概念規定

 

§1. (1) この連邦法で言われる「医療によって補助される生殖」medizinisch unterstuetze Fortpflanzung (以下、医療補助生殖:堂囿)とは、性交を通じてとは別の方法で妊娠をもたらすために医学的方法を適用することである。

 

(2) 第一項で言われる医療補助生殖の方法とは特に以下のものである。

1. 女性の生殖器へ精子を注入すること。

2. 女性の身体の外で卵子と精子とを受精させること。

3. 女性の子宮ないしは卵管へ発育能力のある細胞を注入すること。

4. 女性の子宮ないしは卵管へ卵子ないしは精子をともなった卵子を注入すること。

 

(3) 受精卵およびそこから成長した細胞が発育能力のある細胞と見なされうる。

 

 

認められること

 

§2. (1) 医療補助生殖は、婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルにおいてのみ認められる。

 

(2) この生殖は今後、次のような場合にのみ認められる。すなわち、学問および経験の状況から見て、性交を通じた妊娠をもたらすためのあらゆる他の可能な、そして要求しうる治療では成果がなく、見込みもない場合である。

 

§3. (1) 医療補助生殖のためには、婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルの卵子および精子だけを用いることが許される。

 

(2) ただし§1-(2)-1による方法のためには、婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルの夫に生殖能力がない場合、第三者の精子も用いることが許される。

 

(3) 卵子ないしは発育能力のある細胞は、これらを提供した女性についてのみ用いることが許される。

 

資格

 

§4. (1) 医療補助生殖は、自律的な職業行為の資格をもつ婦人科学および助産の専門医によってのみ、なすことが許される。

 

(2) 医療補助生殖は、これを受けることを許された病院においてのみ、なすことが許される。ただし§1-(2)-1による方法は、婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルの精子が用いられるという条件で、婦人科学および助産の専門医が開く診察所でもなすことが許される。

 

§5. (1) 病院の医療長および専門医は、§1-(2)-1による方法を婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルの夫の精子を使ってなすことを州政府首相に届け出る意図をもつ。届け出については、申請にもとづき追認される。

 

(2) 他の医療補助生殖を行おうと意図している病院の医療長は、州政府首相のもとへその許可を申請しなければならない。許可は次の場合にのみ与えられる。すなわち[適切な]人材および設備にもとづき、医学および医療上の経験の状態から見て医療補助生殖が保障されている場合である。さらに、十分な心理学的な助言、および心理療法的な配慮が与えられなければならない。

 

(3) 州政府首相は、許可を与えた前提条件がもはや満たされていない場合、その許可を撤回しなければならない。さらに首相は、次の場合に、許可を取り消す、あるいは、婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルの精子を使った§1-(2)-1による方法を禁止しなければならない。すなわちこの連邦法の諸規定が重大な意味で、あるいは警告にもかかわらず繰り返し破られた場合である。

 

協力の自発性

不利益の禁止

 

§6. (1) いかなる医師も、医療補助生殖を実施することないしはそれに協力することを義務づけられない。このことは、看護専門職として、医療技術職として、そして救急治療職として働く人々にも当てはまる。

 

(2) この連邦法の諸規定にかなった医療補助生殖をなした、それに協力した、あるいは、そのような医療補助生殖をなすこともしくはそれに協力することを拒否したという理由で、誰も不利益を被ってはならない。

 

助言

 

§7. (1) 医師は医療補助生殖をおこなう前に、婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルに、その方法について、そして同じく、治療が女性や望まれている子どもに与えうる結果および危険について教え、助言しなければならない。

 

(2) 医師は、婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルが拒否しないかぎりで、彼らが心理学的助言および心理療法的相談を受けられるようにしなければならない。

 

(3) 医療補助生殖に先立ち、内縁関係にあるカップルの場合にはすべてのケースで、そして婚姻カップルの場合には第三者の精子が用いられるケースに限って、同意(§8)がもたらす法的な結果について裁判官ないしは公証人を通して詳細に協議しなければならない。

 

同意

 

§8. (1) 婚姻カップルの場合、医療補助生殖は、彼らの文書上の同意によってなされうる。内縁関係にあるカップルの場合、同意は、法的な記録ないしは公証人文書という形で与えられなければならない。第三者の精子を用いる場合、この方法に対する同意はつねに法的な記録ないしは公証人文書を必要とする。

 

(2) 行為能力のない人はその同意を表明することはできない。制限されたかちで行為能力をもつ人は自らの同意を自分で表明しなければならない。同意はその人の法的代理人の承諾を必要とする。承諾についても、(1) の手続規定が当てはまる。

 

(3) 表明は以下のことを含まなければならない。

1. 医療補助生殖の実施に対する明確な同意(承諾)。

2. 必要な場合には、第三者の精子を用いることに対する同意(承諾)。

3. 氏名、必要な場合には、女性、そして彼女の夫ないしは内縁の夫の一族名、誕生日および生誕地、国籍および居住地。

4. 医療補助生殖がなされうる期間。

 

(4) 同意は、医師に対しては、[同意した]女性によって、そして[同意した]男性によって、精子ないしは卵子を女性の身体へ注入する時点まで取り消されうる。女性の身体外で卵子を精子と受精させる[体外受精の]場合には、女性によっては、発育能力のある細胞を彼女の身体に戻すまで、しかし男性によっては、もっぱら卵子を精子と受精させるまで、同意は取り消されうる。取り消しは一定の形式をもつ必要はまったくない。医師は取り消しを文書のかたちで残さなければならないし、これについては求めに応じて確認書を提示しなければならない。

 

