実は陳腐な詐欺手法

あ るMLでネットワーク・メタアナリシスについて質問が出た.下記はその回答を改訂したものである.ネットワーク・メタアナリシスについては,PCのOSと 同じで「新しい手法は,不具合があぶり出されてくるまで様子見」と考えるべきである.そうして初めて,「登場した当初はちやほやされたけれど,実はこの程 度のものだったのか」ということがわかってくるものだ.新 しい手法ほど,使い込まれていないから,当初は(意図的であるにせよ,ないにせよ)間違った使い方をしたトンデモ論文が続出するだろう.そういうトンデモ 論文の批判的吟味がネットワーク・メタアナリシスを勉強する一番効率のいい手法になる.

基本的な姿勢の確認
サッ カーをプレーするのとゲームを見て楽しむこととは別だ.ましてやたかが生物統計だ.ネットワーク・メタアナリシスにせよ,通常のメタアナリシスにせよ,道 具に過ぎないから,多くの人にとっては,実際にそれが使えなくても全く構わないわけだ.その道具が適切に使われているかどうかがわかればいいわけだ.

上記の立場に立った私の勝手な解釈
ネットワーク・メタアナリシス=複数の介入を直接比較した研究がない時は通常のメタアナリシスができない.そんな時に、やむを得ず間接的に比較するための方法.このやむを得ず間接的に比較という点が,即ちネットワーク・メタアナリシスの弱点となる.ネットワーク・メタアナリシス(NMA)のGRADEエビデンスに は,”エビデンスの質を下げる5要因の一つが、「非直接性(indirectness)」です”とある.つまり,ネットワーク・メタアナリシスは非直接性 という点で,通常のメタアナリシスよりも,また一段と質が低くなる.所詮は,イチローと松井と長嶋を比較しようとするような空しい試みなのである.そう考 えると,自ずから問題点も見えてくる.

●ネットワーク・メタアナリシスもメタアナリシスの一種だから,メタアナリシスの弱点(というか欠陥)をそのまま受け継いでいる.
Network meta-analaysisの報告者は、間接比較、直接比較および統合エビデンスの質を提示すべきである と題したページには,「ネットワーク・メタアナリシスは、方法論としてのハードルは高いものの、実は一般MAと同じようなものです。」とある.

● すると当然,メタアナリシスの悪用と同様のことが,ネットワーク・メタアナリシスでも起こる.DAPTの滅茶苦茶な統合解析のように,メタ アナリシスと称した羊頭狗肉のイカサマは,大規模試験をやるよりもはるかにコストパフォーマンスの良好な(というか,実質的にお金はかからない)宣伝ビラ 作成手法になっている.
メタアナリシス様のお通りじゃ!
4つの異なる薬の”メタアナリシス”という怪談
だから,今後,複数の介入を直接比較した研究がない領域では,莫大な投資をせずに,ネットワーク・メタアナリシスと称したイカサマでコストゼロを実現した 製薬企業の宣伝ビラがどんどん出てくることが容易に想像される.

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