無法ドラッグの人体実験

「刑事裁判はすべて冤罪である」(森 炎 教養としての冤罪論).つまり法律はあなたを守らない.太平洋の向こう側には銃を規制する法律があるが,合法的に入手した銃で命をなくす人は後を絶たない.刑事裁判同様,銃規制同様,依存薬物の場合も同様である.違法薬物を回避するだけでは不十分なのである.自分の命を守ろうと思うのなら,法律とは一切関係なくあなたを傷つける,タバコのような「無法ドラッグ」も回避することだ.

燃焼タバコ,加熱タバコ,電子タバコ.これらは皆,「危険ドラッグ」(なんと間の抜けた名称だろうか)と同様,法律とは全く関係のない,無法ドラッグである.無法だから売買は規制されない.上場企業だろうが●●組だろうが,売り手を取り締まる法律はない.財務省と外務省はタバコ規制枠組み条約(FCTC)を蹂躙し続け,タバコの宣伝も無法,つまり野放しである.

新型タバコ(加熱タバコ,電子タバコ)が燃焼式タバコより安全であるというエビデンスは地球上に存在しない「成分に違法なものは入っていない」という製造販売者の主張は「あなたの命に対して私は一切責任を持たない」というメッセージに他ならない.なぜならば上述のように,違法かどうかは,無法ドラッグである新型タバコの毒性とは何の関係もないからだ.

他の毒物同様,新型タバコの毒性も試験によって初めて証明できる.ただしモルモットは試験を遂行するを払ってくれないので,喜んで金を払ってくれる一部の人間を組み入れている.おわかりだろうか.新型タバコという名の無法ドラッグが白昼堂々と販売されているのは,人体実験によってその毒性を証明するためなのである.

ただし,この人体実験はGCPに準拠してないから毒性データが科学的に収集されることはない.もちろん人体実験の勧進元は,「市販後データ」なんぞにも,そしてもちろん「毒性のエビデンスがないから」という理由で新型タバコを購入するあなたの命がどうなろうとも,全く関心はないからだ.新型タバコと名付けられてはいても,その人体実験は,燃焼タバコのそれと同様,旧態依然のやり放題,やりっ放しというわけ.

参考: 田淵貴大 新型タバコの本当のリスク 内外出版社
FDA、電子たばこ販売に対する規制を強化

以下は認知的不協和理論とエスカレーションオブコミットメントより.
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まず認知的不協和とは「二つの矛盾した認知が衝突した時に起こる不協和」のこと。人間とってかなりのストレスであるため、無意識的に修正する行動をとり、ストレスを回避しようとします。これをもとにタバコをやめられない人の心理を説明しようと思います。
ある喫煙者は矛盾する二つの認知(知覚や認識と置き換えてもいいかもしれない)を持っています。それは「たばこを吸っている自分」と「タバコは自分の健康にとって悪いものである」という認知。矛盾していますよね?この二つの認知が衝突すると、その喫煙者の頭の中では「タバコを吸ってもいい理由」を探し、自己肯定することで心理状態を保とうとします。「タバコを吸う男性はダンディだ」「周りの友達でタバコを吸っている人もたくさんいる」「酒は飲まないから」…。』
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『毒性のエビデンスは存在しない』という倒錯した理由(*)で新型タバコを肯定的に考えている人の心理がこれ.(* 新型タバコで脳が障害されていなければ,「 新型タバコが燃焼式タバコより安全であるというエビデンスは存在しない」という厳然たる事実を受け入れるはず)

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