ギャンブルのお話

春日武彦 「問題は、躁なんです」(光文社新書):売れっ子作家の評判の書です。面白く読んでいます。躁はトラブルメーカーになるにもかかわらず、本人が(表面的にせよ)ハッピーなことと、医師側でも診断閾値が高いことで、なかなか病気と認識されないためもあって、実害は鬱よりはるかに多い印象を受けました。しかし、病気というラベルを貼ることで、解決する問題は周囲の認知ぐらいでしょう。ですから、躁というありふれた病態にラベルを貼ってリチウムやらカルバマゼピンやらを投与してよれよれにした上で隔離・排除するよりも、それと気付かないふりをして、社会の中で折り合いをつけていってもらう今のやり方の方が健全なのかもしれません。

恋愛も結婚も、躁状態の同期です。結婚が双極性障害と異なるのは、躁状態の行いを後悔する鬱の相がずっと続いて、(同じ相手に対しては)躁状態が二度と起こらない点ですね。

また,躁状態の行動でしばしば問題になるのがギャンブルです.

ギャンブルにはまるのは“希望の光”が見えるから?日経メディカルオンライン2008. 5. 1から
silver lining 効果とcancellation 効果.華やかな部分だけを記憶し、経済的には破綻した行動を続ける…。これがギャンブルにはまる人たちのロジックなのだろうということを検証した報告。
トータルでは負けていても、1回の大勝負で勝てば満足し…、逆に大勝負に負けてもトータルで勝てば満足する…。前者をsilver lining effect(希望の光効果)と呼び、後者をcancellation effect(消去効果)と呼ぶ。

原著:Elizabeth Cowley.“The Perils of Hedonic Editing.” Journal of Consumer Research : June 2008.

さて,ギャンブルに関して得られた上記知見は,結婚という名の人生のギャンブルにもぴったり当てはまるのでしょうか?

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