかと思います。病気であれば、その後のケアが、妊

娠継続においても、出産のときにも変わってくるのです。あくまでも病気の生

命を滅失することを目的にして、着床前診断も出生前診断も存在しているわけ

ではありません。一般にはそういう間違った理解が多くされているようですけ

れども、やはり胎児の命を見たときに、我々も医療を受ける権利があるのと同

じように、胎児もやはり病気があればその後の妊娠管理、分娩管理も変わって

くるわけですから、そういう目的もあります。そういうわけで、一言追加しま

した。

 

平成14年 5月24日 第17回 生命倫理専門調査会

■平成14年6月13日第18回生命倫理専門調査会で配布された、資料1「総合科学技術会議第17回生命倫理専門調査会議事概要(案)13頁より

 

(位田委員)クローン人間禁止条約がどうなるかという問題はあります。それから、

イギリスの例だったかと思いますが、遺伝的な病気の赤ちゃんが産まれていて、そ

の人の治療をするために2 人目の赤ちゃんを産む、その際に着床前診断をしてある

種のセレクションをして2 人目を産むいう例が新聞報道で出て話題にはなっていま

すが、それ以上の議論はまだないと思います。むしろ着床前診断をどうするかとい

うのは今ホットな議論で、ユネスコでもこの間議論をしました。

 

■同資料「…第17回議事概要(案)37頁から39頁より

 

