尾瀬にて

GlasgowのGraham Tisoで15年前に買ったチェコ製の登山靴で至仏山に登った.稜線歩きの際,ガスと(というか,濃い霧雨)風の両方で難渋した.高山植物で有名な山だけあって,ホソバヒナウスユキソウやジョウシュウアズマギクなど,それはそれは見事なものだったが,湿地帯,池塘(ちとう:湿地帯にある小さな池),ワタスゲなど,ハイランドでは,ごくありふれたものなのに,それを必死で守らなければならない我国.宿も8畳に6人の相部屋(ハイシーズンは8畳に8人)で一泊8500円(至仏登山者がみんな使うので特別に高いわけではない)と,スコットランド人が聞いたら目を回すような値段.この国ではいろいろなことに人手を金をかけて,それが結局公共事業になって,金は天下の回り物になっているのだろうか.

霧,高層湿原,池塘,ワタスゲと,尾瀬とハイランドにはたくさんの共通点があっても,片や典型的な観光地,片や,昼間でも亡霊が彷徨する荒野と,同じ地球上でも,利用のされ方は随分と違うものだ.

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