虎の穴から

PCFMネット(プライマリケア・家庭医療の見学実習・研修を受け入れる診療所医師のネットワーク)に参加なさって,医学生の研修を受け入れていらっしゃる名古屋の亀井三博先生のところにおじゃまして,13人の新進気鋭の医学生から,神経内科診療の議論を通して,千本ノックを受けた感想です.
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そこは,臨床虎の穴そのものでした.いつもお世話になっている田坂佳千(たさかよしかず)先生が、自分のことを万年研修医といつもおっしゃる意味が、遅蒔きながらようやくわかりました。単に謙遜ではないのです。もっと積極的に、学ぶ仲間として認めてもらいたい、年齢だけで年寄り扱いしないで、自分にも教えてもらいたい、そういう願いを込めた言葉なのですね。そんな、当然のことが、亀井道場、別名虎の穴in 名古屋で、学生さんに手合わせしてもらってようやくわかりました。道場主からいきなり突きつけられたのは、ひどく挑戦的な課題でした.

霞ヶ関で役人をやっている男が筋萎縮性側索硬化症で13年間呼吸器をつけていらっしゃる患者さんと、その家族に、初対面で、どう接するか。すでに診断は確定しまっている、新たな治療法を提案できるわけでもない。そんな条件下で、たった2-3時間しか顔を合わせない医者との出会いをどう評価してもらえるか。

そんな厳しい立場に置かれた私を取り囲むのは,主治医、腕利きの訪問看護師、膨大な数の医師・患者関係を知り尽くしている主治医の奥様,そして,何よりも怖いのは,当たるべからざる勢いだった23年前の自分をはるかに凌ぐ勢いで、休日を潰してまでやってきた13人の学生さん、その中には、患者さんのお宅を訪問してすでに顔なじみになっている方もいる。

こんな挑戦的な課題を用意していただけたのも,TFCの御縁でした.こいつなら何とかするだろうと,道場主が見込んでくださったうれしさ.そして、“呼吸器内科の亀井先生が,どうして筋萎縮性側索硬化症の患者さんを診ているのか,不思議に思っていたけれど,その意味がよくわかりました”と、学生さんがさりげなく言ってくださったのが、合格点の印と勝手に決めました。
その後のClinical Problem Solvingのセッションでも、学生さんの気迫と熱意の合間に道場主の鋭いコメントも飛んでくる光景は、千本ノックというか(もちろんノックを受けるのが私)、U-23のシュートの嵐を受ける引退したゴールキーパーというか(もちろん受けるのが私)。普段は書類の山の谷間をうろうろしているだけの私には、大変な稽古になりました。
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