(位田委員)多分もう1 つの問題は着床前診断の話かなと思います。というのは、

クローン胚というのは通常のヒト受精胚とは違うものをつくり出すということが問

題なので、確かにその問題というのは非常にホットな問題ですし、その中にいろい

ろな問題を含んでいるのですけれども、着床前診断の話というのもまさに自然につ

くられた範囲についてどう操作を加えるかというもう1 つの大きな側面があります。

(井村会長)着床前診断については、多分、産婦人科学会で相当議論が積まれてお

りますね。だから、そういうようなのを一度だれかから伺ってみてもいいのではな

いかという気がします。

(勝木委員)セラピューティック・クローニングというのはやはり世界的にも今の

論争点ですし、そこから問題を引き出すというのはわかりますが、順序として今引

き出すというのは危険な感じがします。むしろ西川委員がおっしゃったような動き

が片一方に出るでしょうし、イギリスのものを勉強することが一方にありますので、

それが出揃ったところで勉強していくこともよろしいのではないかと思います。確

かにクローン胚の議論はさまざまな本質的な問題を含んでいるので、そこから別の

問題を出していくという、その1 つがヒト胚についての全体の議論だったのですが、

またこうなったわけです。

(井村会長)いや、ヒト胚全体について議論することは重要だろうと思っています。

ただ、何か1 つモデルで話をしようということです。だから、あえてセラピューテ

ィック・クローニングにこだわるわけではないわけで、例えば今の着床前診断でも

いいし、何か1 つモデルで少し議論をしてみて、その上でもう一度、じゃあヒト胚

をどういうふうに取り上げていくのかということです。今日はある程度議論が出た

わけですね。ある程度の合意が得られたように思います。もちろん細かい点になる

と、特に欲望の大きさなんかになるとこれはかなり難しい問題でありますが、この

ようにヒト胚を考えてある条件で認めていこうというところあたりまでは来たので

はないかと思います。そうすると、何かをモデルにして少し議論をした方がいいの

ではないかなというのが私の考え方なのですが、それ以外に何かこういうものがあ

ったら提案していただきたいと思います。

(勝木委員)最も重要な問題だと思います。それで、特定胚のときにそれが最も重

要な問題として議論されてきたわけで、ある意味でそれは議論を終えているとは思

うのですが、もう一度やるのは全然構いませんけれども、それをやり直すための前

提になる種々の議論というのはまだ十分に深まっていないと思います。例えば先ほ

ど先生自身もおっしゃいましたが、医療に使う材料としての問題、どのように位置

づけを考えるかというような問題、ちょっと具体的なテーマは出せませんけれども。

別に引き延ばしをするつもりはありませんが、ちょっと早すぎるような気がします。

(位田委員)何から議論をするかという話で、今まである程度結論がついているの

は、余剰胚ということに限ってそれをつぶすと、ES の話です。まだ片がついてい

ないのは研究用に胚をつくるのはどうかという話、それから、できた胚を操作する

のはどうかという話です。セラピューティック・クローニングは要するに胚をつく

るという問題で、どういう問題があるかということを明らかにするために例えば次

回に一回やってみると。そこで結論を出すのではなくて、1 つの問題を整理する手

立てとしてセラピューティック・クローニングはそれはそれでいいでしょう。しか

し、セラピューティック・クローニングでは胚を操作するという話は余り出てこな

いと思いますので、そうすると次は、着床前診断をやれば胚を操作するということ

の問題がまた出てくるでしょう。そこでまた結論を出すのではなくて、そういうふ

うに幾つかの、商業化の問題もやはりできた胚をどうするかという問題なので、順

番に問題点をまず明らかにするワンラウンドをやって、それからセカンドラウンド

に入るというのがいいのではないかと思います。

(井村会長)私も結論を出そうとは毛頭考えてはおりませんで、まだそんな状況で

はないと思います。今日は、3 つぐらい提案が出たわけです。どれをやるのがいい

のかは考えさせていただいて、次回は1 つ何か具体的な例を問題にしながら、その

中でいろいろな議論を深めていくということにしたいと思います。確かに着床前診

断の問題も1 つの胚を操作するということではモデルになるかと思いますし、それ

から、商業利用、これもいずれは議論をしておかないといけない問題になりますし、

治療クローニングも最終的にはかなり大きな論争点になると思います。何か1 つモ

デルで議論をした方がいいかなということを今日の議論で感じたわけですが、それ

でよろしければ、テーマはちょっと考えさせていただいて、次回はそういう形でや

っていくことにさせていただきたいと思います。今日は私どもの都合で予定を変更

せざるを得なくなり、大変申しわけございませんでした。

 

平成14年 6月13日 第18回 生命倫理専門調査会

資料5「第17回生命倫理専門調査会での主な意見(論点メモに沿って整理したもの)」より

 

<関連する主な議論>

・受精胚はいかに大切であるかという点や判断の枠組みも必要だが

局面(胚の滅失に関連する問題、胚の作成の問題、胚の利用・研究の問

題)に分けて考えることが必要ではないか。

・ES 細胞やクローン胚等のいくつかの重要な争点に即して考えることも

必要であり、この論点メモとは別に争点のメモが欲しい。

・議論としては、一応順序立て、枠組みは立てるけど、余り厳密に段階を分

けないで議論する方が議論が深まると考えている。

・セラピューティック・クローニング、着床前診断、商業化の問題などを

例にとってどういう問題があるのかを考えてみる。

・セラピューティック・クローニングの是非を論じることは問題整理のた

めに行うということか。

・具体的なテーマで議論して、また戻るということ。

 

平成 14年 7月31日 第19回 生命倫理専門調査会

■資料6「第17、18回生命倫理専門調査会での主な意見(論点メモに沿って整理したもの)」

 

前回配布の資料5の<関連する主な議論>と同様

 

■平成14年8月29日第20回生命倫理専門調査会で配布された、資料1「総合科学技術会議第19回生命倫理専門調査会議事概要(案)」3から6頁より

 

