兎を追わず,鳥を落とす

拙著を買っていただいた方から,本の感想とともに,痴呆にならないために,日常生活上,何かできることはあるのかという切実なご質問に対する回答を下に紹介する.

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新潟の池田です.早速拙著をご購入いただいた上に,過分なご評価をいただき,恐縮に存じます.さて,牛の病気よりも本業の,人間の病気についてのお尋ねですが,私自身,癌で死ぬか,癌で死なずに生き延びれば,あとは痴呆になるだけだと思い為しております.

その理由は簡単で,確率論であります.癌と痴呆は多い病気の両横綱であります.癌は死因の第一位,それをしぶとく免れた人が痴呆になるのが,世の常というもの.私がお世話させていただいている方々も,ご多分に漏れずそのコースを経て私の所に辿り着いてくださって,今の御縁があるわけです.

そういった方々を治すこともできずにただ手をこまねいている私に,名案などあろうはずもなく,せめて,自分自身も,癌で死ななければ痴呆になるとの因果応報を覚悟しようと,柄にもない謙虚さで,痴呆症状に対して何もしてあげられない後ろめたさを埋め合わせているというわけです.

ということで,本を売りつけておきながら,何の回答もなく,誠に申し訳ありませんが,癌になったら,死ぬと嘆き,生き延びれば,痴呆になると心配する,そうやって二兎を追うよりも,癌になったら痴呆になる前に死ねて儲け物,癌にならないうちは,痴呆を心配するまでに生き延びられて儲け物と,ニ鳥の果報は寝て待てが,ずっとお得と存じます.
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