精子、卵子、そして発育能力のある細胞の使用、検査、診察

 

§9. (1) 発育能力のある細胞は、医療補助生殖とは別の目的のために使用されてはならない。この細胞が検査および診察の対象となるのは、このことが医学および医療上の経験の状態から見て、妊娠をもたらすのに必要な場合のみである。

 

(2) 生殖細胞系列に対する干渉は認められない。

 

(3) いろいろな男性の精子を混ぜたものは、医療補助生殖のために用いられてはならない。

 

§10. 女性の身体外で卵子を精子と結合させるさいには、医学および医療上の経験の状態から見て、周期内において、有望かつ要求可能な医療補助生殖に必要な数だけの卵子を受精させることが許される。

 

第三者の精子

 

§11. 第三者の精子を用いた医療補助生殖は、許可を受けた病院(§5-(2))においてのみ実施することが許される。第三者は医療補助生殖のために自らの精子を、そうした病院にだけ提供することが許される。病院は第三者およびその精子を、それを用いるまえに検査しなければならない。

 

§12. 第三者およびその精子の検査では、次のことが確かめられなければならない。すなわち、医学および医療上の経験のその時点での状態から見て、精子には生殖能力があり、これを用いることで女性や望まれている子どもに健康上の危険が生じえないということである。

 

§13. (1) 第三者の精子は、医療補助生殖のため次のような場合にのみ用いることが許される。すなわちその第三者がそうした使用および提供に対して、§20に関する情報について、病院と文書の上で同意した場合である。その同意はつねに、実行力をもって撤回されうる。撤回にはいかなる決まった形式も必要ない。病院は撤回を文書のかたちで残さなければならないし、これについては求めに応じて確認書を提示しなければならない。

 

(2) 第三者は、医療補助生殖を目的としたその精子を、つねに同一の病院でのみ提供することが許される。病院は提供者にこのことを個別的に知らせなければならない。

 

§14. 第三者の精子は最高でも三組の婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルに対して使用することが許される。

 

§15. (1) 病院は精子を提供する第三者について、以下のことを記録しなければならない。

1. 氏名、必要な場合には、一族名、誕生日および生誕地、国籍および居住地。

2. 彼の親の氏名。

3. 精子の提供時期。

4. §12にしたがって実施された検査の結果。

 

(2) 病院はさらに、どのような婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルに対して精子が提供されたのかについて、記録しなければならない。

 

§16. 医療補助生殖のための精子提供は有償の法律行為の対象であってはならない。

 

保存

 

§17. (1) 医療補助生殖のために用いられるべき精子および卵子、同じく発育能力のある細胞は最高でも一年間のみ保存することが許される。保存はその時々の学問および技術の状態に適っていなければならない。

 

(2) 発育能力のある細胞は、それを提供した人にも、他の人や施設にも自由に使わせてはならない。同じことは、医療補助生殖のために使用されるはずの、ないしは使用されるはずだったが未使用のままの精子や卵子についても当てはまる。

 

記録および報告

 

§18. (1) 医療補助生殖を実施する医師は次のことを文章の形で記録しなければならない。すなわち、女性、彼女の婚姻関係にある夫ないしは内縁関係にある夫、同じく、これとは分けて、必要な場合に用いられる第三者の

1. 氏名、必要な場合には一族名。

2. 誕生日および生誕地。

3. 国籍。

4. 居住地。

 

(2) さらに医師は次のことについて書面上の記録に残さなければならない。すなわち医療補助生殖を実施するための条件が満たされていること、治療の経過およびその期間、同じく医学および医療上の経験の状態から見て、望まれる子どもの妊娠、誕生、そして健康な発育にとり重要な状況である。

 

(3) これらの記録、そして§8-(1) および (2) 同じく§13-(1) に従った同意・承諾表明は、病院ないしは診療所の専門医によって30年間にわたって保管されなければならない。この期限が終了したのち、ないしは期間終了前に病院ないしは診療所が解散した場合には、この書類は州政府首相に引き渡されるべきである。

 

§19. (1) 医療補助生殖が実施される病院の医療長、そして自らの診療所において§1-(2)-1による方法を婚姻カップルないしは内縁関係にあるカップルの精子を使ってなす専門医は、毎年、おそくとも次の暦年の331日までに、州政府首相に対して、その暦年における関連活動や経験を報告しなければならない。

 

(2) 健康・スポーツ・消費者保護連邦大臣は司法連邦大臣と一致して、命令を通じて報告の内容および形式を、健康および法政治的視点、そして同じくデータ保存を考慮して、より詳細に定めなければならない。その報告はとりわけ、用いられた方法の種類、それを用いる頻度、結果についての情報、そして同じく、第三者の精子および発育能力のある細胞の保存および使用についての情報を含まなければならない。

 

情報

 

§20. (1) 精子を提供する有第三者についての記録は、内々に扱われるべきである。

 

(2) 第三者の精子で産まれた子どもに対して、その求めに応じ、14才に達したのちには、§15-(1) に関する記録が公開され、ここから情報が与えられるべきである。法的代理人ないしは養育権利者は、子どもの幸せのために、医療上理由のある例外においては、後見裁判所による許可をもって、上記のことをなすことができる。州内に後見裁判所がない場合、裁判所による許可に対しては、病院を管轄地域にもつ地区裁判所が権限を有する。

 

(3) 公開および情報に対する権限は、裁判所および管理官庁に帰属する。ただしそれは、このことがこの連邦法を実施するさいにそれらに課せられた義務を果たすのに必要な限りにおいてである。

 

仲介の禁止

未訳

 

罰則規定

未訳

 

 

(堂囿俊彦 仮訳)

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