(石井議員)[]藤本先生にお尋ねしたいのですが、イギリスは不妊の原因

の研究や先天性疾患の成因の研究に、胚を作成することを認めているわけです

が、現在の日本の産科婦人科学会は容認しているのでしょうか。

(藤本委員)いいえ、容認していません。研究のための胚の作成は認められて

いません。いわゆる余剰胚等を利用する胚の研究は、受精後2 週間以内で認め

られています。

(石井議員)余剰胚を使って研究することはできるとおっしゃったのですか。

(藤本委員)はい、そうです。

(石井議員)そういう状況で、医学研究の見地から、さらにヒト胚の作成を認

めることの必要性があるかどうかがわかりません。作成を認めることによるメ

リットとしては、どういうことがあるのでしょうか。

(藤本委員)例えば先天性疾患の原因究明には、受精卵の遺伝子解析をするこ

とにより、ある遺伝子を持つもの、あるいは持たないものの鑑別ができますの

で、遺伝子疾患を持たない個体生成を可能にする一つの手段として、メリット

はあります。それ以外にも胚作成を目的としない受精現象の解明のための研究

などいろいろとあるかと思います。

(石井議員)それは遺伝性の疾患を持った人の受精胚を作るということですね。

(井村会長)資料5 によりますと、イギリスでは研究目的での胚の作成を認め

ているわけですが、実際には10 年ほどの間に、研究の目的で118 の胚が作

成されているということです。だからかなり制限しているのは間違いがないと

思います。これは、多分許可制でしょうね。

(高久委員)藤本先生のおっしゃっている事は、研究目的ではなくて診断の目

的ですね。

(藤本委員)はい。今言ったことは配偶子診断あるいは着床前診断に非常に近

いといいますか、そのものだと思います。

(井村会長)診断と、それからまた、例えば着床して子供ができる効率を高め

る研究にも使っているわけですね。

(藤本委員)そうですね。

(井村会長)どなたか、その辺のご意見ございますでしょうか。これはクロー

ン胚と違った問題で、いわゆる受精胚を研究目的で作っていいかどうかという

問題です。 これも一応議論しておかないといけない問題です。

(位田委員)先ほどの石井先生の質問と逆の聞き方になると思いますが、余剰

胚では研究できなくて、胚を研究目的で作らないとできない研究というのはあ

り得るのでしょうか。

(井村会長)それはあり得るわけです。例えば遺伝性疾患がどのようにして起

こるのかという過程を研究するとかです。恐らくかなり限定された範囲だと思

いますが、そういうことはあり得ると考えるわけです。

(位田委員)そうすると、胚を作るプロセスが問題であるのか、作った胚を研

究に利用することが問題であるのか、私にはよくわからないところがあります。

研究目的で胚を作るとするとデザインド・エンブリオと言った方がいいかと思

いますが、こういう胚を作りたいという目的で胚を作ることが可能になる、そ

こが重要なのでしょうか。

(井村会長)いや、そうではなくて、私の理解では、やはり病気の成因とか、

あるいは流産の成因とかを調べるために作るのだと思います。流産なんかも実

際は、我々が知っているよりも非常に多いようです。その成因、あるいは初期

発生の異常で起こってくる病気や遺伝子の異常で起こる病気の原因究明、それ

らが中心だろうと思います。いわゆるデザインして胚を作り、人間を作るとい

うことになれば、これはもう非常に大きな問題になるわけです。そうではなく

て、要するに試験管の中での初期発生段階での研究が中心だと思います。

(藤本委員)人の受精卵が着床するためには、構成細胞の数が100 個ほどに

増えて、いわゆる胞胚になることが必要です。受精卵が胞胚まで発育するかし

ないかは、いろいろな生物学的なファクターで左右されます。ですから、ある

染色体異常を持った受精卵(たとえば2 精子受精による3 倍体)を作り、その

受精卵が細胞分裂を何回起こすことができるのかということも研究の対象にな

ります。現実には人間の生体内では、広義の流産(自然淘汰)はものすごい頻

度で起きているわけです。この原因を究明する研究が一つあると思います。そ

のために特殊な受精卵を作成するということはあり得ると思います。

(石井議員)先ほど着床前診断という言葉が出ましたが、着床前診断そのもの

の是非というのは、これはまた別の論点としてあるということでしょうか、そ

れともこれと一緒に議論をするということになるのでしょうか。

(井村会長)一緒に議論していただいても結構だと思います。この着床前診断

の問題もやはり議論はしておかないといけない問題です。

(藤本委員)着床前診断はできた受精卵についても診断するのですね。そうで

はなくて、今のお話は受精卵を作るところでの問題ですね。非常に近いですが

分けて考える必要があり、議論はもちろん別にしなくてはいけません。

(井村会長)そうですね、今議論しているのはその前段階で、研究目的で受精

胚を作っていいのかどうなのかです。もしいいとするならばどういう場合にだ

け認められるのか、だめであればどういう理由でだめであるのか。そこは明解

にしておかないといけない問題です。

