幹細胞の治験に備えて

下記の記事は,MedWaveから。従来の化成品と違って、幹細胞の治験対象疾患は幅広い。これからどんどん、どの分野にもやってくる。だから,こんな申請はうちに来ませんようにって、神様に祈っている場合じゃない.

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Reneuron社、脳卒中対象に2006年半ばに成人幹細胞製剤の治験申請へ
英ReNeuron社は、成人幹細胞製剤ReN001の脳卒中を対象にした臨床試験の申請を2006年半ばに米国で行い、2006年末には試験を開始する計画だ。同社の経営最高責任者であるMichael E Hunt氏(写真左)と最高科学責任者であるJohn Sinden氏(写真右)がこのほど明らかにしたものだ。すでに米食品医薬品局と治験申請に関する事前打ち合わせを済ませており、前向きの返答を得ているという。また、2006年第1四半期には臨床試験に使うためのGMP適合製造施設が完成するという。試験が開始されれば、脳卒中に対する初めての成人幹細胞の臨床試験となる。

 ReN001はマウスの脳卒中モデルを用いた実験で組織学的に回復していることが確認できている。また、モデルマウスで接着されたテープをはがすまでの時間を指標として運動神経の機能を調べたところ正常マウスと同等レベルに回復することを確認している。また、前臨床試験で腫瘍形成を引き起こさないことも見出している。

 同社のReN001は自己の幹細胞を移植するのではなく、c-mycERと呼ぶ技術を用いて、他家の成人神経幹細胞を移植するものだ。c-mycER技術は、まず単離した幹細胞にc-myc遺伝子とエストロゲン受容体遺伝子を融合した遺伝子をウイルスベクターを用いて導入する。導入された遺伝子を抗体を用いて選別したあと、融合遺伝子から生成される融合受容体にのみ結合して細胞増殖を活性化する4ハイドロキシタモキシフェンを加える。増殖後、4ハイドロキシタモキシフェンを取り除き、幹細胞を安定化させるものだ。得られた幹細胞は脳卒中後の回復を目的として、針を使って脳卒中が発生した場所の近傍に投与する。最初に幹細胞を単離する際に主要組織適合抗原(MHC)のクラス1、クラス2の発現が極めて低いものを選別しており、他家移植でも幹細胞に対する免疫反応は誘導されないという。

 ReNeuron社はc-mycER技術の特許を基に、幹細胞療法に強みを持つStemCell社と2005年7月に特許のクロスライセンスに成功しており、成人幹細胞製剤の開発に特許上の障害はないとしている。

 ReNeuron社は脳卒中以外にもハンチントン舞踏病、1型糖尿病、パーキンソン病、眼の領域の疾患で成人幹細胞製剤の開発に取り組んでいる。また、医薬品の評価に利用するための肝臓の細胞株の開発も進めている。(横山勇生)
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