川崎病を風邪と誤診

サウサンプトンに住む研究者から事例を教えていただいた.

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先日、ある日本人研究者(MD)の娘さんが数日にわたる発熱で衰弱していたそうです。その方は当然GPにつれて行ったのですが、GPでは単なるfluだろうということで解熱剤しか出してくれなかったそうです。検査もせずに高熱が続きリンパ腺も顕著に腫れてきたので、いよいよおかしいと再度GPに行くと,結局そこでは対応できないと言うことで地区の大学病院(私やその方が研究しているところですが)へ搬送されました。

しかしそれから待つこと5時間、もうろうとしている娘さんには何の検査もされず、入院もせずに結局ここでもfluだろうというこで帰宅となったそうです。でも、あまりの異常さにその方は納得できず、その足でロンドンの日本クラブへ子供を連れて行ったのです。結局、川崎病と診断され次の日の飛行機で日本に帰り、成田から自分の大学病院に直行、即刻入院、治療となったそうです。幸いにして事なきを得、またこち
らに戻ってきました。

英国では珍しい川崎病ということを割りひいても、全くろくな検査がされずfluとして片づけられるのはどうしても納得がいかないと、その方はGPや大学病院に抗議の手紙を送ったそうです。
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池田コメント:親としては怒り心頭である.しかし,日本でもありそうな話である.英国だから,日本だからという先入観は危険で,世界中どこででも藪に当たることを覚悟しなければならないことがよくわかる.何よりも心配なのは,NHSの医療水準が,着実に,安かろう悪かろうになっていることだ.それは,貧乏人は死ねという世界である.この方の場合も,私費の日本クラブへの診療所を受診し,飛行機で日本に帰るお金がなければ,子供を失っていたのである.

この事例は決して他人事ではない.徐々に自由診療を導入し,国民皆保険のなし崩しを狙う経済財政諮問会議とやらが,このような事例がありふれた存在となる社会を目指しているのだから.

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