(黒田議員)遺伝的疾患がある場合に、胚を作りたいということですが、逆に

正常だけれども何か操作をして、それがどうなるか見たいということに発展す

るおそれは当然出てくると思います。その線引きをどうするかということが非

常に心配になってくると思います。どのようにお考えですか。

(藤本委員)それはご指摘のとおりだと思います。

(井村会長)だから、これはもし認めるとしても無条件にすべてを認めるので

はなくて、研究の目的を申請させた上で審査をして認めるということにしない

と、興味本位でいろんなことをやる人が出てきたら非常に困るわけですね。

(黒田議員)作るということが一つですけれども、作った後どうするかという

こともあります。例えば染色体異常をある方法で入れる実験が、当然考えられ

ます。当初の目的外に使われる可能性がありますので、何のために作るかという

ことプラスその後、どういう操作をするのかというのがともに重要であるよう

な気がいたします。

 

平成14年10月25日 第21回 生命倫理専門調査会

■平成15年4月24日第22回生命倫理専門調査会で配布された、資料2「総合科学技術会議第21回生命倫理専門調査会議事概要(案)」

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu22/siryou2.pdf

長いので抜粋しませんが、着床前診断は「遺伝子診断」という言葉で話題になっている(議事録9頁から20頁)。

着床前診断とヒト胚分割胚との関係が話題になったことについてはこちら

起草グループ(座長:位田委員・石井議員・勝木委員・高久委員・町野委員)発足。

 

■同資料「…第21回議事録概要(案)」20頁より

 

(井村会長)遺伝子診断の問題はかなり大事ですので、できればどなたか

専門家に一度来ていただいて話しを伺い、その上で、このヒト胚分割胚につ

いてどう考えるのか、そのときにできたらご意見を伺って決めたらどうか

と思っています。[…]

専門家の招聘はこの次の回に実現したが、着床前診断とヒト胚分割胚との関係が話題になったのはこのとき限り。

 

平成15年4月24日 第22回 生命倫理専門調査会

■資料3「着床前診断に関する説明資料(吉村泰典教授)」

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu22/siryou3-1.pdf

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu22/siryou3-2.pdf

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu22/siryou3-3.pdf

 

■平成15年8月1日第23回生命倫理専門調査会で配布された、資料1「総合科学技術会議第22回生命倫理専門調査会議事録概要(案)」

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu23/siryou1.pdf

26頁までが、着床前診断の話題。長いので別に分析したものはこちら

 

■同資料「…第22回議事録概要(案)23頁より

 

[吉村泰典教授からの説明を受けたあとの井村調査会長の発言として]

(井村会長)ありがとうございました。本当はもっと議論をしたいんですが、他の問題もあり  

ます。両論併記でも良いので起草委員会で議論して整理して頂いた上で、次の機会に  

議論するということでよろしいでしょうか。

この時点では、起草グループからの提案を受けてあらためて議論することになっていた。

 

平成15年8月1日 第23回 生命倫理専門調査会

■資料4「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方(素案)16頁から17頁(pdfファイルでは24頁から25頁)より

 

2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用

b .着床前遺伝子診断

○ 現在、ヒト受精胚の着床前診断は、体外授精において、4 細胞期又は

8 細胞期の胚から1 個又は2 個の胚性細胞を取り出して遺伝子検査や染

色体検査を行い、疾患遺伝子の有無等とそれによる誕生後の遺伝疾患発

現の可能性を判断する方法によって行なわれているものである。その結

果、胚性細胞に疾患遺伝子の存在等が認められた場合は、親の判断に基

づいて、胚性細胞を取り出した後の受精胚は廃棄されることがある。着

床前診断の結果、遺伝性疾患発現等の可能性がないと判断された場合に

は、もとの受精胚は子宮内に移植される。

1997 年までに、世界35 施設において、377 症例に対して着床前診断

が行われ、96 人の子が出生している。着床前診断は、米国、スウェー

デン、イタリアなどでは規制されていないが、フランス、イギリスでは

規制下で認められており、ドイツでは禁止されている。我が国では、日

本産科婦人科学会の会告が、重篤な遺伝的疾患を診断する目的に限り、

臨床研究として着床前診断を行うことを認めている。

 

