金の問題だけじゃねえだろ

そもそも効かねえ薬が一旦承認されちまったら,そのリスクだけに晒されちまうってことが問題の本質なんだよ.そういう例はいくらでもあるだろ.急性膵炎のリスクが明らかな,ただの血糖降下薬とか,第4相を絶対やらないeteplirsenとか.
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solanezumabがサブグループ解析で見切り承認されていた場合の出費は100億ドル BioTodayニュースレター 2017年5月5日
去年11月に第3相試験失敗が発表され、承認申請されないことになったEli Lillyの抗Aβ抗体solanezumabが先立つ2つの失敗した第3相試験をまとめたサブグループ解析で示された有益効果に基づいてもしFDAに承認されて売られていたとしたら米国は少なく見積もって同剤に過去4年間におよそ100億ドルを費やしたと推定されました。以下は、この解析が記されているNEJM報告の抜粋です。

・solanezumabは脳に蓄積するAβペプチドの除去を促す抗体。
・2016年11月、Expedition3試験の結果、(中等度認知症だけでなく)軽度認知症患者の認知機能低下もsolanezumabで遅らせれないことが判明。
・その後同剤開発会社Eli Lillyはアルツハイマー病による軽度認知症の治療として同剤の承認申請はしないと発表。
・Expedition3試験に先立つExpedition1試験とExpedition2試験をまとめた2012年時点の解析では特定のサブグループ・軽度アルツハイマー病患者に同剤が有益なことが示唆されており、もしExpedition3試験なしで同剤を米国FDAが承認していたらどうなっていたか?
・患者1人あたりの同剤の1年間の使用料を1万ドルとして米国の軽度アルツハイマー病患者の10人に1人が同剤を使ったとしたら過去4年間の同剤への出費はおよそ100億ドル($10 billion)。値段がもっと高かったり、販促でより早くより多く普及したならその何倍にもなったかもしれない。
・決定的に不足している治療を早く承認する制度をFDAは用意しており、必要に応じて新しい治療を届けることは不可欠であるが、効果の裏付けを後回しにして薬を承認することは新しい治療の進歩とはいわない(advancing the development of the next generation of therapeutics should not be confused with approving drugs without first acquiring appropriate evidence that they work at all)。
The Failure of Solanezumab - How the FDA Saved Taxpayers Billions. N Engl J Med 2017; 376:1706-1708May 4, 2017DOI:10.1056/NEJMp1701047
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