学会のリストラ
利 権の塊である学会をリストラしようってんだから、総論賛成各論反対そのもので、絶対できっこないと誰もが思っている。それでも一応こういう討論会が開催さ れるってことは、やっぱり会員各人の負担、不満がそうとうひどくなっていることを示している。下記の記事では、心不全学会から「今は学術集会を開催するた めの資金集めに苦労する時代になった」と正直な泣きが入っているところが注目される。もはや製薬企業にたかって学会を運営できる時代ではないのだ。

循 環器系はたしかに乱立が一番ひどいが、他の診療領域の学会も同様の問題を抱えている。しかし、問題解決の糸口は全く見えない。何しろこうやって集まってい るお偉いさん方自身がそれぞれの学会の利権を代表しているからだ。交渉成立の目処どころか、本気で話し合いを始めることさえも不可能な状態だ。それは会員 各人もわかっている。だから会員個人が自分のキャリアパスの変化に合わせて自分で所属学会をリストラしていくことになる。ほとんどの場合、実際に学会に入 れば、何のメリットもないことは一目瞭然だから、今後も個人レベルでの学会のリストラはどんどん加速するだろう。私の場合も、老い先短いという利点を生か して、リストラを進めている。
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数多い循環器系学会をどうする? 5学会代表者が討論 第63回日本心臓病学会 学会レポート
https://medical-tribune.co.jp/news/2015/0924037421/index.html?_login=1#_login
Medical Tribune 2015.09.24

 循環器系学会は医療の高度化・専門分化とともに増え続け,今では関連学会を含めると30以上ともいわれるが,近年はそのデメリットも指摘されるようになってきた。第63回日本心臓病学会学術集会(2015年9月18~20日,会長=東京医科大学循環器内科学分野主任教授・山科章氏)では,この問題が学会として初めて取り上げられ,特別企画として主な学会の代表者が討論をした。学会の統合そのものは現実的に難しいとの認識が示されたものの,学術集会の共催や合同企画の連携について全ての学会が前向きな意見を示した。それだけでなく,行政や社会に対して情報発信をするために循環器系学会が協調していく必要性も打ち出された。

総合的な循環器医養成のためにも各学会の連携を
 学会の数が多いことの弊害として多くの学会が指摘したのは,若い研究者の経済的・時間的負担。多いときには毎週のように学術集会が開かれ,関係する学会への参加費用・旅費が嵩み,時間も割かなければならない。また,学会運営側にとっても学術集会開催の資金調達が難しくなってきている点も挙げられ,よりスリムな運営が求められている。一方,循環器系疾患の構造変化に伴い他学会との協力が必要になっている点も大部分の学会から聞かれた。合併症を持つ患者が増え在宅医療も含めた長期管理が必要になっており,より広い医学知識が臨床現場で求められるようになっている。現在でも他学会との合同企画などの連携が増えており,さらに拡大することに全ての学会が積極的な意見を示した。連携の中心的役割を日本循環器学会に担ってほしいという要望も出された。
 連携をさらに進めた「学会統合」は現実的に困難との認識で一致していたが,日本消化器病関連週間のように学会の同時開催や欧州心臓病学会のように循環器学会の傘下に各学会が分科会として位置付けることなどが提案された。
 フロアから日本心臓リハビリテーション学会理事長の後藤葉一氏が発言,「単にジョイントをするだけでなく,循環器学会を中心に協議会を作り,『循環器病対策基本法』の実現など社会に対して具体的な行動を起こすべき」と訴えた。「がん対策基本法」が成立したがん領域や脳卒中領域などに比べ社会や行政への情報発信が循環器領域は遅れていることへの危機感があり,こうした点での協調にも賛同が表明された。
 専門医制度の在り方も今回の課題として取り上げられた。現在,専門医制度の中でサブスペシャリティーは「3階部分」に相当する。これではサブスペシャリティーの教育を受けるまでの期間が長くなり,専門医の減少などの不都合を招くという懸念がいくつの学会から示された。一方で,全人的な診療ができる医師を育てる視点から専門医制度を考えるべきなどの意見もあり,具体的な方向性は一致しなかった。
 この企画の開催学会である日本心臓病学会は,「合併症が増えた今の患者を診療するには多角的な医療知識と技術が必要になる。そのための教育の在り方を当学会の『あり方委員会』も含めて検討したい」と時代に合った学会の形を模索する意思を明らかにした。
 座長の山科氏は最後に「5つの学会が集まって意見を頂いたこの場を循環器系学会が変わる第1歩としたい」と述べ,今後の展開に期待を込めた。
 各学会の代表理事の発言要旨は以下の通り。