■同資料「…考え方(素案)26頁から27頁(pdfファイルでは34頁から35頁)より

 

3 .ヒト受精胚の利用

a .医療目的での利用

着床前診断

○ ヒト受精胚の着床前診断には、@重篤な遺伝性疾患を有する子供を持

つことによる母親への精神的・肉体的負担を防止できること、A社会的

現実の問題として、遺伝病を持つ子供を出産する可能性がある両親に対

し、子を持つことを断念したり、養子縁組をすること以外の選択肢を提

供できること、B着床後、出生前診断の結果行われる中絶手術による母

体への大きな負担を避けることができることといった長所がある。

○ こうした利点は当事者の立場に思いを致せば単純に個人のエゴイズム

等と否定的にとらえ排除するのは難しいところであり、介護や養育に伴

う精神的乃至肉体的な重圧は、胚の尊重といった点と比較しても決して

軽んずることのできない重い現実である。したがって、一定範囲内で認

められると考える。

○ ただし、例えば、@疾患遺伝子の有無とは言え、ヒト受精胚をその遺

伝情報に基づいて選別することには相違ないし、A現在の技術では疾患

遺伝子等を有するヒト受精胚に限って排除することはできず、対象とし

た疾患遺伝子を持たないヒト受精胚が廃棄される可能性も、少ないなが

らあるといった課題もあるから、実施に当たっては慎重に判断する必要

がある。

○ また、遺伝性疾患や遺伝子異常を原因としないヒト受精卵の選別は、優

生主義につながり許されない。また、上に述べた遺伝性疾患や遺伝子異

常を排除するためにヒト受精胚の性別を調べてこれを行う場合もあるが、

十分な確度で疾患遺伝子による遺伝子診断を行うことが可能である場合

には、この方法は許されない。

○ 以上のように、着床前診断は母親の立場を考慮したやむを得ない方法

として考慮せざるを得ない医療であって、生命の価値による選択であっ

てはならない。遺伝性疾患、先天性疾患を持つ人への差別は決して許さ

れるものではなく、社会はこうした疾患を持つ人の人権に今後とも十分

な配慮をしなければならない。

 

平成15年8月27日 第24回 生命倫理専門調査会

■資料3−1「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方(案)16頁から17頁(pdfファイルでは24頁から25頁)より

 

 2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用

b .着床前遺伝子診断

[23回配布資料に同じ]

 

■同資料「…考え方(案)27頁から28頁(pdfファイルでは35頁から36頁)より

 

