お じさんを援助する
日 本経済新聞 2006/8/4
ママさん医師の復帰手助け、東京女子医大が再教育センター
 現場を離れた女性医師の復帰を支援するため東京女子医大(東京・新宿)は今月下旬、「再教育研修センター」を設立する。新人医師の3割が女性だが、出産 や育児を機に離職することが多く、医師不足の一因と指摘されている。センターは医療ミス防止の講義を用意したり、研修先病院を紹介。医療現場の感覚を取り 戻してもらうと同時に不安を軽減、復職を後押しする。復帰のために必要な研修内容は、離職期間や医師としての経験年数によって大きく異なるため、同セン ターが医師と面談して、1人ひとりに適した研修プログラムを決める。

結構だ.でも,おばさんだけじゃ,セクハラもいいとこじゃないか.おじさんは,援助してもらえないのか?私のように勉強したいと思っている中高年はたくさ んいる.

一般参 加者の中で最高齢者として参加した第18回家庭医療 学夏期セミナー の間中,中高年の再教育の場をどうやって作ろうかと思案していた.

会場となった越後湯沢の旅館で,総合診療や産婦人科をさんざんやってきてもなお,四十過ぎて,小児科の研 修を始めて1年半たった北西史直先生が小児科のプライマリケア診療を教えてくださり,カリスマ仲田和正先生が整形外科を語るのを聞いて,改めて 小児科をやりたい,整形外科を勉強したいと思うのは,私だけではなかった.

それからわずか二日後,たまたま昼食をともにした,極めて優秀な内科専門医・消化器内科専門医(私より二つ上)が,”この年になると, リタイア後,どうやって過ごそうかを考えるんだ.ずうっとじゃ困るけど,2-3年ぐらいの年限で,過疎地に行 ってもいいと思うよ.そのための条件は,池田君の言う,(強制ではなく,希望者に対する)中高年の 再教育システムと,赴任先でのサポート体制だね”と言ってくれた.

また、私が研修していた武蔵野日赤で、ある血液内科専門医が、沖縄の離島で診療したいと希望したので、小児科、産科、整形外科などをローテーションしてから赴任していったのを見て、ああ、専門医として、一人前になった後でも、またこうやって、他科の勉強ができるのかと,非常に感銘深かった.四半世紀前に,すでにこのように,専門医を一般医として養成し,社会に送り出す仕組みがあったのだ.我々には四半世紀前から,そういう力量がある.

一生,臓器別専門の診療にこだわりつづけたいと思い,かつそれが可能な環境に留まれる医者はほんの一握りだ.この年まで,やれ心カテだ,やれ内視鏡だ,や れ手術だって,突っ走ってきたけど,もう目が見えなくなってきた,もう後進に道を譲らなければならない,もう,飽きた・・・・理由は何でもいいんだが,か つて抱いた町のお医者さんへの憧憬が,蘇ってくる年齢がある.

町のお医者さんになるために,開業する人もいるだろうし,子供の教育や住宅ローンへの心配がなくなれば,何も開業するまでもなく,診療所に雇われでもいい と考える彼のような専門医もいるだろう.どちらの場合にも,プライマリケア場面で重要な,小児科,整形外科といった診療科や,医療経済,経営,公衆衛生, 社会福祉の実務研修を受けて、フリーター医師としての力をつけたい思っている中高年医師はたくさんいる.しかし,現在,そういった実践的な再教育の場が非 常に乏しい.本来の教育の場である大学は、独立行政法人化もあって、お金を儲ける、出し惜しみする傾向がひどくなっているので、大学に教育の充実を期待す るのは非常に困難な時代になっている。

このような視点からの医学教育民営化は、単なる思いつきではなく、必然的な時代の流れである。学生や、研修医の教育は、既存の体制で賄うとしても、教育を 受けたくても受けられない中高年の医師が,カフェテリア方式で研修できるシステムの潜在的需要は確実にある. この需要に応えられれば,医療サービスにおける労働力再配分,人材流動化を通して,地域医療サービスの充実に貢献できる.

どうです,魅力的な事業だと思いませんか?そんな教育なら,私も受けてみたいと思うでしょ?ならば,誰かにやってもらおうと思わないで,早速あなたがやっ たらどうですか.みんなが,”誰かやってくれないかな”と思いながら,誰もやらないから,ここまで来ちゃったんですけど,あなたが始めれば,みんながわっ と寄って来ますよ.

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