アビガン,ランセットを逃す
瞳孔散大後の蘇生を見ているようだ.いや,こんな箸にも棒にもかからない腐った研究は,そもそも生きてはいなかったのだ.この,初めから「死に体」だった「観察研究」とやらも,初めから特定臨床研究としていれば,承認申請データパッケージに入れることができたかもしれないのだ.
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アビガンの観察研究で中間報告 新型コロナの入院患者軽症・中等症で7割、重症で4割が改善 ミクスオンライン 2020/05/27
(前略)
観察研究であることの意義
本来、観察研究は臨床現場の診療や経過の成り行きをありのままに観察することで、有効性・安全性を検証する目的で実施される。これに対をなすのが、治験に代表される介入研究で、研究対象となる治験薬などの有効性・安全性を検証することが目的となる。介入研究のなかでも、プラセボ群を対照群に置いたランダム化比較試験(RCT)は、エビデンスレベルが高くなる。一方で、観察研究は、患者背景や併用薬など多くのバイアスを含むため、エビデンスレベルは低い。そのため、当然のことながら、承認に際しては介入研究、特にRCTを実施することがゴールドスタンダードだ。
ただ、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大が国家的な緊急事態となるような、緊急時は救命が第一となる。プロトコルの遵守が難しいなかで、観察研究の意義は大きい。ただ、研究結果を慎重に解釈する必要があることは論を待たない。今回の解析結果について言えば、対照群がなく、特にすでに有用性が報告されているシクレソニドが4割以上投与されている点も考慮する必要がある。現時点で科学的根拠を判断できないのは、観察研究を実施する目的からも明らかだ
エビデンスに基づいた確固たる新薬を日本からいち早く発信するためにも、6月末にも終了が予定される治験結果の公表が待たれている(注:誰が待ってるって??)。(望月英梨)
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もし,承認申請データパッケージに入れることができなくても,ランセットの論文にはなっただろう。惜しいことをした。
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WHO 抗マラリア薬・ヒドロキシクロロキンの臨床試験を一時中断 ミクスオンライン 2020/05/27
WHO(世界保健機関)は5月25日、抗マラリア薬・ヒドロキシクロロキンの新型コロナウイルス感染症の有用性を検証する臨床試験を一時中断すると発表した。ヒドロキシクロロキン、もしくはクロロキンの投与により死亡率が上昇し、心室頻拍がみられるとの論文が医学誌「The LANCET」に22日、掲載されたことを踏まえたもので、安全性が確認されるまで試験を中断する考え。

論文では、新型コロナウイルス感染症で入院する患者9万6032人を、治療群1万4888人、対照群8万1144人にわけ、治療効果を検証した。治療群は、クロロキン単独投与が1868例、ヒドロキシクロロキン単独投与が3016例、クロロキンとマクロライド系抗生物質の併用が3783例、ヒドロキシクロロキンとマクロライド系抗生物質の併用が6211例だった。登録された患者のうち、11.1%(1万698例)が死亡した。複数の交絡因子を踏まえて解析した結果、死亡率は対照群の9.3%だったのに対し、ヒドロキシクロロキン単独群では18.0%(ハザード比:1.335、95%CI:1.223-1.457)ヒドロキシクロロキンとマクロライド系抗生物質の併用群では23.8%(HR:1.447、1.368-1.469)、クロロキン単独群では16.4%(HR:1.365、1.218-1.531)、クロロキンとマクロライド系抗生物質の併用が22.2%(HR:1.368、1.273-1.469)で、いずれも有意な入院中の死亡率の上昇がみられた。

また、入院中の心室性不整脈が対照群の0.3%に対し、ヒドロキシクロロキン単独群では6.1%(HR:2.369、1.935-2.900)、ヒドロキシクロロキンとマクロライド系抗生物質の併用群では8.1%(HR:5.106、4.106-5.983)、クロロキン単独群では4.3%(HR:3.561、2.760-4.596)、クロロキンとマクロライド系抗生物質の併用が6.5%(HR:4.011、3.344-4.812)で、関連性が認められた。研究グループは、「マクロライド系抗生物質の投与の有無によらず、ヒドロキシクロロキン/クロロキン投与のベネフィットは認められなかった」と結論づけている。
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Mehra MR, Desai SS, Ruschitzka F, Patel AN. Hydroxychloroquine or chloroquine with or without a macrolide for treatment of COVID-19: a multinational registry analysis. Lancet https://www.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(20)31180-6.pdf

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