ジャングルの掟
−イラクでは銃,日本では裁判が医師を駆逐する−

「裁判が真相を究明する」というのは,嘘八百もいいところである.それどころか,わが国では銃が裁判に代わっただけである.なお,裁判が真相を隠蔽し医療事故を再生産する機序については,以下を参考にすること.

医療事故裁判が隠蔽する「不都合な真実」
 
業務上過失による医療事故再生産の機序:ウログラフィン誤使用事故事例検討から
裁判が真相を隠蔽する機序ー医療事故裁判を例にとってー
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患者親族の報復を恐れて…国外移住する医師が続出 イラク AFPBB News  2019年3月31日
【AFP=時事】イラクでは、医療は生死に関わる重大な問題だ。だがそう考えるのは、患者だけではない。医師らもまた、復讐(ふくしゅう)心に満ちた患者の親族から脅迫され、国外に移住するケースが相次いでいる。
首都バグダッドで家庭医として開業しているシャイマー・カマリ(Shaymaaal-Kamali)医師は、患者の父親が面会時間後に病院にとどまることを許可しなかったことがきっかけでトラブルに巻き込まれた。激怒した親族が武器を手に病院に怒鳴り込み、カマリ医師は通用口から逃げ出さなければならなかった。
イラクの医師や看護師、医療関係者らは、仕事中の身体的暴力や言葉による脅迫の他、拉致されるリスクにまで常にさらされていると話す。数十年にわたる紛争で荒廃した同国では、個人の銃所有が長年の慣習となっており、そのことが医療従事者に対する脅威の一因になっていると彼らは言う。
これに加えて、報復という手段を用いて相手を罰する部族の習わしもある。これは、連邦法よりも尊重されることがあり、患者の親族との争いを解決するために4万5000ドル(約500万円)もの額を支払った医師らもいると、カマリ氏は語った。
こうした暴力的で混沌とした状況に置かれた結果、多くの医師らが、より安全な国外の病院で働くためにイラクを離れる決断をしてきた。2009年に医学部を卒業したカマリ医師の同級生348人のうち285人は、すでにイラクを去った。「主な理由はこうした暴力だった」という。

■「極度の医師不足」
「この種の暴力は、イラク各州で日常的に起きている」。そう話すのは、サラハディン(Salaheddin)州保健局副局長で薬剤師でもあるサハル・マウルド(Sahar Mawlud)氏だ。「患者が病院に到着したときにはすでに亡くなっていた場合でも、医師らが仕事をしなかったと言って遺族が怒ることがある」
世界保健機関(WHO)によると、イラク北部のキルクーク(Kirkuk)州では今年2月、70歳の重病患者の治療に当たっていた医療従事者が暴行を受けたという。さらに胃腸科専門医のフセイン・ウダイ(Hussein Uday)医師によると、同国南部の産油地域バスラ(Basra)では、心臓外科や神経系の専門医らが、報復の「恐怖」にさいなまれて国を離れるケースが続出したという。
赤十字国際委員会(ICRC)やイラク保健省、その他の医療組織が合同で実施した調査によると、過去15年間にイラクを離れた医師は合計約2万人に上る。同調査ではまた、イラク人医療関係者の70%が、報復や拉致、殺害を恐れて国外への移住を検討していることも明らかになった。保健省報道官は「イラクは極度の医師不足に直面している」と述べる。
WHOによると、2017年時点のイラクでは、住民1万人に対する医師の数がわずか9人だった。これは、隣国クウェートの3分の1未満、内戦で荒廃したリビアの2分の1未満だという。だがイラクの医療分野が直面している問題は、医療従事者らの苦悩だけにとどまらない。
医療インフラは度重なる紛争に加えて、2003年にサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権が米主導のイラク侵攻によって崩壊するまで10年以上にわたった国際社会からの制裁によって、壊滅状態に陥った。その後は宗派間抗争が激化し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」との3年にわたる戦いが2017年まで続いた。

■「ジャングルのおきて」
こうした困難な時代によって、中近東の医療の中心地だったイラクの名声は砕け散った。ICRCのペーター・マウラー(Peter Maurer)総裁は、医師らに対する圧力は、医療の世界の基本理念を破壊するものだと指摘する。
最近イラクを訪れた同氏は、「われわれが懸念しているのは、医療機関に対する直接的な攻撃だけではない」「病気の深刻さや緊急性に応じて患者を平等に治療し、家柄や民族、信仰に左右されないことを誓う『医の倫理綱領』に、部族主義や宗派心が入り込むことを懸念している」と述べた。
医師らは今、身の危険を案じ、医療従事者が職場で武器を携行することを認める2013年の法律の施行を求めて通りでデモを行っている。一部の議員らは、医師らに対する犯罪を反テロ法に含めることを提案しており、可決されれば、そうした犯罪を犯した者に死刑が言い渡される可能性もある。
「法の支配はない。ここで通用するのは弱肉強食のジャングルのおきてです」。カマリ医師はそう話した。
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