3 .ヒト受精胚の利用

a .医療目的での利用

着床前診断

○ ヒト受精胚の着床前診断には、@重篤な遺伝性疾患を有する子供を持

つことによる母親への精神的・肉体的負担を防止できること、A社会的

現実の問題として、遺伝病を持つ子供を出産する可能性がある両親に対

し、子を持つことを断念したり、養子縁組をすること以外の選択肢を提

供できること、B着床後、出生前診断の結果行われる中絶手術による母

体への大きな負担を避けることができることといった長所がある。

○ そうすると、ここで検討されなくてはならないのは、母親の幸福追求

権(憲法13 条)と胚の価値との競合関係をどのように考えるかにある。

そして、上に述べたような利点は当事者の立場に思いを致せば単純に個

人のエゴイズム等と否定的にとらえ排除するのは難しいところであり、

介護や養育に伴う精神的乃至肉体的な重圧は、胚の尊重といった点と比

較しても決して軽んずることのできない重い現実である。このことから

諸外国でも着床前診断は認められている。したがって、極めて重篤な遺

伝性疾患等一定範囲内で認められると考える。

○ ただし、例えば、@疾患遺伝子の有無とは言え、ヒト受精胚をその遺

伝情報に基づいて選別することには相違ないし、A現在の技術では疾患

遺伝子等を有するヒト受精胚に限って排除することはできず、対象とし

た疾患遺伝子を持たないヒト受精胚が廃棄される可能性も、少ないなが

らあるといった課題もあるから、実施に当たっては慎重に判断する必要

がある。

○ また、遺伝性疾患や遺伝子異常を原因としないヒト受精卵の選別は、優

生主義につながり許されない。また、上に述べた遺伝性疾患や遺伝子異

常を排除するためにヒト受精胚の性別を調べてこれを行う場合もあるが、

十分な確度で疾患遺伝子による遺伝子診断を行うことが可能である場合

には、この方法は許されない。

○ 以上のように、着床前診断はあくまでも母親の立場を考慮したやむを

得ない方法として考慮せざるを得ない医療であって、生命の価値による

選択であってはならない。遺伝性疾患、先天性疾患を持つ人への差別は

決して許されるものではなく、社会はこうした疾患を持つ人の人権に今

後とも十分な配慮をしなければならない。

 

■平成15年10月28日第25回生命倫理専門調査会で配布された、資料2「総合科学技術会議第24回生命倫理専門調査会議事録概要(案)19頁より

 

(石井委員)[]

3 点目は、質的に違う問題ですが。先ほど井村会長も中絶のことをおっしゃ

いましたが、この中に着床前診断のことも書いてあります。我が国は、確かに

中絶がたくさん行われています。けれども、諸外国においては出生前診断の結

果によって中絶することを正面から認めていますが、我が国はその点について

は、議論できない状態であり、正面からはそれを認めていない。その中で、着

床前診断をどう位置づけるかという観点がなく、受精卵の利用という形で、こ

れを位置づけているのはどうかと思います。

22回調査会での会長発言(起草グループからの提案を受けてあらためて議論を…)のあと、着床前診断が話題になったのは、この石井委員と町野委員(次の発言参照)とののやりとりのみ。

 

■同資料「…第24回議事録概要(案)20頁より

 

(町野委員)[]

第3 点目は、着床前診断の話ですね。その点は、位田委員から補足していた

だきたいと思いますが、起草グループとしては、これを正面から議論したと思

います。つまり、着床前診断が許されるかは、結局、「人の生命の萌芽」をそ

こでスクリーンするわけですから、それが許されるかは、まさに中絶の倫理的

な意味を引きずっているということです。そして、それが現在の日本の状態で

は、よくわけのわからない状態になっているために議論しにくいようになって

いる。これはあえて議論しなければならないと考えておりました。起草グルー

プも全部考えた。また、その点が伝わらなかったとすると、残念ですが、また

若干書き直さないといけないところではないかと思います。

22回調査会での会長発言(起草グループからの提案を受けてあらためて議論を…)のあと、着床前診断が話題になったのは、この石井委員(上記の発言参照)と町野委員とののやりとりのみ。

 

平成15年10月28日第25回 生命倫理専門調査会

■資料3「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方(案)9頁から10頁(pdfファイルでは17頁〜18頁)より

 

2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用

b .着床前遺伝子診断

[23回、第24回配布資料にほぼ同じ]

 

■同資料「…考え方(案)21頁から22頁(pdfファイルでは29頁〜30頁)より

 

