スタンプラリーの意義を問う

スタンプラリーは和製英語だそうな.しかし,その言葉とともに概念が輸出され,海外でもぼちぼちで紹介されている(例:在アトランタ日本国総領事館).
紀平氏とは一緒に働いたことがある.彼は医者に当てつけを言うような人物ではない.しかし,医者には耳が痛い話だ.「専門医資格が患者の幸せに貢献しているか?」この切実な臨床疑問に対して正直に答えようとする勇気を持った医者には,私自身を含めて出会ったことがない.いや,実は,勇気なんかこれっぽっちも必要ないのだ.なぜなら,臨床研究なんてやらなくたって,「専門医資格が貢献するのは学会運営に対してだけであって,患者の幸せになんかこれっぽっちも貢献していない」ことは誰の目にも明らかだからだ.
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患者アウトカムの重視を - 厚労省・紀平薬事企画官、専門・認定制度の乱立受け 薬事日報 2017年7月27日
研修の「目的化」には懸念
 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課の紀平哲也薬事企画官は、特定領域の知識・技能を習得した薬剤師を認定する「認定薬剤師制度」や、専門領域に精通した薬剤師を認定する「専門薬剤師制度」が数多く存在している状況について、「それぞれがきちんとした制度になっていれば悪いものとは思わない」との認識を示す一方で、「シールだけを集める」など、単に学会に参加したり、研修を受けることが「目的化してしまう」ことを問題視。今後の認定制度には、「単なる学習の成果ではなく、どのような患者アウトカムにつながるか」といったエビデンスが「求められるようになる」との考えを示した.本紙の調査によると、認定薬剤師制度は28団体35種類、専門薬剤師制度は6団体10種類に上り、計45種類にも及ぶことが分かっている。薬剤師の活動範囲の広がりに伴い、多くの専門・認定薬剤師制度が立ち上がったことで、乱立状態の実態が浮き彫りとなったものの、質の担保を懸念する声も上がっている。(後略)
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弘法大師とともに歩く.遍路にはその行為自体に意義がある.その意義は遍路を歩む本人が,歩みながら,そして歩んだ後に見いだす.「専門医資格取得」という名のスタンプラリーの意義も同様なのだろうか.当然のことながら,「専門医資格取得」という名のスタンプラリーの勝者は「ベテラン医師」である.一方で医者と畳は新しいほど良いというエビデンスがある.そして,人は歳を取るというどんな名医も絶対に抗えない事実がある.

参考記事
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米国の専門医認定費用〜筆記試験1,846ドル、口頭試験1,694ドル、年間維持費用257ドル Biotoday 2017/8/3
24のAmerican Board of Medical Specialties (ABMS) による専門医認定(board certification)を得るための筆記試験への2017年の米国医師の支払額は平均1,846ドル、14のABMSが要件としている口頭試験は平均1,694ドル、19のABMSが設定している更に細かい分野の試験費用は平均2,060ドル、認定維持の費用は年間平均257ドルでした。

非営利組織であるABMSの2013年の収支を調べたところ、収入が2億6300万ドル、支出が2億3900万ドルであり、収入が支出を2400万ドル上回っていました。米国の医師の多くは専門医認定のための費用が高いことに不満を持っています。医師に相当な負担を強いている専門医認定の費用対効果や価値を調べる研究が必要と今回の解析の著者は言っています。

Study Examines Fees, Finances of Medical Specialty Boards
Fees for Certification and Finances of Medical Specialty Boards. JAMA. 2017;318(5):477-479. doi:10.1001/jama.2017.7464
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