■日本不整脈心電学会(監事;日本心電学会理事長・新博次氏)
 日本心電学会と日本不整脈学会は今年(2015年)5月に「日本不整脈心電学会」という一般社団法人を設立,統合した。①基礎から臨床,薬物治療から非薬物治療まで広い領域をカバーし,海外に対する窓口を一本化②若い研究者の時間的・経済的負担の軽減③不整脈診療の質的向上④啓発活動,認定制度などの社会的活動の向上などが目的である。
 当学会の専門医制度は循環器学会の上に乗っている「3階部分」に相当し,日本認定機構での今後の議論を注視している。日本内科学会と循環器学会の専門医制度を2階建てにするのでなく,循環器学会の専門医制度の独立を考えてもいいのではないか。

■日本循環器学会(代表理事・小川久雄氏)
 非常に多くの循環器系学会が開催されるため,学会員の経済的・時間的負担が大きくなっている。負担を減らし,効率的に多くのことが学べるように同時開催が望ましい。日本消化器関連学会週間(JDDW)のように,関連学会が共同開催することも考えられる。学会そのものの統廃合は現実的には難しい。
 脳卒中領域と協調して「脳卒中・循環器疾患基本法」を提案しているが,循環器領域は行政への働きかけが遅れている感が拒めず,さまざまな学会が連携したほうがより強く訴えることが可能になると考える。
 「3階建て」にすると専門領域の教育を受けるまでに時間がかかり,専門医の減少につながりかねない。基本となる循環器専門医の教育と並行してサブスペシャリティーの専門医の教育も行っていく制度を他の学会と協力して作るべきと思う。

■日本心臓病学会(代表理事・平山篤志氏)
 合併症を持つ患者が増え,患者を診るのにさまざまな領域の知識が必要な時代になった。学会の統合は難しくても,さまざまな領域の人が集まり,教育を受けられるチャンスを増やす時期にきている。
 各学会の垣根を越えて循環器学会が中心となり医療経済も含めた循環器医療全体のビジョン・施策を作り,社会や行政に訴えていくべきだ。
 サブスペシャリティーに特化する教育方法は成熟化した現在では見直す必要に迫られている。総合的に循環器疾患を診療できる医師を養成する観点から専門医制度を考えるべきである。

■日本心不全学会(理事長・磯部光章氏)
 今は学術集会を開催するための資金集めに苦労する時代になった。また参加者の経済的・時間的負担も大きくなっており,このまま循環器系学会を維持することは限界。統合は難しいものの,循環器学会を中心に学術集会を共同で行うことで参加者,協賛企業の負担を減らすべきだろう。
 各専門ディビジョンを統合している欧州心臓病学会(ESC)は成功したモデルであり,われわれも将来的に目指す方向だと思う。
 「3階建て」では教育期間が長くなる問題はあるものの,まず人間が診療できて,次に内科総合専門医であって,そのうえに循環器専門医があり,最後に専門性を持つという今の順序がいいだろう。また医学部教育から専門医制度まで全体としての教育制度を考えるべきだ。

■日本心血管インターベンション学会(理事長・中村正人氏)
 冠動脈インターベンションは治療成績が安定しこれからは標準化を進める過渡期にある。また予後をさらに改善するためにインターベンション以外の領域の技術も欠かせない。学会統合は難しくても,共同開催はリーズナブルだと思う。
 当学会も専門医制度があるが,「3階建て」になる道筋がまだはっきりしていない。教育プログラム,標準化,地域統括・連携を考え直すいい機会だと考え専門医制度の見直しの検討を始めている。
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