イカサマだ

実験結果の再現性は,科学研究の根本原理である.だからこそ,まともな科学の世界では,再実験ができない→すなわち捏造と判断される.「私しかできない」,「この実験室でしかできない」というのは,昔からイカサマと相場が決まっている.

学会の指針が,「再鑑定が可能な量を残す」なんていまさら明記しなくてはならないのは,今までは捏造し放題だったことを認めていることに他ならない.それでもDNA鑑定はまだましな方だ.生体試料からのアジ化ナトリウム検出でも,ベクロニウム検出でも,「再鑑定が可能な量を残す」なんてルールはどこにもない.つまり,いまだに捏造し放題だということだ.

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東京医科歯科大 老年病内科の助教、3論文で捏造・改竄 Risfax 2012/2/27
 東京医科歯科大学は24日、医学部付属病院老年病内科の川上明夫助教(43)が発表した3論文で不正行為があったことを明らかにした。不正は、コレステロール代謝や動脈硬化に関する論文で、08?10年に米国心臓協会誌に掲載された。大学の調査委員会が調べたところ、論文と実験結果が一致せず、一部の実験データも確認できなかった。3論文は取り下げられる見通し。
 大学側が11年3月に、川上助教の研究論文に「不正がある」との通報を電話で受けて調べていた。通報後、捏造・改竄の疑いを示す文書が送付されていた。調査は、共著者や技術補佐員、川上助教から事情聴取するとともに、実験のノートやデータ、機器の記録を精査した。
 その結果、技術補佐員の実験ノートのデータと論文内容が一致しないことが判明。一部画像データの記録も見当たらなかった。論文の根拠となるデータについて川上助教は、「コンピュータ上からすべてファイルを削除しており、再実験はできない」と話しているという。また、川上助教の実験ノートについて、大学側が一部捏造していることを指摘したところ否定せず、疑いを覆すだけの説明もなかった。
 大学側は今後、川上助教に処分を下す見通し。共著者は論文のデータ作成にまったく関与しておらず、技術補佐員は川上助教の指示で実験したデータを提出しただけだったため、処分しない方針。東京医科歯科大は、再発防止策として研究ノートやデータを論文発表後10年間、各研究室で保管することを義務付ける。
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DNA鑑定指針を改訂  法医学研究者らの学会
Medifax digest 2012/2/29
http://mfd.jiho.jp/servlet/mfd/news/article/1226567056740.html
 法医学の研究者らで組織する「日本DNA多型学会」の「DNA鑑定検討委員会」が、1997年12月に学会レベルで初めて策定した「DNA鑑定についての指針」を約14年ぶりに改訂したことが27日、関係者への取材で分かった。技術、精度が飛躍的に発展しているとして、鑑定人が確認すべき点や注意が必要な事項をあらためてまとめた。
 委員の一人は「鑑定人向けの指針だが、犯罪捜査や裁判員裁判での審理、被告の有罪か無罪かの判定、血縁関係の確認など社会の幅広い分野で応用されるようになり、問題意識を一般市民と共有できるようにするのも目的の一つ」としている。
 改訂指針は、97年指針が「試料の由来、採取、保管が適切か確認する必要がある」との記載にとどめていた試料取り扱いの注意点を具体的に例示。「湿気や乾燥、気温、冷凍・冷蔵など保存状態の変化が、試料の性質や、後の検査に与える影響を考慮する」とした。
 採取し直せない試料については、97年指針では「再鑑定の可能性を考え一部を保存する」としていたのを「再鑑定が可能な量を残す」と踏み込み、十分な配慮が重要と指摘した。試料を使い切るときは「必要性を説明し、提示していない鑑定結果も開示できるようにする」と明示している。
 また試料採取時や採取後に別のDNA型が混ざる「汚染」があったり、採取前から複数人のDNA型が混在したりしている可能性を疑わなければならない場合もある。改訂指針は「鑑定結果のみから汚染前の試料の型を特定するのは困難。ケースごとに慎重な考察が必要だ」とし、汚染防止の重要性を強調している。
 日本DNA多型学会はDNA型の構造解析や応用に関する研究への寄与を目的に、法医学など多様な分野の研究者が91年に前身を設立。現在の会員は約500人
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[毎日新聞 2001.11/8]
 京都・薬物混入事件:自白調書の証拠採用を却下 京都地裁
京都市右京区の国立療養所宇多野病院で98年10月、医局談話室の電気ポットの湯に毒劇物のアジ化ナトリウムを混入し、医師らがおう吐などの症状を訴えたとして傷害罪と浄水毒物等混入罪に問われた同病院医師、石田博被告(45)の第23
回公判が8日、京都地裁であった。古川博裁判長は「取り調べ担当警察官が違法な脅迫を行い、検事の取り調べも不適切だった」と認定、自白の任意性に疑いがあるとして、自白調書すべての証拠採用を却下する異例の決定を出した。
決定で古川裁判長は、法廷での被告の証言などから、2000年3月に石田被告が京都府警に逮捕された後、府警太秦署(当時)の担当刑事が取り調べで「極道のすごいやつがおる。お前には小学生の子どもがおるわな。取り返しのつかないようになる」などと暴力団を使って家族に危害を加えることをちらつかせて脅したと認定、「許される範囲を大きく逸脱した違法、不当な取り調べ」と指摘した。
さらに京都地検の検事調べについても、自白すれば執行猶予がつくと被告に言うなど不適切だったと指摘。その影響下で取られた自白調書は任意性がなく、証拠能力がないとした。検察側は却下決定に異議を申し立てたが、棄却された。
村井豊明・主任弁護士の話 妥当な決定だ。他に有力な証拠はなく、無罪の可能性が強まった。
宇田川力雄・京都地検次席検事の話 大変驚いており遺憾だ。適切な対応をしたい。
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仙台・筋弛緩剤混入事件:守受刑者再審請求(毎日新聞 2012/2/11)
 弁護団は請求後の記者会見で、「この事件は、捜査当局の思い入れによって作られた」と非難した。確定判決の根拠となった大阪府警科捜研の鑑定書の誤りを証明する実験鑑定書などを新証拠として提出したことを説明し、「確定判決は科学的証拠を軽視した。今回はしっかり受け止めてほしい」と求めた。
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参考→司法事故を考える

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