藪と言われて

インターネットの人気掲示板「2ちゃんねる」で「ヤブ医者」などと中傷した匿名の書き込みを、管理者が削除しなかったとして、都内の動物病院と院長が掲示板を管理する西村博之氏を相手に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が 2002年12月25日、東京高裁であった。久保内卓亜裁判長は計400万円の支払いと書き込みの削除を命じた1審の東京地裁判決を支持、西村氏の控訴を棄却した。 (時事通信 2002年12月25日(水) )

上越市営の公衆便所に,犀潟の池田は藪医者だと落書きがあっても,私は上越市を訴えない.たしかに私は藪医者だが,その事実だけが訴えない理由ではない.上越市には何の落ち度もないからだ.落書きは便所の壁の本来機能の一つである.税金を投入して作った壁が,本来の機能を果たしているのだから,訴えるどころか,評価されるべきである.

2チャンネルの書き込みは便所の落書きと同じである.それ以上のものではない.便所の落書きは便所に行かないと見られないが,2チャンネルだと自宅の机の上で眺められるので人気があるだけだ.どの書き込みを真実と考えようと,真っ赤な嘘と決め付けようと,すべて読む人の判断である.そこには何の分け隔てもない,真に自由な世界がある.その自由な世界を地道に運営している奇特な西村氏が何で裁判で負けなくてはならないのか.

私はBSEパニックの最中,牛肉を食べろと主張する悪魔の医者として2チャンネルでさんざん罵倒された経験を持つ.しかし,私は意に介さなかった.2チャンネルの書き込みは便所の落書きに過ぎないと知っていたからである.私は便所の落書きを一々消しに回るほど暇人ではないし,そんな不毛な作業を他人に強要するほど馬鹿でもない.だから西村氏を訴える気などさらさらなかったし,今回の裁判では,むしろ,西村氏に同情する.何しろ,西村氏が相手にしなければならないのは,自分は本当に藪医者なのかもしれないと,謙虚になることすらできない人間なのだから.

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