研究者の社会貢献

費用対効果評価の限界をわかりやすく解説してくださっている。研究者の社会貢献のお手本である。こうありたいものだ。
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【寄稿】費用対効果評価の課題と今後の方向性(2)  ICERの評価は台風予想のようなもの  東京理科大経営学部 坂巻弘之教授

 前回はICER(増分費用効果比)を用いてイノベーションを評価することの難しさを説いた。これを台風の進路予想図に置き換えるとわかりやすいのではないだろうか。例えば、架空の台風進路予想図であるが、予想Aはある予報機関(例えば気象庁)の進路予想でも、将来は不確実なために予報円で予想されている。これがいわば感度分析である。気象庁の説明にもあるように、台風は予報円の中心を通るわけではない。同じことがICERにもいえ、ベースライン分析のICERが正しいわけではない。薬価調整は、予想円の中心で価格を決めようとする乱暴なやり方であろう。

 さらに別の予報機関(例えば米国の台風警報センター)では、予想の前提が異なり、全く別の予想Bになることがある。これがシナリオ分析である。予想Bにも、予報円(感度分析)が存在している。

 現在の費用対効果評価の議論は、どれか一つの点や、あるいは複数のシナリオを足して割って薬価を決めようとするものである。一般論としての保険償還の是非についての議論は可能であるが(台風に備えるかどうかの判断のようなもの)、価格設定には向かないことが理解できるのではないだろうか。ただし、現実には、保険償還可否の資料としての利用も困難である。(以下略)
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