3 .ヒト受精胚の利用

a .医療目的での利用

着床前診断におけるヒト受精胚の取扱い>

○ ヒト受精胚の着床前診断は、前に述べたとおり、ヒト受精胚から1 又

は2 個の細胞を取り出して疾患遺伝子の有無等の検査を行うものであり、

その結果によってはこれを子宮内に移植しないことになるが、@重篤な

遺伝性疾患を有する子どもを持つことによる母親の負担をなくすことが

できる、A遺伝病を持つ子どもを出産する可能性がある両親にも、遺伝

病のない子どもの出産を保障することができるため、実子を持つことを

断念する必要がなくなる、B着床後の出生前診断の結果行われる中絶手

術は母親に身体的・心理的に大きな負担をもたらすが、これを避けるこ

とができる、といった利点がある。

○ 両親、特に母親がこのようなことから着床前診断を受けることは、単

なる個人のエゴイズムであるとすることはできない。これも、憲法第13

条によって保障された個人の幸福追求権であると考えるべきである。し

かし、着床前診断による受精胚のスクリーニングは遺伝病の可能性のあ

るヒト受精胚の生命を絶つものであり、すでに述べた意味での「人の生

命の尊厳」を侵害しない範囲で認められるべきである。遺伝性疾患、遺

伝子異常を原因としないヒト受精卵の選別は、優生主義につながるもの

であり、許されない。両親の権利はここに限界を見出すのである。諸外

国でも着床前診断は認められているが、極めて重篤な遺伝性疾患などの

範囲に限られている。

○ しかし、現在の着床前診断の技術では、対象とした疾患遺伝子を有す

るヒト受精胚だけを排除することはできず、疾患遺伝子を持たない胚も

廃棄される可能性も少ないながら存在する。許容される着床前診断の実

施にあたっても、このような可能性を極力排除することが求められてい

るのであり、伴性遺伝を排除するために、受精胚の性別を調べて一律に

片方の性の受精胚を廃棄するようなことは許されるべきではない。

○ 以上のように、着床前診断はあくまでも両親、特に母親の立場を考慮

した、やむを得ない方法として考慮せざるを得ない医療であって、生命

の価値による選択であってはならない。遺伝性疾患、先天性疾患を持つ

人への差別は決して許されるものではなく、これからも、社会はこうし

た疾患を持つ人たちの権利と福利に十分な配慮をしなければならない。

疾患を持った子どもは不幸であるから、そのような子どもの出生を防

止する必要があるという論理によって出生前診断を正当化することは、

障害を持つ人は不幸な存在であるということを前提にするものである。

このような「生まれざりせば良かりしものを」という考え方は、まさに

障害者の差別を前提にしたものといわざるをえない。着床前診断を最終

的に両親の決定にかからせる本報告書の立場は、これとは異なることは

いうまでもない。

○ ヒト受精胚のスクリーニングである着床前診断の倫理的許容性は、胎

児のスクリーニングを行う人工妊娠中絶の法的許容性の延長において考

えられなければならない。このことは、胎児とヒト受精胚との関係につ

いて述べたところである。

現在の産科の医療現場の実態として、胎児に重大な障害があるときに

は、母胎保護法14 1 1 号の「経済的・身体的条項」によって中絶手

術が行われている。成長の段階においては胎児以前のところにあるヒト

受精胚について、これより狭い範囲で着床前診断を行うことは許される

と考えられるであろう。

 

平成15年11月28日 第26回 生命倫理専門調査会

■資料2「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方(案)9頁(pdfファイルでは17頁)より

 

2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用

b .着床前遺伝子診断

[25回配布資料に同じ]

 

■同資料「…考え方(案)21頁から22頁(pdfファイルでは29頁〜30頁)より

 

3 .ヒト受精胚の利用

a .医療目的での利用

着床前診断におけるヒト受精胚の取扱い>

[25回配布資料にほぼ同じ]

 

平成15年12月12日 第27回 生命倫理専門調査会

■資料2「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方(案)9頁より

 

2 .ヒト受精胚を用いた科学研究と医療応用

b .着床前遺伝子診断

[25回、第26回配布資料に同じ]

 

■同資料「…考え方(案)21頁から22頁より

 

3 .ヒト受精胚の利用

a .医療目的での利用

着床前診断におけるヒト受精胚の取扱い>

[25回配布資料にほぼ同じ]

 

    資料3「委員個人意見書暫定版」

着床前診断に言及している委員:

島薗委員の意見→6

安易な許容の方向性を示していると批判。

町野委員の意見→10頁〜11

起草グループのメンバーでもある委員のものであり、案が修正される段階で削除された文章もこのなかには登場している。

 

 

以上

 

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