あまのじゃくの面白さ

8月の新潟と聞いてみなさんは何を思うでしょうか.太平洋側のように海からの南東の季節風は期待できません.全くの無風で文字通り熱気が肌にまとわりつく上越での海辺の生活の記憶ばかりが残る脳を持つ身は,気温の高さを覚悟していただけに,信濃川沿いに吹く川風が暑さを和らげてくれるのが意外でした.2005年8月7日から翌日8日,新潟市で行われた家庭医療学会学生・研修医部会主催の,医学生・研修医のための 第17回 家庭医療学夏期セミナーに参加してきました.

鳥屋野潟の水面の上に視界が広がる静かな宿の中は,想像を上回るエネルギーが渦巻いていました.今までメーリングリスト上でお名前を存じ上げているだけだった方々にも,直接お目にかかってお話することができました.もちろん,情熱溢れる多くの学生さん,若手医師の方々とも時間を忘れて議論できました.

7日夜は,名物の,学生・研修医との懇親会に参加しました.これがまた,噂に優る面白さ.文章では,その場の雰囲気を伝えることは到底できません.私にできるのは当日の話題をいくつか書き出す程度です.その中でも,私が,なぜ,これまで,あれこれ,へんてこな商売ばかりやってきたかという質問がありました.私は,へんてこな商売は面白いからだと答えました.ではなぜ面白いのか?

個性を大切にという,ありきたりのスローガンがありましたよね.私はそのありきたりのスローガンを実行しているに過ぎないのです.へんてこな商売=少数派となることによって,自分の主張を際立たせることができるのです.人々が狂牛病で騒いでいる時に,牛肉を食わないのは大馬鹿者だと主張すれば,誰もが振り向いてくれるでしょう.あれです.

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> 私も、先生のように物事の本質をきちんと捉え、考え、意見できる人になりたいで
> す。そこで質問ですが、先生のように物事の本質を捉えられるようになるにはどうし
> たらいいのですか?

大変なお褒めにあずかり恐縮です。自分では、あまり”物事の本質を捉えられる”とは思っていません
。ただ、ひどいあまのじゃくという点には自信があります。では、どうしてそんなにあまのじゃくが楽
しいのかと、考えてみました。

1.少数派意見と比べると多数派にはいつも必ず間違っている部分があります。なぜなら、多数派の人
達の多くは、”みんながそう言っているから”という馬鹿げた理由だけで、多数派の意見を支持してい
るから、自分の頭で何も考えていない。自分の頭で考えない人の意見は、必ずおかしなところがあるに
決まっている。

2.だから、多数派の意見のおかしなところを掘り出すのは簡単で面白く、かつ独創的な作業です。

3.多くの人が議論したり、切実に回答を求めたりする事柄の多くは、決して白黒、正誤のデジタルス
ケールでは決まりません。全て真っ白から真っ黒までの様々な段階があるアナログな世界です。

4.また、悪いことが起こった時、たくさんある要素のうち、一つだけが原因だとか、何人もいる関係
者のうち、一人だけが悪いとかということはありえないのです。

たとえば、ある看護師が、本来は胃に入れるべき栄養剤を、静脈に注射したために患者さんが亡くなっ
たとします。その看護師を裁判で有罪にして刑務所に入れて、全てが解決するわけではありません。

単純に割り切ってわかったような気分になって何も考えない人生はひどく味気のないものだと私は思い
ます。どうしてこんなことが起こるのだろう、誰が、何を考え、どう行動した結果、こんな馬鹿げたこ
とが起こったのだろう、そう疑問を持って調べて考えて行くと、意外なことが次々とわかってきて、そ
れはそれは面白いものです。

探偵小説とかミステリーとかは、あくまで作家の作り話ですが、現実世界には、どんな小説家も考え付
かないような、とんでもないことがたくさん転がっています。その仕組みを解き明かす作業の面白さが
、私にはたまらないのです。
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