一般名と商品名

薬には一般名と商品名がある.例えば,アスピリンは,もともとは旧ドイツバイエルの商品名である.一般名はアセチルサリチル酸だが,商品名があまりにも有名になってしまったものだから,あたかも一般名のように扱われている.

以下は痴呆病棟が桃源郷か戦場かを巡ってのお話の中で出てきた:参考→職務か趣味か

桃源郷と戦場は表裏一体でありまして,ある人にとっての桃源郷が,別の人にとっては煉獄であります.桃源郷が商品名,煉獄が一般名とでも言いましょうか.まあ,その逆でもいいのです.要するに,実態は同じものに対して,名称が複数あるというだけです.

同じ日でも時間帯によっても桃源郷が戦場になります.千変万化は何も病棟に限ったことではなく,実は我々の日常生活そのものが,桃源郷と戦場の間の往復を繰り返しているのですが,変化そのものがあまりにも日常的になってしまったために,通勤電車の往復にしか感じなくなってしまっただけです.

”日々是好日”の本来の意味は,親が死のうと,核戦争が起きようと,はたまた余命三ヶ月と言われようと,すべて小春日和の縁側で昼寝している時と同じような心境でいられるということだそうです.要するに単なる痴呆です.痴呆に”日々是好日”という商品名をつけて売った人の才能に感嘆します.流木を床の間に飾るより,はるかに高尚な趣向であります.旧称精神分裂病のブランド名変更も,”狐つき”に戻した方がよかったのかどうかはわかりません.

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